★選挙の余波と余談
同じく31日、かつて広告業界にいた知人との会話から。「自民よりましだと思って民主党に入れた人が多かったと思う。でも、民主が本当に日本の政治を変えるかは疑問だね。小沢さんたちは自民の大幹部だったしね。労組が応援しているとなると政治がちょっと左に動く程度じゃないかな」「当選者の数を見ると面白い現象が現れている。自民党が強いところほど当選者が多い。石川は7人もいる。福井も7人。これって自民と民主が互角で惜敗率が高かったせいで、比例で上がったんだね。石川に7人も代議士がいるんだから、使い倒さなきゃな。次の選挙のために、みんな必死に地元のために働くよ。これからが本当のドブ板だね」
来年度予算をめぐって大学内で事務スタッフとの会話(9月2日)。「来年度の概算要求は民主政権下で全面的に見直しになるので、これまで文科省(文部科学省)と積み上げてきた概算要求については白紙状態だね。9月の補正予算でもストップがかかっているらしい」
再びメディア誌編集長から届いたメール(2日)。テレビメディアと放送法をめぐる講演を要約したもの。「民主党は日本版FCCへの移行を提唱するが、この問題を巡って議論が本格化する可能性もある。日本版FCCが期待通りの機能を果たすには、二大政党下での政権交代の可能性や、委員会を監視する諸集団の存在などが必要だが、日本にはそうした条件が成熟しているか疑問もある」
FCCはアメリカの連邦通信委員会の略称。日本版FCCについては説明が必要だ。以下、民主党のマニフェストから引用する。「通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い独立行政委員会として通信・放送委員会(日本版FCC)を設置し、通信・放送行政を移します。これにより、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入を排除します。また、技術の進展を阻害しないよう通信・放送分野の規制部門を同じ独立行政委員会に移し、事前規制から事後規制への転換を図ります」。つまり、テレビ業界を放送法や電波法で監督しているを総務省からテレビ業界を切り離すというもの。これで政治権力から表現の自由など守るとしている。ただ、日本のテレビ業界は日本版FCCを望んでいるだろうか。むしろ、規制に守られた「最後の護送船団」と称され、これ以上テレビ局が増えないように政治に働きかけてきたのはテレビ局の方ではなかったか。
最後に、2日付の朝日新聞の紙面から。衆院選の結果を受けた世論調査から。「新政権に期待」74%。民主大勝の要因についての問い、「有権者の政権交代願望が大きな理由か」81%、「政策への支持が大きな理由か」38%。意外だったのは、自民について。「民主党に対抗する政党として立ち直ってほしい」76%。民意は優しいのか、厳しいのか…。
⇒3日(木)午前・金沢の天気 くもり
この話を聞いて、今回の総選挙を連想した。政権というカメがどちらの方向に向くかをじっと観察している有権者が静かに手を動かす(投票)。これまでの選挙は、闘牛やスポーツを観戦するかのごとく国民は熱狂した。お祭り騒ぎをした。だから、誰が、どんな世代が何を政治に求めているのかが見えやすく、実感でき、論議もでき、そして自らの投票行動の基準が分かりやすかった。ところが、今回の選挙は政権交代で誰が何を求めているのか見えにくい、分かりにくい、可視化できなかった。
公職選挙法第6条2では、選挙の結果を有権者に速やかに知らせるように努めなければならないとしており、開票所は公開されている。ただ、テレビ各局は午後8時から一斉に「選挙特番」を放送するので、不思議な感じがする。携帯電話のワンセグ放送で視聴すると、開票所に到着した午後9時ごろ、全国200人余りにすでに「当確(当選確実)」が出ていた。ところが、この金沢市の開票所は開票のスタートが午後9時30分なのである。都市部の開票はだいたい午後9時ごろからなので、「メディア開票」がずっと先行していた。
26日付の朝日新聞では、テレビの選挙報道が前回より「半減している」と報じていた。解散した日から1週間の間で、NHKや民放が取り上げた選挙に関する映像を時間で計測したデータの05年と今回の比較である。それを見ると、テレビ朝日の場合、前回がトータルで25時間、今回は16時間ほどなっている。フジテレビなどは3分の1だ。全体でデータを眺めると確かに今回はトーンダウンしている。テレビはある意味で正直だ。視聴率という数字が取れない、あるいは「絵にならない」(映像的に面白くない)と判断すると取り上げないものだ。確かに、前回は「刺客」「小泉敵情」の取り上げが過熱して、「テレポリティクス」と揶揄(やゆ)されたように、テレビが選挙を誘導しているとの批判の声もあった。テレビはその反省に立って、今回自重しているのか。「否」である。テレビはそんな殊勝な業界ではない。数字が取れると思えば、どこまでも食いついて行く。要は、選挙では数字が取れない、「酒井法子で行こう」と視聴者の心を読み取っているのである。
さて、公示日に候補者が出そろった。中で、興味深い顔ぶれも。比例代表北信越ブロックで、民主党は元自民党参院議員で国家公安委員長や内閣府特命担当大臣(防災担当)を歴任した沓掛(くつかけ)哲男氏(79歳)を、単独で名簿登載した。沓掛氏は金沢市在住で、もともと建設省技監を務めた官僚だ。3年前、議員会館を訪ねたことがある。大学のプロジェクトの立ち上げに際して、協力を求めに訪れたのだが、非常に丁寧な応対で、「お昼でもどうかね」と誘っていただいた。「政治家らしからぬ」柔軟さが好印象だった。
問われているのはメディアなのか。新聞各社の世論調査が圧倒的な「民主勝利」を早々と伝えている。ところが、最近出始めているインターネットによるアンケート調査は結果がまったく違う。
初日は、金沢からバスで出発し、石川県七尾市の能登演劇堂で開催された「環境国際シンポジウムin能登」に参加した。ノーベル平和賞を受賞した国連組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のラジェンドラ・パチャウリ議長の基調講演を楽しみにしていたが、博士は体調不良を理由に欠席。その代わり、ビデオレターが上映され、その中で「今、何かの手を打たなければ、多くの生態系が危機にさらされる」と訴えていた。翌朝は船に乗り、ぐるりと能登島を回る七尾湾洋上コースと能登島をバスで巡るコースに分かれてのエクスカ-ション。能登島のカタネという入り江にミナミバンドウイルカのファミリーの親子(5頭)がコロニーをつくっていて、船からは、時折背ビレを海面に突き出して回遊する様子を見ることができた。午後からは、奥能登・珠洲で実施されている「生き物田んぼ」を見学し、直播(じかまき)の水田で水生昆虫の調査の説明を聞いた=写真=。両日とも雨にたたられずに済んだ。
今からちょうど120年前の明治22年(1889)5月、東京に滞在していたアメリカの天文学者パーシバル・ローエル(1855-1916)は能登半島の地形とNOTOという地名の語感に惹(ひ)かれ、鉄道や人力車を乗り継いで当地にやってきた。七尾湾では魚の見張り台である「ボラ待ち櫓(やぐら)」によじ登り、「ここは、フランスの小説でも読んでおればいい場所」と、後に著した「NOTO: An Unexplored Corner of Japan」(1891)で記した。ローエルが述べた「フランスの小説」とは、当時流行したエミ-ル・ガボリオの「ルコック探偵」など探偵小説のことを指すのだろうか。ローエルの好奇心のたくましさはその後、宇宙へと向かって行く。
なぜ蓄養かというと、市場では小さなタコは値がしない。すくなくとも1キロは必要で、キロ1000円が相場。難しいのは、水温が上がるとタコが弱ってしまうこと。このタコ牧場では海水をそのまま汲み上げている。太平洋側に比べ、日本海側は海水温が一定していない。そこで、水温が高くなるころを見計らって、大きなものから出荷する調整も必要とのこと。タコを飼うのも簡単ではない。
大宮神社の狛犬は、獅子(ライオン)が千尋の谷に子供を落として、その子供を見守っているという姿で、左手の子は千尋の谷に落ちて仰向けになり、右手の子供は崖を這い上がっているという構図=写真=になっている。説明書きには、台座に使われている岩は富士山から運んだ溶岩であると記されている。これが黒く、ゴツゴツした感じで、崖というイメージにぴったり合っている。