⇒トピック往来

★まぶしき雪化粧

★まぶしき雪化粧

  雪は風景を一夜にして変える。本格的な冬の訪れである。金沢大学角間キャンパスの創立五十周年記念館「角間の里」もすっかり雪化粧が施された。時折り、雪雲の切れ間からのぞく日差しが雪原に輝きを放つ。

   10月下旬にまいた大麦と小麦の種が芽吹いて雪上に頭を出している。それがまるで、昔いた「やんちゃ坊主」のいがぐり頭のようにどこか愛嬌があって、シャッターを切った。

  この日の最低気温は金沢で0.1度、能登半島の輪島でマイナス0.3度、この冬一番の冷え込みだ。夕方には、「角間の里」周辺では15㌢ほどの積雪になった。ここを訪れた人たちに、「ついに来ましたね」とあいさつすると、たいていは「 来るべきものが来ました」といった禅問答のようなあいさつが返ってくる。

  夕方になっても寒気は衰えず、街路樹の枝に積もった雪はまるでイリュミネーションか満開の桜のごとくまぶしい。冬化粧の街にふとたたずみ眺める。

⇒14日(水)朝・金沢の天気    くもり

★砺波平野の散居村から

★砺波平野の散居村から

  写真を撮る場合、アングルを自分なりに考えてシャッターを切ることを心がけている。だから一度の撮影でせいぜい3、4回だ。兼六園で秋の風景を撮った時も10回だった。ところが、きのう(11日)訪れた富山県砺波平野の散居村のお宅では実に31回もシャッターを切った。

   ことし5月9日付の「自在コラム」でも紹介した森満理(もり・まり)さんたちの子育てグループが収穫祭を開くというので友人たちと出かけた。森さんたちの活動については前回書いたので繰り返さない。ただ、一言で表現するなら、自らの住宅=古民家を「まみあな(狸穴)」と称して、「出会う、関わる、気遣い合う、支え合う」を実践している。

   撮影に夢中になった一枚はご覧の通り、壁の落ちた土蔵である。この壁の落ちた跡にのぞいた竹網に何とも言えないアジア的な風情を感じた。ビワの木の枝と重なり合ったアングルはどこか異国情緒さえ醸し出す。

  もともと散居村ではそれぞれの家が「屋敷森」をつくっていて、数十㍍四方にその森の世界が広がる。何世代もかけてつくり上げた森だ。笹の群生の向こうに石灯篭を配置することで、庭園の風格がにじむ。計算された敷石や樹木の配し方といった「屋敷森のプラン」を一つひとつ読み解いていくと、この家の先祖と語り合っているような楽しさがあった。

   最初の画像は、この家の式台(しきだい)で行われたもちつきの様子だ。式台はかつて客人を迎え入るための玄関だった。いまは集いの場である。人々の交流の輪が楽しく、携帯電話カメラでムービーを撮った。ブログサーバーではデータ容量は240kが限界なので30秒足らずの動画だが、その場の雰囲気が凝縮されてもいる。

   夜、金沢の自宅に戻り、野外で煮炊きに使った木の燃えた独特のすっぱいにおいがジャンパーについているのに気づいた。どこか懐かしいにおいだった。

⇒12日(月)午後・金沢の天気  くもり時々雪

☆鰤おこしとウォームビズ

☆鰤おこしとウォームビズ

  石川県など北陸に雷・強風・波浪注意報が出ていて、特にここ数日は雷鳴が断続的に響いている。金沢ではこの時節の雷を「鰤(ぶり)おこし」や「雪おこし」と言う。能登半島の輪島では、「雪だしの雷」と言ったりもする。それだけ季節が激変するころなのだ。

  金沢大学の近くに住む古老Mさんがこんなことを教えてくれた。「(金沢の)医王山に2回みぞれが降ったら、3回目には(大学がある)角間にもみぞれが降るよ」と。実際にその通りになった。写真でご覧の通り、ここ数日でみぞれがあられになり、金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」もうっすらと雪化粧した。雲や風の動きなどを観察して、経験をもとに天気を予想することを観天望気(かんてんぼうき)と言うが、恐るべし古老の観天望気術である。

  ところで、この「角間の里」は築280年の古民家をことし4月に移築したものだということは既に何度か記した。建物はかつて白山ろくの旧・白峰村の文化財だったものを譲り受けたもので、なるべく本来の姿を生かすという建築思想のもと、冷暖房の設備は最初から取り付けてなかった。このため、夏はスタッフ一同でクールビズを徹底した。また、土間を通る風は天然のクーラーのような涼しさがあり、扇風機を緩やかに回すだけで十分にしのぐことができた。

  しかし、問題は冬本番、これからである。今度はウォームビズで着込んではいるが、さすがに冷えるので事務室だけはエアコンを入れ、板の間の部屋には持ち運び式の石油ストーブを置いた。残るはこの建物の最大の空間である土間の暖房対策である。化石燃料である灯油を大量に消費して寒さをしのぐというだけではこの記念館の建築思想とも合致しない。さて、どう工夫するか、思案の冬を迎えた。

⇒10日(土)朝・金沢の天気   くもり

 

★鳥も凍える北陸の冬

★鳥も凍える北陸の冬

  発達した低気圧が接近して、北陸地方は強風を伴った雨が降る大荒れの天気となっている。最大瞬間風速は4日午後7時すぎに、金沢で29.1㍍を記録した。石川県内全域に波浪警報と暴風警報が発令されていて、油断ならない。けさは 明け方から雷も鳴っている。

  きのう(4日)午前は青空に雪つりが映える写真を掲載したが、きょうは「凍える鳥」の写真を貼り付けた。この写真は去年(2004年)1月に撮影された兼六園での冬の写真。石川新情報書府「兼六園 名園記」(DVD)の中のフリー素材集の一枚だ。キャプションに鳥名は記されていなかったが、ことし1月に日本野鳥の会石川支部が行った兼六園での探鳥会ではメジロ、モズ、シロハラ、ヤマガラ、カワセミなど19種の鳥類が確認されているので、その中の一種かもしれない。

   気象台では、きょうも突風やひょうが降り、加賀の山間部では10㌢の積雪になるところもあるという。きのう晴天、きょうは大荒れ。鳥も凍える北陸の冬が到来した。

【追記】 この写真の鳥について、何人かの鳥類に詳しい方に伺ったところ、V字の尾や白い腹、かすかに見える首回りの茶色、くちばしの形状からアトリではないか、との感触をいただいた。

⇒5日(月)朝・金沢の天気    あめ

☆秋と冬のスクランブル

☆秋と冬のスクランブル

  きのう(3日)、金沢では午前3時前にみぞれがあり、輪島では午前7時ごろに雪が降ったと金沢地方気象台が発表した。これが石川県地方の初雪となった。積雪はなく、平年より6日遅い初雪だ。

   ところがきょう(4日)は左の写真のように一転して青空が広がった。北陸特有の「猫の目天気」、くるくると気圧配置が変わり天候は一定しない。それにしても、天を突く雪つりの風景が青空に映えて、アートの輝きを放っている。

   天気も行き交っているが、季節も交錯している。下の写真は金沢大学の回廊から見える遅い紅葉の風景だ。季節が紅葉を追い立てるかのように風も吹き、雨も降るが、木々の方はゆっくりと紅葉を楽しんでいるかのようだ。秋と冬のスクルンブル、初冬の金沢の風景である。

⇒4日(日)午前・金沢の天気   はれ

☆雪つりの値打ち

☆雪つりの値打ち

  北陸にいよいよ寒波がやってきた。金沢の冬の風情と言えば「雪つり」だ。市民も兼六園や街路樹で雪つりが始まると冬の訪れを実感するのではないだろうか。

  この雪つりは自分でやるとなると結構技術がいる。造園業者に任せると金がかかる。暖冬が続き雪が降らないと、「庭税」のように忌々しく思えてきて、風情を楽しむどころではない。

  ところが、2004年の冬のように、50㌢を超す大雪となると、が然と雪つりはその威力を発揮する。上の写真は雪つりが施されたもの。同じ場所での下の写真をご覧いただければ分かるように、こんなに雪が積もると、何代にもわたって育ててきた五葉松(東日本では姫小松とも呼ぶ)も枝が折れてしまう。何しろ金沢の雪はパウダースノーではなく、たっぷりと湿気を含んだベタ雪なので重い。松の枝を一本一本支えている縄のおかげで、枝が折れずに済んでいる。

  「庭税だ」云々と言ってはみても、ドカ雪がやってくるか予想できないから雪つりはやめられない。金沢に住んでいる以上は仕方がない。これはもうスタッドレスタイヤやスコップと同じように「雪国の住民税」と考えるしかないのである。

  でも、こうして写真を眺めていると、金沢の先人の知恵というものが伝わってくる。一説にリンゴつりの応用で兼六園で使われた手法が広く伝わったともいわれるが、雪つりのルーツについては定かではない。

  ともあれ、ことしの冬は雪つりの値打ちを実感できるほど雪が降るのか、あるいは「庭税」と思ってしまうのか。

⇒30日(水)朝・金沢の天気   あめ

★松井、NYの存在感

★松井、NYの存在感

  日本のどんな小さなローカル局でも、アメリカ大リーグ(MLB)の映像を使おうとするとシーズン契約の映像使用料として150万円以上は覚悟しなければならない。これが日本全体のテレビ放映権料となると330億円にも積み上がる。そして、ヤンキースタジアムには建設機械メーカー「コマツ」など日本企業の広告が目立つ。こうした経済効果はニューヨークに拠点を構える松井秀喜選手の影響が大きいのは言うまでもない。

   ここ数日、テレビも新聞もヤンキースと4年で総額5200万㌦(61億8800万円)で再契約した松井選手の話題で持ちきりだ。16日、ヤンキースタジアムでの記者会見に日米70人もの報道陣が詰めかけた。会見内容を報じた新聞記事によると、会見に同席したブライアン・キャッシュマン・ゼネラルマネジャー(GM)は「彼は、チームの勝利に貢献するだけではない。日本からの関心を呼んで、ビジネス面でもニューヨークに貢献した」と好条件で契約した理由を述べた。要は、多大なジャパンマネーをもたらしてくれる松井選手を4年間囲い込んだ、と説明したようなものだ。

   およそ100年前、同じニューヨークで存在感をアピールした、松井選手と同じ北陸ゆかりの人物を思い浮かべる。高峰譲吉博士だ。加賀藩典医の長男として生まれ、長崎をへてイギリスに留学、1890年 に渡米した。高峰博士は世界の常備薬ともいえる「タカジア-スタゼ胃腸薬」の発明者であり、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)の発見者として知られる。

   ただの化学者ではなかった。世界的な発明と発見で財を成した高峰博士は1905年、ニューヨークに日本人クラブを創設して初代会長に。外交官的なセンスも持っていて、当時のウィリアム・タフト大統領の夫人がポトマック川に桜の植樹をする計画を公表したのを知り、東京市長(尾崎行雄)から桜の苗木3000本を贈ってもらい、自らニューヨークで桜の植樹運動の中心となった。その桜が育ち、今では、全米各地の「桜の女王」が集いフェスティバルが開かれるなど日米親善のシンボルとなっている。

   いまの松井選手の業績は高峰博士に届いているか。否である。ヤンキース在籍3年間の成績は487試合に出場し、70本塁打、330打点、打率2割9分7厘をマークしているが、物足りない。しかも、上記のGMのコメントのように、彼の球団での存在意義は日本人と日本企業がもたらす経済効果によるものなのだ。自らのバットでワールドシリーズ制覇という金字塔を打ち立てなければ確たる存在感は示せない。それを実現して日米野球のシンボルとなれ、と。応援したい。

⇒18日(金)朝・金沢の天気  くもり

★ウォームビスと「青いドレス」

★ウォームビスと「青いドレス」

   ウォームビズの実践を始めた。郊外の丘陵にある金沢大学ではこの春、築280年の古民家を再生し、ここで勤務する我々はなるべく省エネや化石燃料を使わない生活様式を工夫している。この夏は扇風機で十分しのぐことができた。土間が天然のクラーラーになった。そして北陸の冬。体感温度は金沢の街より1度か2度低い。そこでセーターや厚手のズボンを早々と着込んだ。しかし、冬本番はこれからである。折に触れて、ウォームビスの実践記はこのコラムで報告したい。

                 ◇

   11月2日付の「ショート・ショートな話」では、第三次小泉改造内閣の認証式で少子化の担当になった猪口邦子氏の「青いドレス」を話題にした。なぜ「青」だったのかという理由が、「小泉内閣メールマガジン」(10日配信)で分かった。以下、本人の弁である。「・・・長い不況のトンネルの先に見える青い空。小泉構造改革とは、苦労の多いプロセスを一歩一歩推し進めながら、経済のグローバル化という世界共通の試練のなかで、日本が再び青空に出会えるようにするためのものと改めて思い、その閣僚チームに入る喜びがこみ上げてきました。改造内閣発足では、新任の閣僚は皇居にて認証式に臨みますが、そのときの直感で、礼服の色は青空の色!と思ったのです。」

   回りくどい言い方ではある。アメリカやヨーロッパでは青色は公式な場では認められた色だ。亡きダイアナ妃は青のドレスが一番似合っていた。国連の軍縮大使などで活躍しレセプションを数多くこなした猪口氏にとっては青の礼服は常識なのである。おそらく青は好きな色でもあるのだろう。だから、「突然の指名」でとっておきの青のドレスをとっさに選んだ。しかし、認証式では周囲に「黒」が多く、ちょっと浮いて見えたというだけの話である。

   ただ、ドレスの広がりがちょっと目立つ仕立てだったので、とくに、こうして並んで立つとステージ上の「オペラ歌手」にも見えたということだ。マスメディアが騒ぐ話ではない。

 ⇒12日(土)朝・金沢の天気   くもり

☆ショート、ショートな話

☆ショート、ショートな話

  最近街角で拾った、ちょっとした話を続けて。題して、「ショート、ショートな話」ー。

   石川県能登半島にある旅館のご主人の話。この人は地元で「キノコ採りの名人」として知られる。そのご主人が言うには、秋になって山に入ると、同じ石川県でも遠く離れた加賀地方の人たちがジネンジョ(山芋)を掘りに来ている。先日、「なぜわざわざ奥能登に」と尋ねると、小松市から来たという人は「小松の山は最近クマやイノシシが出るんですわ。能登の山はクマが出ないので安心して…」と。

    第三次小泉改造内閣が発足した翌日のきのう、通勤バスの中で耳にはさんだ話。前の席で女子大生2人がおしゃべりしている。(A子)「猪口邦子って人、知ってた」、(B子)「ソレ何っ」、(A子)「新しい内閣で少子化の担当の大臣になった女の人」、(B子)「・・・?」、(A子)「その人、小泉さんと並んで記念写真を撮ってたんだけど、青いドレス来て、なんかオペラ歌手みたいで、浮いとったよ」、(B子)「オペラ歌手?」、(A子)「・・・!」 

    毎日新聞北陸版で金沢医療センター(旧国立金沢病院)の吉村光弘医師(内科)が書いている医療コラムを楽しみにしている。10月18日付の出だしで、「中世のヨーロッパでは散髪屋さんが使い慣れた刃物で皮膚のできものを切開して膿(うみ)を出していた。理髪店のくるくると回転する筒状の看板はそのなごりで、赤が動脈、青が静脈、白はリンパ(あるいは包帯)を表している。」と。納得というより、ちょっとリアリティーのある話だ。

    季節はちょっとずれるが、ヒガンバナ(彼岸花)は割と好きな花だ。植物に詳しい友人はこんな話をしてくれた。ヒガンバナは茎にアルカロイド(リコリン)という毒性がある。昔の人は死体を焼かずに埋葬した。そして、犬が近づいて掘り返さないようにと毒性のあるヒガンバナを周囲に植えたのだという。犬よけの花、知らなかった、こんな話…。

 ⇒2日(水)朝・金沢の天気   はれ   

★「ネット選挙」の読み方

★「ネット選挙」の読み方

  この政治家のブログは実に分かりやすい。世耕弘成・参議員のことである。この人との面識はない。ただ、ブログの書き方がいかにも誠実で、信頼がおける。時々ブログ「世耕日記」をのぞくと、珍しい鉱物の原石にでもめぐりあったような発見がある。

  以下、世耕氏のブログの10月26日付の抜粋である。「…選挙制度調査会へ移動。鳩山邦夫会長からインターネットを使った選挙運動に関するワーキングチームの設立について諮られ、了承。私が座長を務めることになった。いよいよ自民党として本格的な選挙運動でのネット解禁検討に入ることになる。・・・」

   9月14日に最高裁が判断した「在外選挙権訴訟」の違憲判決を受けて、2007年の参院選では、インターネットの選挙利用が解禁になる見通し。自民党はすでに最高裁判決前の9月9日の党選挙制度調査会で「選挙におけるインタ-ネット利用に関する小委員会」(仮称)の設置を決めている。また、民主党も以前からインターネットの選挙利用解禁に積極的で、早ければ来年の通常国会にも公選法改正案が議員立法で提出される。07年夏の参院選は「ネット選挙」あるいは「ブログ選挙」となることは想像に難くない。

    前述の世耕氏のブログは、「ネット選挙」のかなり具体的なところまで話が進んでいることを窺わせる。そして、自民党の選挙制度調査会ですでにワーキングチームがつくられ、その座長に世耕氏が就任したこと自体が興味深い。彼は先の総選挙では自民党の広報本部長代理として「コミュニケーション戦略チーム」を率いた、メディア対策の中心人物だ。その彼が注目されたのは、選挙公示前の8月25日にメールマガジンの発行者やブログのユーザー(ブロガー)33人と党幹部との懇親会を開いたことだった。新聞やテレビの既存メディアと同等に、ブロガーにも政党幹部との懇談の場を設けた。これは画期的だった。彼の視野にはインターネットはすでにメディアであるという位置づけができているのだ。

    世耕氏はその柔軟な発想で07年参院選の「切り込み隊長」になるのは間違いない。その切り込みの「武器」がインターネットであり、ブログなのだ。きのう第三次小泉改造内閣が発足した。この顔ぶれを見ると、大方の予想では、「次ぎ」は安倍晋三だ。「党の新しい顔」と「新しい選挙対策の顔」がそれぞれ見えてきた。次回の国政選挙をこのような筋目で読んでみるもの面白い。

 ⇒1日(火)朝・金沢の天気   はれ