☆上空に寒気の投票日
金沢から輪島に向かう縦貫道「のと里山海道」(全長83㌔)を走る。金沢から向かうので当然、積雪は金沢よりも多いと判断しがちだが、そうではない。「金沢が大雪でも。能登は小雪」ということもままある。そこで、9時ごろに目的地に電話を入れた。輪島市内の山間部でさぞかし大雪と思いきや、「20数㌢ほど。軽四でも大丈夫」との返事。「チェーンもスコップもいらない。スノータイヤで大丈夫」と安心し、車を走らせた。雪国に住んでいると日常的にそんなことをついつい考える。
10時すぎに、目的地の輪島市三井町に到着した。「あえのこと」を撮影するためだ。ユネスコの無形文化遺産に登録されている「奥能登のあえのこと」は、田の神に感謝して、もてなす農耕儀礼として知られている。毎年12月5日、その家の主(あるじ)は田んぼに神様を迎えに行く。あたかもそこに神がいるがごとく身振り手振りで迎え、自宅に招き入れる。お風呂に入ってもらい、座敷でご馳走でもてなす。田の神は目が不自由であるとの設定になっていて、ピタリティ(もてなし)が行き届く丁寧な所作が特徴だ。
こうした伝統的な農耕儀礼を踏襲しつつも、新しいスタイルで「あえのこと」を行っているグループがある。デザイナーの萩野由紀さんが主宰し、金沢大学の生物研究者たちが加わる生物多様性調査グループ「まるやま組」だ。毎月の田んぼや周囲の生物調査をベースに、調査で見つかった生き物の名前を記した「依り代(よりしろ)」をつくっている。この依り代を広げてみると、ことし確認された300種の植物と123種の水生生物、合わせて423種の名前と学名が記され、絶命危惧種は赤字、外来種は青字で示している。この依り代を手に田んぼで神様を呼び寄せて家に招き入れ、食の安全と豊作に感謝する。田の神という伝統的な概念を自然の恵みとも解釈し、生物多様性の保全と結びつけてる。
解釈だけではない。田の神に感謝するのは生産者だけでなく、コメを食べる消費者も同じ視点でこの「あえのこと」の儀式に参加しようとグループでは呼びかけている。14日、関心を寄せて集まった人数は50人がそれぞれ田の神に捧げるお酒、甘酒、お菓子、煮物、漬物、ご飯、野菜など持ち寄った。これを輪島塗の赤御膳に並べて供し、そのほかは「お下がり」と称して、儀式の後、参加者全員でいただくのである。まるやま組の伝統儀礼と現代解釈の取り組みは、「国連生物多様性の10年日本委員会」が主催する「生物多様性アクション大賞2014」でアクション対象に選ばれた(11月30日)。日本の文化を大切にする、食べることを通じて生物多様性、自然のめぐみに感謝するといった、日本人の忘れかけている大切なことを今に伝えている、高く評価された。
まるやま組の「あえのこと」を里山の新たな動きとして取材するため、カメラマンと金沢大学里山里海プロジェクトの研究代表、中村浩二特任教授に赴いたのだった。中村教授が現地でリポート(英語)、そしてインタビューした。昔取った杵柄(きねづか)で、収録ディレクターというのが私の役回りだ。一連の取材が終わって金沢に戻ったのは19時ごろだった。夕方からさらに風雪が強くなってきた。
きょうは衆院選挙の投票日だ。いったん自宅戻り、近くの投票所(中学校体育館)に入ったのはギリギリの19時58分。ラストの投票者だった。一票を投じた瞬間に「ちょうど午後8時になりましたので投票所を閉鎖します」と係員の声が響いた。自宅に戻ると、テレビ各社の選挙特番が始まっていた。もうすでに出口調査で、自民は230議席と報じられている。まだ、開票前なのに、である。
この日、もう一つ仕事が残っていた。21時30分、金沢市の開票作業始まるのに合わせて、金沢市営中央市民体育館(同市長町3丁目)に出かけた。学生たちを激励するためだった。新聞社からの依頼で、学生たち何人かに開披台調査の選挙アルバイトを勧めた。この調査は、双眼鏡で開票者(自治体職員)の手元を覗きながら、小選挙区の候補者名をチェックしていく。投開票日のその日には、テレビ新聞メディアは投票所では出口調査が、開票所では開披台調査を実施する。出口調査で大差がついていれば、20時からの選挙特番で「当選確実」の予想は打てるのだが、小差ならば開披台調査で当落を判断することがある。
21時30分、新聞社の調査を勧めた学生たちが一人もいない。開票所に新聞社の連絡員がいたので、「どうなっているのか」と問うと、急きょ石川3区(能登地区)の開票所に学生たちが派遣された、とのこと。出口調査の段階で1区(金沢市)の自民と民主の候補者の間で12ポイントの差がついていた。3区では自民と民主の候補者の差が7.1ポイントの差だった。当然、開披台調査の主力部隊は3区に注がれる。3区の七尾市の開票所に向かおうかと一瞬考えたが、夜間なので路面の凍結(アイスバーン)のことが頭をよぎって、向かうのをためらった。上空の寒気に朝から夜まで惑われた一日だった…。
※写真・上は輪島市で執り行われた「まるやま組」の農耕儀礼「あえのこと」の様子。手前はダイコン、無効に押し花が飾られている。写真・下は金沢市中央市民体育館の衆院選石川1区の開票作業の様子(午後9時32分)
⇒14日(日)夜・金沢の天気 ゆき
14日、イフガオ里山マイスター養成プログラムの第6回の講義がイフガオ州大学で行われた。今回日本からのイフガオに訪れた講師陣は多彩な顔ぶれだった。能登里山里海マイスター育成プログラムの教員、小路晋作特任准教授とシュクル・ラフマン教務補佐員、国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)のイヴォーン・ユー研究員の3人が講義を行った。
開会挨拶のなかで、イフガオ州大学のセラフィン・ゴハヨン学長が、イフガオの棚田を保全する人材養成を支援するための学内組織「GIAHS支援センター(仮)」の設置を表明した。続いて、JICA事業「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」の日本側実施責任である金沢大学の中村浩二特任教授が能登里山里海マイスター育成プログラムの取り組みの進捗状況を説明。イフガオ州大学のダイナ・リチヤヨ教授がイフガオ里山マイスター養成プログラムこれまでの活動状況(6回の講義、能登研修など)を報告した。その後、受講生の中から選ばれた5人が課題研究の中間報告をプレゼンし、イフガオに伝わる農耕や文化資源の価値を再評価し、現代の視点で活かす試みを披露しました。この協議会のハイライトは前回のコラムでも掲載し
たように受講生たちの課題研究のプレゼンだ。
イフガオの棚田は1995年にユネスコの世界文化遺産、2005年には国連食糧農業遺産に認定されている、壮大な棚田だ。その面積はざっと1万7000㌶、東京ディズニーランドとディズニーシーを合せた面積が100㌶なので、その170倍も広がる広大な棚田だ。さて、そのイフガオの棚田で起きている現実はこれまで何度かこのコラムで述べてきたように、若者の農業離れだ。現地の人が言うには、最近は若者だけでなく、中高年の田んぼ離れも広がっている、と。世界遺産でもある地域の文化を今度どう守って、継続的に発展させていけばよいのか、まったく日本と同じような、いや世界で起きているこの若者の農業離れという問題に向き合えばよいのか。そこで、金沢大学が国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業で実施しているが、「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」、別称「イフガオ里山マイスター養成プログラム」。フィリピンでのカンターパートナーはイフガオ州大学、フィリピン大学オープン・ユニバーシティだ。
文化が南に伝播してイフガオに、そして北に伝わり能登など日本に。そんな農耕文化のダイナミックな広がりを感じさせるのだ。ヴィッキーさんは「イフガオの民俗資料をまとめて文化遺産の価値や誇りを未来に伝えたい」と意欲を持っている。
先月(10月)11日、金沢大学が石川県能登半島の4自治体(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)などと連携して実施している、社会人の人材養成講座「能登里山里海マイスター育成プログラム」(実施代表・中村浩二特任教授)の第三期生入講式が、珠洲市の金沢大学能登学舎で執り行われた。この入講式は通算で7回目となるが、今回初めて海外からの参加があった。フィリピンのイフガオ州大学、セラフィン・ゴハヨン学長だ。イフガオ州大学は、先日このコラムで紹介したイフガオ里山マイスター養成プログラムを実施するにあたっての、金沢大学のカウンターパートでもある。入講式ではゴハヨン学長から祝辞をいただいた。イフガオからの心のこもったメッセージだった。
能登の里山保全や祭り参加をする「能登ゼミ」について、「能登ゼミ・SFS(学生の短期滞在型実習) による、現場主義的な地域づくり」と題して事例報告した。学生にとって、過疎化は能登の魅力になりうる、人が少ないからこそ一人ひとりの存在が大きく、人同士の強い結びつきが生まれる点がメリットと述べた。
然•風土•歴史を活かした、この地域でしか出来ないアートプロジェクトで国際芸術祭を開催する計画だ。アートによる地域社会の活性化、環日本海のアジアとのアートネットワーク、アジアから世界への発信を奥能登が拠点となる」。
事例報告で4組が報告。最初に、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターの加藤基樹助教が、学生2人と演壇に立ち「学生の地域活動の教育効果」と題して述べた=写真・上=。同センターは、「社会貢献」と「体験的学習」をキーワードに、昨年度実績で13600人の学生たちが地域活動に参加。東京からバスと電車で9時間かかる岩手県田野畑村へ50年間、年4回の合宿を通して育林作業を中心に活動しているサークルもある。学生のボランティアセンターでは日本最大で最古かもしれない。
げて大学との連携を図ろうとしており、コーディネーターの役割は地域と大学の双方のメリットを生み出す潤滑油であると述べた。
キャンパス構想推進協議会(会長・福森義宏金沢大学理事・副学長)は10月17、18日の両日、「地域・大学連携サミット2014㏌穴水」を開催した。協議会では、平成23年度「地域再生人材大学サミット」(輪島市)、同24年度「域学連携サミットin能登」(珠洲市)、同25年度「地域・大学連携サミット」(能登町)を開いており、今回4回目となった。学生・研究者との交流を拡大して地域再生を目指すシンポジウムで初日170人が訪れた=写真=。
1年間に凝縮されたカリキュラムで、受講生たちは月2回の土曜日、能登学舎(珠洲市三崎町小泊)でこれからの能登の里山里海をどのように活かしてゆくべきかについて、多彩な講師陣の指導を受けながら、熱心に議論を積み重ねてきた。その間、様々な戸惑いや悩みもあった。受講生たちは、それを乗り越え、自らの課題研究をまとめ上げて、審査と評価を得て、この日の修了式を迎えた。
そのため同様の課題を有する、日本の2つの世界農業遺産認定地域(能登・佐渡)との結びつきを強化し、金沢大学が能登で培った里山里海をテ-マとした人材育成のノウハウを移転し、同地において魅力ある農業を実践し、地域を持続的に発展させる若手人材養成のプログラムの構築を支援するというもの。また、GIAHSの理念の普及を通じた国際交流・支援を実施することにより、能登および佐渡地域において、国際的な視点を持ちながら地域の課題解決に取り組み、国際社会と連携するグローバル人材の育成につなげていく。少々欲張った取り組みではある。
、古民家の活用などついて耳を傾けた。21日午後からはイフガオ里山マイスターの受講生5人が現在取り組んでいる「ドジョウの水田養殖」や「外来の巨大ミミズの駆除・管理」などについて発表した。これに能登の受講生やOBがコメントするなど、研究課題の突き合わせを通じて、相互の理解を深めた。