⇒トピック往来

☆「選挙一過」の光景

☆「選挙一過」の光景

   23日、台風21号が北陸を去ってしばらく青空がのぞいた。すっきりと晴れ渡った金沢の家並み、山河はまさに台風一過の透明度の高い風景だった。衆院総選挙は与党が定数の3分の2(310議席)を超える議席を獲得した。そこから見える光景もまた、くっきりと見える「選挙一過」の政治の光景だ。

    すっきりと見えた山が「株高」だった。23日、日経平均株価は2万1696円と上昇し、ことしの最高値を更新し29年ぶりの高値水準、15営業日連続の値上がりは57年前の14営業日連続の値上がりの記録を超え「史上最長」と、メディアは報じている。「天晴(あっぱれ)」と言うべきか。

   すっきりと見えた公約は消費税率を10%に引き上げること。国の借金減らしに当てる分を削って、幼児教育の無償化などに使うと宣言して安倍総理は解散に踏み切ったのだから、これは間違いなく実行されるだろう。曇り空も見える。では、消費税の使い道を見直すことで財政再建が遅れることを国民にも国際的にも説明責任がある。もう一つ見逃せないのが日銀による大規模な金融緩和が継続されるということだ。

   選挙一過のもう一つの光景は北朝鮮。首班指名を行う特別国会は来月1日に招集され、第4次安倍内閣がスタートする。その最初の大仕事が「トランプ大統領との外交展開」だと読む。5日に2泊3日で日本を訪れるトランプ大統領はゴルフだけをするわけではない。北朝鮮問題、とくに「斬首作戦」の日程の双方合意ではないかと個人的に勘ぐっている。そう推測する理由は、今月20日の各社が伝えている、安倍総理がトランプ大統領を護衛艦「いずも」(全長248㍍)に招待するというニュースだ。「いずも」は海上自衛隊最大級の護衛艦だ。報道各社は「強固な日米同盟をアピールする狙い」など報じているが、本来の狙いは「朝鮮半島有事の際はこの護衛艦を出す」とアピールするためではないか。

   アメリカ軍の機関紙「星条旗新聞(Stars and Stripes)」は今月23―27日で、非戦闘員救出作戦(NEO)訓練を実施すると報じている(9月12日付)。大使館員やアメリカ軍の家族、民間人らが旅券などを持って韓国内に18ヵ所の避難所に集まり、航空機や船舶で日本に逃げる退避訓練だ。その記事の見出しがすべてを物語っている。「US military plans semiannual evacuation drills against backdrop of North Korea tensions」。通常の訓練とは言え、朝鮮半島有事を想定した訓練は半年に一度行われているのだ。アメリカ軍はすでに朝鮮半島沖に戦略爆撃機や原子力潜水艦、空母などを展開している。

   このような状況で、「いずも」にトランプ大統領を招待することは、「斬首作戦」を決意する大統領に対し、後方支援の最大のアピールになると安倍総理は考えているのではないか。衆院総選挙を早めた理由も北朝鮮情勢を計算に入れたものではなかったか、と。これでは勘ぐりである。

⇒24日(火)朝・金沢の天気    くもり

    

☆さいはてのアート <下>

☆さいはてのアート <下>

   先日(今月7日)、奥能登国際芸術祭の実行委員長でもある泉谷満寿裕・珠洲市長と立ち話だったが、今回のアートフェスティバルについて話をうかがうチャンスに恵まれた。「すごい反響ですね」と水を向けると、泉谷氏は「おかげさまで鑑賞者は目標の2倍の6万人を超えそうな勢いで、手応えを感じています」と口元がほころんだ。

    ~芸術はセットで一つ、可能性の示唆「Something Else is Possible」~

    次に「トリエンナーレ(3年に一度の美術展)で次回は2020年になりますが、『奥能登』と銘打っているので2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へと会場を広げるお考えはあるのですのか」と質問した。「さいはてのアートなので、他の自治体とも連携してできればさらにアートの面白味がでてきます。しかし、運営資金を出し合うとなると途端にハードルは高くなります」と今度は口元が引き締まった。1週間後の14日夜、再び泉谷市長にお目にかかった。地元のキリコ祭りの会場で、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」で知られる新潟県十日町市の関口芳文市長の訪問を受けて、市内を案内されていた。珠洲市と十日町市の連携イベントを模索しているのかと直感したのだが。

   鉄道の能登線の終着駅だった旧・蛸島(たこじま)駅から数百㍍点前、かつての線路上にカラフルな作品がある。「なにか他にできる Something Else is Possible」(作者:トビアス・レーベルガー)。何か可能性を引き出してくれそうな、響きのある言葉だ。ドイツ人作家であるレ style=”float:left; margin: 5px;”>    ーベルガー氏が能登に贈ったメッセージではないだろうか。「さいはて」であるがゆえに出来ることがある、と。

    黄色からピンク色への暖色に塗られたトンネルのようなカタチをした作品だ。レールの上を意識したのだろうか。そのトンネルの出口付近に双眼鏡を置いてあり、のぞくとネオンサインの看板が見え、そこに「Something Else is Possible」の文字が描かれている。ボランティアの男性ガイドによると、ネオンサインの看板とセットで一つの作品なのだと解説してくれた。なるほど。肉眼であれ、双眼鏡であれ、近くでも遠く離れていても「作品の場」は構成できる。なるほど、芸術はセットで一つだ。 

   もう一つセットがあった。作品から100㍍ほど山側の線路上に錆びた電車が1車両ある。2005年4月に穴水駅以北の能登線が廃止された後、地元の有志が買い取ってイベントなどに使っていた。が、最近ではガラスが割れ、錆びなどの痛みも激しく、利用されず放置状態となっている。そこで、錆びた車両、カラフルなトンネル、ネオンサインの看板と3点セットで見てみると、過疎の現実からアート表現へ、過去・現在・未来へ、絶望から可能性へ、など一本のレールの上で物語が構成されていることに気付く。

   「さいはて」のアートは22日に千秋楽だ。大型台風が来ることも予想される。衆院選総選挙の投票日も重なって、慌ただしさの中でフィナーレを迎える。2020年、どのような運営コンセプトで開催され、作品が鑑賞できるのか。

⇒20日(金)夜・金沢の天気  くもり 

★さいはてのアート <中>

★さいはてのアート <中>

   これはパロディ・アートだと直感した。最初は笑いが込み上げ、後は少々悲しくなる現実と直面するのがこの作品だ。「神話の続き」(作者:深沢孝史)は笹波海岸に創作された「鳥居」である。青空と青い海に映える白い鳥居は印象深い。説明看板には平成29年建立の「環波(かんなみ)神社」で、海と漂着物を信仰する神社、と記されている。

    ~現代の漂着神は海の向こうからの廃棄物、文明の大いなるパロディ~

    2礼2拍手1礼で鳥居をくぐった。よく見ると、鳥居の柱やしめ縄まで、すべて廃棄物なのだ。ボリタンクやペットボトル、漁具など。しかも、ハングル文字や中国語、ロシア語の表記のものが目立つ。日本語のものもある。しめ縄は廃棄された漁網だろうと想像がついた。この周辺で集めた廃棄物で相当の量に驚く。海にはこれほど廃棄物が漂着しているのか、と。

   かつて能登には寄神(よりがみ)信仰があった。文明が大陸からもたらされた時代、海から漂着した仏像や仏具などは神社にご神体として祀られ、漂着神となった。神は水平線の向こうからやってくるという土着の信仰だ。時代は流れ、現在の寄神は最良の廃棄物なのである。その廃棄物で造った鳥居に2礼2拍手1礼するのかと、たっぷりと皮肉が込められていて、思わず笑ってしまう。

   作者の深沢氏はさらに突っ込んだ解釈でこう述べている。「人間たちは、電気を供給する役目を終えてあまりある力を持つ廃棄物=神様を埋葬するために、ガラスの棺に納め、さらに土で周りを囲い、地の底まで埋めて供養することにしました」(説明看板)。廃棄物は海だけでなく、陸にもある。それは、放射性廃棄物だと暗示している。

         この作品を見ながら、ふと、国連環境計画(UNEP)のアルフォンス・カンブ氏の言葉を思い出した。カンプ氏が「いしかわ国際協力研究機構(IICRC)」の所長時代に金沢で知り合い、何度か能登視察に同行したことがある。廃棄物が漂着した海岸を眺めながら、「日本海の環境を守る能登条約が必要ですね」と。もう10年前のことだが、カンプ氏は日本海は生け簀(いけす)のような小さな海域であり、このまま放置すれば大変なことになるとカンプ氏は危機感を抱いていた。地中海の汚染防止条約であるバルセロナ条約(1976年)が21ヵ国とEUによって結ばれ、地中海の海域が汚染されるのを何とか防いでいる。「能登条約」、遅まきながらその必要性を実感した。

⇒18日(水)朝・金沢の天気   はれ

☆さいはてのアート <上>

☆さいはてのアート <上>

   能登半島の先端・珠洲市で開催されている「奥能登国際芸術祭2017」(9月3日―10月22日)にこれまで4度訪れた。その中から自らの私の感性に合った作品をいくつか紹介する。

     ~海沿いの寂れた小屋と捨てる貝殻が作品になる「サザエハウス」~

   前回ブログで紹介した珠洲市馬緤のキリコ祭り(13、14日)に参加した後、国際芸術祭のポイントをいくつか巡った。途中、沿道の広場で衆院選の候補者用の掲示板があり、近所のおばさんたち3人が候補者ポスターを見ながらにぎやかに話していた。たまたま、通りかかったので、聞き耳を立てた。石川3区(能登地区)では自民の新人(48歳)、希望の元職(43歳)、共産の新人(36歳)の3人が立候補している。「今回の選挙は若い人ばっかりやね。元気があっていいね」と笑っている。すると、一人が口元をほころばせている自民候補のポスターをのぞき込んで、「この人、ちょっと歯並びがよくないね、前歯がガタガタや」と。するともう一人が同じく歯を見せて笑っている希望元職を指さして、「この人はしっかりした歯やわ」と比較した。あとは雑談で終わったようだ。人物は見た目の印象が心に残る。ひょっとして歯並びが投票行動の決め手になるのかもしれないと考えさせられた。本題から話がずれた。

    「サザエハウス」(作者:村尾かずこ)。海沿いの一軒の小さな小屋の壁面を膨大な数のサザエの貝殻で覆っている。よく見るとサザエだけでなく、アワビや巻貝の殻もある。また、同じサザエでも貝殻のカタチが違う。殻に突起がくつもあるもの、まったくないもの、それぞれにカタチの個性がある。サザエは一つ一つがその生息地(海底の岩場の形状など)に適応して形づくられた、完成度の高いアートなんだと改めて思えるから不思議だ。靴を脱いでハウスの中に入ると今度はサザエの貝殻の入ったような白色の曲がりくねった世界が広がる。

   入り口にいたシニアの男性ボランティアに、サザエの殻はどこから集めたのかと尋ねた。すると「全部で2万5千個、全部市内からですよ」と少し自慢気に。聞けば、アーチストの村尾氏との地元の人たちの打ち合わせで、今年6月から一般家庭や飲食店に呼びかけて集め始めた。貝殻の貼りつけ作業が7月からスタートし、作品のカタチが徐々に見え始めると、集まる数も増えた。当初から作品づくりを見守ってきたという男性ボランティアは「サザエの中身は食べるもの、殻は捨てるものですよ。その殻が芸術になるなんて思いもしなかった。殻を提供しただけなのに地元は参加した気分になって、(芸術祭で)盛り上がってますよ」とうれしそうに話した。

   「サザエハウス」の外観は全体に白っぽい。カメラを向けていると、赤いスカートの女性が通り過ぎたのでシャッターを押した。赤と白のコントラストが鮮やかに映った。半島の先端、さいはてのアートがまぶしい。

⇒16日(月)午後・金沢の天気   くもり

★義経伝説とキリコ祭り

★義経伝説とキリコ祭り

  きのう(13日)ときょう、能登半島の先端・珠洲市の馬緤(まつなぎ)という集落で伝統の秋祭りがあり、大学の教員スタッフや学生5人でボランティアに出かけた。祭りのボランティアというのは、能登で「キリコ」と呼ぶ高さ12㍍にも及ぶ奉灯を動かす人手が足りず、集落に住む知人から「5、6人、祭りに来て」とSOSが入った。

  夜にキリコが沿道を動き始めると家々の人々は外に出てきて、巡行を嬉しそうに眺める。キリコは集落の誇り、あるいは自慢でもあるのだ。ところが、過疎化で若者の絶対数が足りない。でも、集落のシンボルでもあるキリコは出したい、そこでお声がかかるというわけだ。ただ、私自身がキリコ祭りが好きなので、還暦を過ぎても呼ばれればひょいひょいと出かける。

    この馬緤集落は、キリコに描かれる絵が面白い。源義経の「八艘跳び」の絵や義経と弁慶の絵=写真=なのだ。このキリコ絵の作者であり、祭りに誘ってくれた田中栄俊氏(元珠洲市教育長)が馬緤集落と義経伝説について語ってくれた。

  平氏と源氏が一戦を交えた壇ノ浦の戦い(1185年)で功名を上げた義経は京に帰り、敵方だった平時忠(たらいのときただ、平清盛の後妻である時子の弟)の娘を妻に迎える。義父である時忠は武士ではなく、「筆取り武士」と呼ばれた文官だったこともあり、死罪ではなく流刑となる。その配流先が能登だった。間もなくして、義経も兄・頼朝との仲違いで追われた。義経は奥州・平泉に逃げ延びる途中に加賀の安宅の関、そして能登に流された時忠を訪ね面会した。その場所が馬緤集落なのだ。

  義経の一行がここで滞在するため、馬を繋いだので、「マツナギ」という地名になり、その後「馬緤」の漢字が当てられた。馬に与えるエサがなかったので、海藻の神馬藻(ギバサ、ホンダワラの一種)を村の人が与えた。土地の人は義馬草(ぎばさ)と漢字を当てている。では、弁慶はどうか。「安宅の関」ほどの活躍はないが、能登では水路の石を弁慶が担いで脇によけたと言われる「弁慶石」がある。もう一人、常陸坊海尊は義経一行と別れて能登の山に住み着き修行に励んだ。その山は「山伏山」といわれている。能登にはこうした義経にまつわる伝説が多い。この地域には時忠の子孫とされる人たちもいて、平氏と源氏の伝説が共存する里でもある

  祭りには3基本のキリコが舞った。担ぎ手はシニア世代が多いが、元気がいい。伝説に彩られた地域の「祭りパワー」を感じた。

⇒14日(土)夜・金沢の天気     くもり

★「ごちゃごちゃ選挙」の行方

★「ごちゃごちゃ選挙」の行方

   きょう10日、衆院選の公示、総選挙がいよいよ始まったというか、「ごちゃごちゃ選挙」がとりあえず始まったという印象だ。夜、帰宅すると「投票のご案内」という金沢市選挙管理委員会からの郵便はがきが届いていた。中を開いてみると、期日前投票や不在者投票のことなどが細かく記されていて、なおさら「ごちゃごちゃ感」が募った。

    ごちゃごちゃ選挙の印象はどこが理由なのか、自分なりに点検してみる。第一に争点がどこにあるのか分からない。安倍総理は「国難突破解散」と称して、北朝鮮の核実験・弾道ミサイルの発射に対応した体制づくりと消費税を10%に増税し、幼児教育や保育の無償化など少子化対策に回すと争点を掲げた。野党は増税の凍結を訴えるが、それよりも「解散そのものが森友・加計隠しだ」とのボルテージが高い。政策論争が聞こえない。

   二つ目に、「政権選択選挙だ」と希望の党の小池代表氏は「反安倍」を打ち出したが、肝心の希望の党が総理候補を掲げずに選挙戦に臨んだ。これでは、有権者は政権選択ができない。三つ目が、立候補者そのものの「ごちゃごちゃ感」だ。民進党の出身者の多くが希望の党に鞍替えしたが、政策の調和がはっきりしない。希望の党の公約には「9条を含め憲法改正論議を進める」と明記されているが、鞍替えした中には与党の安保法制や改憲に一貫して反対を叫んできた候補者もいる。地元の選挙でたとえると、今回石川2区で希望の党から立候補した柴田未来氏は弁護士で、昨年7月の参院選では民進党から立候補した。そのとき、金沢市内での街頭演説を聴いたが、「憲法の理想を現実に合わせて引き下げるべきではない」と強調していて、さすがに弁護士だけあって護憲と安保法制の反対の信念は筋金入りだと印象を強くしたものだ。

   きょうの公示、すっきりしない中でも、さまざまな現象が起きている。日経平均株価は6営業日連続の値上がり、132円高い2万823円で今年の最高値となった。これは選挙で政権交代が起きて政治が刷新されるとの期待値なのか、どうか。株式相場の世界では「うわさで買って、事実で売る」と格言があるらしい。うわさ=期待で株価は上がり、結果で売られて下がる。そんなパターンになるのかどうか。ただ、今回の上げは選挙というよりアメリカの景気が連動しているようだ。どこに投票するか、誰に投票するか、秋の紅葉を散策しながら思案したい。

⇒10日(火)夜・金沢の天気   はれ

★衆院解散、アナログな一日

★衆院解散、アナログな一日

    きょう正午、テレビ中継を視聴していて、臨時国会の冒頭で解散が行われ、バンザイの声が上がった。こんな古典的なアナログなことをいつまでやっているのかと一瞬思い、笑ってしまった。「よしっ、次も当選を目指すぞ」と心意気なのだろうが、それだったら、拍手の一本締めでよいのではないか。    

    午後2時すぎ、金沢大学で担当している共通教育科目「マスメディアと現代を読み解く」を履修した学生たちに次のようなメールを出した。「きょう臨時国会で冒頭解散があり、10月22日の衆院選挙が決まりました。メディア(新聞・テレビ)は選挙情勢や候補者の当落など分析に動いています。ここでお誘いですが、22日の投票が終わり次第、開票作業が始まります。この開票作業を双眼鏡でウオッチして当落を見極める「開披台(かいひだい)調査」というメディア独自の調査手法があります。メディアと連携して開披台調査を実施します。学生30人を募集します。この調査に参加するとメディアの選挙報道の在り様を学ぶことができます。交通費・手当も出ます。10月12日に説明会を開催しますので、参加希望の学生は集まってください。講義を履修していない学生の参加も可能です。」

   この開披台調査は双眼鏡で開票作業員の手元をみて、実際にどの候補に票が入っているのかを読んでそれをメディアの選挙本部に電話で知らせる。30人15組で多様な角度からウオッチするので候補者の得票比率を確かめるには精度は高い。とてもアナログな手法なのだが、確かな読みができる。もちろん、開披台調査は新聞社やテレビ局が各自治体の選挙管理委員会に事前に届けて行う合法的な調査である。

    午後3時ごろ、金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」で、「石川県のクマ事情とネバダ州のクマ対策」と題した講演があり聴きに行った。すると、集まった社会人メンバーの中に、民進党の支持を公言してきたA氏の姿があった。挨拶すると、A氏は「民主党時代から支持してきたが、今回の希望の党への合流はさっぱり理由がわからん。地元の支持者も気落ちが混乱してる」と嘆いた。

    地元の民進党石川県連は1区(金沢)、2区(加賀)、3区(能登)にそれぞれ元職や新人を立てる予定だった。急きょ3氏は希望の党へ公認申請することになった。10日に公示され選挙戦が始まるが、3氏は希望の党から出馬する理由を支持者に説明することから始めなければならないだろう。中には、安全保障関連法の白紙撤回を主張してきた立候補予定者もいる。希望の党への公認申請を望んでも、小池党首からポリシィが違うと排除される可能性もある。選挙に当選するためならば、政権交代のためならば主義主張を曲げてもよいのか、すっきり割り切れないアナログな心の葛藤が渦巻く様子が見て取れる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり   

  

☆金沢オリジナルな墓参り

☆金沢オリジナルな墓参り

    毎年旧盆には能登の実家に墓参りをするが、今年の幹線道路「のと里山海道」は上下ともにとても混んでいた。そこで下道(国道249号、159号)に降りたが、ここも混んでいた。通常ならば1時間30分ほどの距離だが、ことしは3時間余りかかった。3連休に盆休みが合わさって5連休、帰省と観光の車両がどっと能登に繰り出したのだろう。

    この時節いつも思うことだが、同じ墓参りでも金沢と能登・加賀では参り方に違いがある。金沢の場合は、墓所にキリコをつり下げる棒か紐がかけてあり、墓参した人は箱型キリコあるいは札キリコをかける。キリコには宗派によって、例えば浄土真宗の墓地ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏の「進上」には墓参した人の名前を記す。このキリコを献上しておくと、その墓の持ち家の人はキリコをチェックすれば誰が墓参に来たのか分かる仕組みになっている。

    これに対し能登・加賀では、キリコを持参する風習はないが、墓参りの後にその家を訪ねて仏壇にも合掌をする。直接顔を見せる能登・加賀と、名前をキリコに書き置きする加賀の違いがある。むしろ、キリコを持参する風習の金沢の方が独特のようだ。「墓参り キリコ」でネット検索をしても金沢関連の事例しか出てこないことを考えると、全国でも金沢ならでのは風習のようだ。

    ではなぜ金沢だけにとの疑問もわく。金沢での言い伝えでは、代々の加賀藩主の墓地に年寄衆や家老・若年寄らがキリコ(切籠)を献上したことが、年月を経て庶民にも広まったとする説がある。では、ほかの藩の大名にはそのような風習はなかったのだろうかとの疑問もわく。

    話を旧盆ののと里山海道に戻す。道路添いのパーキングエリアには売店がある。高松パーキングエリアで飲み物も買うために立ち寄った。ここで、「金沢オリジナル」の商品を見つけた。「金沢カレーコーラ」と「金箔七味」だ。コーラを飲んでみる。少々ソース風味が効いたコーラという感じだ。ご当地グルメの「金沢カレー」に寄り添うコンセンプトでつくられた飲み物だろう。金箔七味は七味唐辛子に純金箔が入ったもの。赤や黒の粉にキラキラと金が輝く。金箔は生産シェアは99%が金沢。金沢観光のちょっとした辛味の効いた土産だろう。念のために金箔は金沢ではうどんに入れたり、お酒に入っていたりと割と身近だ。(※写真=金沢の墓参りにはキリコが欠かせない。写真のキリコは板キリコ)

⇒14日(月)夜・金沢の天気   あめ

★避難訓練と制裁決議

★避難訓練と制裁決議

   石川県と輪島市の共同による、北朝鮮による弾道ミサイルの落下を想定した住民参加の避難訓練を今月30日に実施すると4日、記者発表した。「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練の実施について」と題した県庁危機対策課による記者発表文の内容は以下となる。

   訓練は今月30日午前9時から、防災行政無線で住民に情報伝達、同市河井町地区で住民が屋内避難を行う。これと連携した訓練として、河井町地区以外の市内小中学校の児童・生徒、教職員が屋内避難等を実施する。行政レベルでも国からのエムネットによる情報伝達を受け、県と各市町・警察本部・各消防本部との情報伝達の訓練を行う。訓練時間そのものは午前9時から10分間の予定、という。

   不可解なこともある。なぜ訓練を実施するのかという点だ。発表内容は以下。「訓練想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我が国に飛来する可能性があると判明」とある。どこかの国が弾道ミサイルは発射したという想定だが、「X国」という表現は何とも回りくどいが、外交に配慮した表現なのだろう。

    先月14日、同じ北陸の富山県高岡市でもJR高岡駅や小学校周辺で弾道ミサイルを想定した避難訓練が実施された=写真=。高岡市役所のホームページによると、訓練は、国や県、市の情報伝達系統の確認と居合わせた人それぞれの行動確認を行うことを目的とした。午前9時4分、ミサイル発射情報を携帯電話で受信した人、エムネットを受信した警察や鉄道、バス会社などからの呼びかけで知った人などが身を守るため「地下街に逃げる」「頑丈な建物に逃げる」「乗り物から降りる」など避難行動を取った。

   ちなみに、富山県庁の記者発表文でその目的を見ると、「想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我に飛来する可能性あると判明」と石川県とまったく同じ「X国」としている。石川、富山両県とも国の指導での実施なのでこのような同一表現になるのだろう。しかし、訓練を実感を持って訓練を行うというのであれば、「X国」ではなく「北朝鮮」と表現してもよいのではないだろうか。

   グローバルなレベルはもっとリアリティがある。北朝鮮が先月(7月)4日と28日の二度、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施したことをめぐり、今月5日の国連安全保障理事会で新たな制裁決議が全会一致で採択された。報道によると、その主な内容は、北朝鮮の主な外貨獲得の手段となっている石炭、鉄鉱石、海産物の輸出について、上限や例外を設けることなく一切禁止するとした。また、北朝鮮労働者の新たな受け入れも原則禁止とした。これによって、北朝鮮の総輸出額の3分の1に相当する10億㌦が減る。採択にはロシアと中国も賛成に回った。現実感のある制裁決議だ。

(※写真は高岡市役所HPより。高岡駅で屋内避難を呼びかける)

⇒7日(月)朝・金沢の天気    くもり

★「環境」という税負担

★「環境」という税負担

   毎月届く「電気ご使用量のお知らせ」に「再生エネ発電賦課金」という項目があり、今月(6月)分は1296円だった。この賦課金は使用した電力量1kwh当たり2.64円で、月々1200円から1300円を払っている。年間で言えば1万5000円ほどだ。

   再生可能エネルギー発電促進賦課金。賦課なので、全世帯に一律に割り当て負担させている。太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーの電気が普及すれば、わが国のエネルギー自給率の向上に有効で、化石燃料への依存度の低下につながるということで、負担の意義は分かる。

   今月始め、町内会で金沢市が来年2月から導入する家庭ごみ有料化の説明会があった。指定ごみ袋で、袋の容量1㍑当たり1円の課金となる。有料化の対象は「燃やすごみ」と、ガラス類や陶磁器類など「埋め立てごみ」の2種類。市の担当者の説明では、45㍑容量のごみ袋1袋を週2回出すとして、年間4000円余りの負担となる。

   使用済みの紙おむつや、庭木の剪定で出た枝葉や落ち葉などは有料化の対象から除かれている。また、事業者が出す燃やすごみと埋め立てごみはすでに有料化が実施されている。説明会で、有料化する理由について問われると、環境問題として「減量・資源化の促進」「費用負担の公平性の確保」「将来世代の負担軽減」などの言葉が節々で聞こえた。石川県内19の市町で、現時点で無料なのは金沢を含め小松、白山、野々市の4つの市のみ。ほかの15市町はすでに有料化されている。これも負担の意義は分かる。

   もう一つ、石川県には「森林環境税」がある。給与所得者の場合、毎年500円が給与から天引きされ、住んでいる市町へ納付される。会社などの法人も負担していて、年間で2億円余りになる。これが、手入れ不足の人工林の整備や、放置竹林の除去、クマやイノシシなどの野生獣の出没を抑止するための里山林の整備などに充てられている。

   石川だけでなく、日本の森林は危機的な状況といわれる。森林の所有者が高齢化し、後継者の都市生活化が進む中で所有林の管理は行き詰まっている。豪雨などにより大量の倒木が自然災害をより深刻なものにしている。さらに、イノシシやクマ、ニホンジカ、サルなどによる獣害被害は年々増え続け、被害範囲も里山だけでなく市街地にまで広範囲化している。これも負担の意義は分かる。

   年間でざっと2万円の「環境負担」だ。個々の負担の意義は理解できるが、それにしても金額がかさむ。「武士は食わねど環境税」かもしれない。

⇒22日(土)午前・金沢の天気    はれ