⇒ドキュメント回廊

★未明にグラグラ、能登で震度5強

★未明にグラグラ、能登で震度5強

   先ほど金沢の自宅で就寝しているとグラグラと揺れを感じた。一瞬「関西か」「能登か」と思い浮かんだ。1995年1月17日の阪神淡路大震災、2007年3月25日の能登半島地震のときもも同じような揺れを感じたからだ。スマホでNHKニュースを確認すると「能登地方で震度5強」の速報が出た。能登に住む知人にショートメールで「どうだった」と確認すると、「ガタガタと揺れたが、家は大丈夫」と返信があった。

   テレビのNHKを確認すると、「午前2時18分に輪島市で震度5強、穴水町で震度5弱、マグニチュード5.5、七尾市や中能登町、志賀町、能登町、高岡市、富山市などで震度4、金沢市などで震度3」と報じられている。   

   テレビ画面で表記されている震源(✖印)は2007年3月25日の能登半島地震のときと同じ場所、輪島市門前町沖だ。このときは輪島市と穴水町でマグニチュード6.9、震度6強だった。写真はそのときの輪島市門前町の様子だ。この地区だけで200余りの住宅が全壊したと記憶している=写真・上、2007年3月26日撮影=。明け方になるにつれて全容が明らかになるだろう。地域のみなさんの無事を祈りたい。 ⇒記述:3月13日午前3時24分現在

        震源地近くで震度5強だった輪島市門前町に住む知人に8時50分に電話して、街の状況を聞いた。「13年前に比べると棚から物がそれほど落ちていない。瓦が落ちたとか壁が崩れたということもない。ただ、総持寺の石灯籠が一部崩れたらしい。13年前と比べるとおとなしい地震だった」と。この地域ではけが人も倒壊家屋もなかったと聞いて少し安心した。気象庁が午前4時30分から行った記者会見をネットのライブ中継で視聴していた。今後1週間ほど最大震度5強程度の地震に注意が必要とのこと。 ⇒記述:3月13日午前9時19分現在 

  新聞各紙は夕刊で被害状況を詳細に伝えている=写真・下=。JR七尾線、のと鉄道は一部で区間運休となった。輪島市の小学校などでは図書館で棚から落ちた大量の書籍類が散乱、給食室でも食器棚から皿など食器が落下した。能登地域では地震に人的被害や火災の発生はなかった。 ⇒記述:3月13日午後7時50分現在 

        世界の金融・経済も大揺れだ。12日のニューヨーク株式市場のダウ終値は前日比2352㌦安の2万1200㌦、下げ幅は9日につけた2013㌦安を超え、過去最大となった。ドイツやフランスの株価指数は12%強下落し、イタリアの指数は17%近く値下がりした。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃している。13日東京株式の日経平均も一時1830円を超え、取引時間中の下げ幅としてはバブル経済末期の1990年4月以来、30年ぶりの大きさになった。日経平均の終値は12日より1128円58銭安い、1万7431円なった。終値が1万8000円を下回るのは2016年11月以来となる。(13日付・日経新聞Web版)。 ⇒記述:3月13日午後8時10分現在 

★「団子まき」まで中止とは

★「団子まき」まで中止とは

  「団子(だんご)まき」をご存じだろうか。金沢市などの寺では、釈迦をしのぶ涅槃会(ねはんえ)の法要がこの時節に営まれる。釈迦の遺骨に見立てた団子は僧侶らが米粉で作る。法要の後に団子がまかれ、参拝者は無病息災のご利益があるとされる団子を一生懸命に拾い集める。参拝者の中には、お守りとして身につける人もいる。子どものころ、競うように拾い集めたことを思い出す。

  懐かしい心の風景でもある団子まきが中止されると、きょう菩提寺からはがきが届いた。「恒例の涅槃会法要は3月22日とご案内致しましたが、昨今の新型コロナウイルス事情に鑑み、特に県内でも複数の患者が発生した事を重く受け止めて、今回は開催を自粛する方が良いと判断致しました。誠に残念ではありますが、予防と安心のためです。」と。確かに毎年境内には何十人と近所や檀家の人が集まるので、「やむなく中止」とせざるを得なかった和尚の苦渋の決断が伝わる。

  さらに別の行事の中止のお知らせもメールで届いた。茶道の利休忌の中止の案内だ。お茶の社中で3月29日に予定されていた。茶道を大成した千利休の遺徳をしので毎年営まれる。床の間に利休が描かれた掛け軸をかけ、茶を供え、一同で薄茶をいただく。利休忌ではしのぶだけではなく、「廻り花」「茶カブキ」などといった茶の湯の修練に励む大切な行事でもある。それをあえて中止するとなると、主宰者は相当の決断を要したはずだ。

   きょう石川県で5人目となる感染確認が発表された。5人とは言え、会を催す主宰者にとってナーバスにならざるを得ないだろう。勤め先の大学ではきょうも学術イベントの中止の知らせが相次ぎ届いた。新型コロナウイルスが日常の暮らしや職場環境、そして伝統文化や行事にまで暗い影を落としている。いま金沢はそんな状態だ。

⇒27日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆いよいよ「自分ごと」に

☆いよいよ「自分ごと」に

   新型コロナウイルス問題がいよいよ「自分ごと」になってきた。来月24日に金沢市内のホテルで予定していたある報告会を中止にすることにした。自身が事業の総括報告、そしてパネルディスカッションの司会をつとめる予定だった。8つの大学の事業関係者に出席を呼びかけた矢先だった。

   中止を決断したきっかけとなったのは大学からの通達だった。きょう午後、「新型コロナウイルス対応」という書面が教職員全員にメールで届いた。「新型コロナウイルス感染症の発生状況が落ち着くまでの間は、以下の対応を実施する。」との書き出しで、「・できるだけ人込みの多い場所を避ける」「・不要不急の出張は中止する」「・イベントについては、可能な範囲で中止、延期又は規模縮小を行う」と。この通達をもとにスタッフと相談し、中止することを決めた。

   やってやれないことはない。ただ、スタッフからの意見は「通達が来ているのに、なぜあえて実施するのかという風当りも強まるのではないか」と。事業の報告書を作成中なので、後日関係者に郵送することで報告会に代えることにした。この通達の直後から学内イベントの中止の知らせが次々とメールで届いている。

   さらにショックだったのは能登に住む関係者からのメールだ。今月29日に能登で研究発表の審査会があり、出席を予定している。その審査会の主催者あてにコメントがメールで届いた。「大変申し訳ないと思うが、金沢市及び、感染経路内で活動されている方々の奥能登再訪は現在慎んで戴きたい」と。金沢市内では4人の感染者が出ている。「金沢の人間には能登に来てほしくない」という警戒心が能登の人々の心に広がっているのだろう。自分自身が警戒されているのだが、ある意味、当然と言えば当然かもしれない。

   冒頭で「自分ごと」と述べたが、中国・武漢からクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」へ。そして、日本各地から金沢での4人の感染者と事態が接近してきた。きょうは自らイベント中止の決断をし、そして能登の在住者からは「金沢の人間は能登に来てほしくない」のメールが届いた。コロナウイルス問題は、実に濃厚な自分ごとになった。

⇒26日(水)夜・金沢の天気    あめ

☆「雪中四友」のころ

☆「雪中四友」のころ

  「雪中四友(せっちゅうしゆう)」という言葉がある。厳冬のこの季節でも咲く4つの花、ロウバイ、ウメ、サザンカ、スイセンのことだ。我が家でもこの時節、床の間に飾る花はロウバイとスイセンの「ニ友」である=写真=。晴れ間を見計らって庭に出て、2種の花を切ってくる。黄色い花のロウバイは「蝋梅」と漢字表記され、ほのかな香りも楽しめる。

         もう一つの花、スイセンも可憐に咲き誇っている。学名の「Narcissus(ナルシサス)」はギリシャ神話のエピソードに由来するそうだ。美しいがゆえに、「自己愛」「神秘」といった花言葉がある。二友はそれぞれに花の個性を放っているものの、二友を引き立てる「雪中」の状況がいまだにないのは心もとない。

   金沢地方気象台は昨年12月6日に初雪を観測と発表しているが、正確には「みぞれ」を観測したのだ。みぞれは、雨と雪が混在して降る降水のこと。北陸に住む者の感性では、本来の雪とは表現し難い。それはさておき、1月半ばに入ったきょう現在でも、雪がなし状態が続いている。ご近所さんとの年初のあいさつは「雪が降らんで、いい正月やね」だったが、最近は「雪が降らんで、これはこれで気味悪いね」に変わってきた。

   積雪に備えて庭には雪吊りを施し、路面凍結でも走行できるように自家用車もスタッドレスタイヤに交換している。心の準備はでてきているのに、その雪がない。肩透かしをくらった格好だ。そんな話を友人たちとすると、「何を狼狽(ろうばい)しとる。大寒は今月20日やろ、心配せんでもこれからドカッと降るわな」と笑われた。

   雪に対する北陸独特の感性がある。雪害に対するリスク管理は個人の責任である。そのために、雪害と正面から向き合う。大雪が降れば、地域の人たちは道路の除雪するために協働し、屋根雪下ろしに互助もいとわない。

   逆に、雪をよく知るがゆえに雪をめでる。冬のこの時期に、雪見茶会が開かれる。抹茶をいただきながら、雪見障子ごしに庭をめでる。雪吊りの庭の雪景色はまさに造形と自然の融合デザインではある。少しは雪が降ってほしいものだ。

⇒15日(水)夜・金沢の天気    あめ

☆「令和元年」回顧=いのちの歌

☆「令和元年」回顧=いのちの歌

       大晦日の『NHK紅白歌合戦』が令和元年のフィレナーレを飾った感じだった。紅白初出場の竹内まりやの「いのちの歌」が胸にしみた。「生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに 胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ この星の片隅で めぐり会えた奇跡は どんな宝石よりも たいせつな宝物・・・」。人と人の出会いの喜び、命をつなぐことの大切さ、平和の切望、実に生命感があふれていた。

    民主主義を死守し、地球環境を叫ぶ、地球の「いのちの歌」

   この1年を振り返ってみて、まさに生命感が躍動した年ではなかっただろうか。香港の民主主義は生きている、そう実感した。逃亡犯条例が中国政府と間で成立すれば、中国に批判的な香港の人物がつくられた容疑で中国側に引き渡される。そう懸念した香港の学生や市民が動いた。10月に改正案は撤回されたものの、香港政府はデモの参加者にマスクの着用を禁止する緊急状況規則条例「覆面禁止法」を制定した。顔を出させることでデモの過激化を抑圧する効果を狙ったものだろう。これがさらに学生たちを抗議活動へと動かした。

   そして、実施さえも危ぶまれていた香港の区議会議員選挙が11月24日に予定通り行われ、452議席のうち政府に批判的な民主派が80%を超える議席を獲得して圧勝した。あの騒乱の中で投票率が70%を超えて過去最高となり、「香港の躍動する民主主義」を世界に知らしめた。

   16歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの活動にも強い生命感を感じる。なんと言ってもパンチの効いたスピーチだ。「You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I’m one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing.」(あなたたちは空虚な言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪った。それでも、私は幸運な者の1人だ。人々は苦しんでいる。人々は死んでいる。生態系全体が崩壊している)=国連気候アクション・サミット2019(9月23日)でのスピーチから引用。

         地球温暖化対策に本気で取り組んでいない大人たちを叱責するメッセージだ。「私たちが地球の未来を生き抜くためには温暖化対策が必要なんです」と必死の叫び声が聞こえる。

    竹内まりやが歌う「生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに・・・」「泣きたい日もある 絶望に嘆く日も」「この星にさよならをする時が来るけれど 命は継がれてゆく・・」の歌詞を聞いていて、香港の民主主義を守り抜く行動、地球環境を復元させる必死の叫びと重なって聞こえる。まさに地球の「いのちの歌」ではないか、と。

⇒31日(火)夜・金沢の天気   

★ 「令和元年」回顧=実名報道

★ 「令和元年」回顧=実名報道

   大学でメディア論の講義をしていて学生たちからよく意見が出されたのは実名報道に関してだった。きっかけはこの事件。ことし7月18日に発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火で、社員70人のうち36人が死亡した。京都府警は8月2日に10人の実名による身元を公表し、同月27日に25人、その後10月11日にさらに1人の身元を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。    

      京アニメ事件、犠牲者の実名報道が問いかけること

   府警は同時に「犠牲になった35人の遺族のうち21人は実名公表拒否、14人は承諾の意向だった」(9月10日付・朝日新聞Web版)と説明している。その拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされるから」だった。遺族側が警戒しているのはメディアという現実が浮かび上がった。

   警察側の身元の公表を受けて、メディア各社は実名を報道した。さらに、現場記者は被害者側のコメントを求め取材に入った。8月3日付の朝刊各紙をチェックすると、「亡くなった方々」として、実名だけでなく、年齢、住所(区、市まで)、そして顔写真もつけている。その写真は、アニメ作品の公式ツイッターやユーチューブからの引用だった。遺族から提供を受けたものもあった。

   マスメディア(新聞・テレビなど)の実名報道と遺族への取材について、学生たちは「被害者遺族にさらなる苦痛を与える取材はやめるべき」や「実名か匿名かは遺族の意向が最優先されるべき」、「いまのマスコミは加害者の名前を報道することには慎重になっているが、被害者の名前は当たり前にように軽く報道している感じがする」と辛口のコメントが多い。さらに、「被害者の実名報道が遺族に対するメディアスクラム(集団的過熱取材)の原因ではないか。被害者遺族への取材や実名報道にこだわる理由がわからない」とさらに手厳しい意見も。

   確かにメディアスクラムは以前からさまざまに批判を浴びている。「報道被害」という言葉も社会的にはある。記者が玄関のドアホンを鳴らしただけで、生活を脅かされたと敏感に感じる遺族もおそらくいる。遺族の心境は「そっとしておいてほしい」のひと言だろう。

   メディア側でもメディアスクラム化を避けるために、代表取材というカタチをとったりする。実際、京都アニメーション事件では、報道各社の代表者が、取材拒否の意向が明確な際はその意向を共有するよう努めることや、新聞・通信社とテレビの各1社を選び、代表社が遺族に取材の意向を尋ねる形式を取った。

   学生たちの意見は批判的なコメントが多かったが、一人の読者・視聴者の立場からすると、やはり実名であることが記事内容の真実性が伝わる。ただ、被害者や遺族へのコメントが必須かどうか。事件の状況が理解できれば、被害者側の心情は察するに余りあるものだ。ケースバイケースだが、被害者側のコメントはなくてもよい。

   もう一つ議論を呼んだのは、加害者の実名報道だ。マスメディアのWeb版で掲載された逮捕記事などはインターネットの掲示板などに転載されている。問題は、その後、証拠不十分で不起訴となったりするケースもままある。その場合でも容疑者のままネットで掲載されている。いったんネットに上がった実名と犯罪を消去することはおそくら不可能だろう。

   加害者の実名は裁判で判決が確定するまで掲載しないという論もある。しかし、逮捕段階からの実名報道は事件の真実性を担保することであり、匿名での記事は誰も注目しないだろう。

⇒30日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆ 「令和元年」回顧=無謀な海

☆ 「令和元年」回顧=無謀な海

   あの北朝鮮からアメリカへの「クリスマスプレゼント」はどうなったのか。このままだと「お年玉」になるのだが。もちろん誰も欲してはいない。また、年末になると日本海は北西の風が吹き、大しけ(荒れ模様)となる。毎年このころ北朝鮮から日本に大量に届くものがある。「お歳暮」ではない、漂着船だ。

   日本海で繰り返される北の理不尽な振る舞い

   報道によると、今月27日に新潟県佐渡市の素浜海岸に打ち上げられた北朝鮮の木造船とみられる漂着船から7遺体が見つかったと第9管区海上保安本部が発表した。同本部によると、北の漂着船から遺体が発見されたのはことし今回が全国で初めてという(29日付・新潟日報Web版)。漂着船はことし1年で150件を超えている。それにしても、素浜海岸は佐渡島の西側、能登半島と向き合った位置関係にあり、能登の海岸に打ち上げられる可能性もあったと考えると他人事ではない。

   北の難破船は構造的な問題でもある。漂着する船のほどんどはイカ網漁船とみられる。北朝鮮の慢性的な食糧不足から国策として漁業を奨励し、「冬季漁獲戦闘」と鼓舞し、大しけでも無理して船を出しているようだ。北朝鮮は沿岸付近の漁業権を中国企業に売却しており、北の漁師たちは外洋に出ざるを得ない状況に置かれているとされる。いくら食糧確保のためとはいえ、古い木造漁船で出漁を煽るとは、難破の悲劇をわざわざつくり出しているようなものだ。ちなみに、日本の沿岸に着いた漂着船から見つかった遺体は2018年が14人、17年は35人、16年は11人(同)。見つかる遺体はごく一部だろう。                    

    問題はまだある。難破した木造漁船の漂着や漂流そのものが問題を引き起こす。転覆した木造船などはレーダーでも目視でも確認しにくいため、日本の漁船との衝突の可能性が出てくる。まさに「漂う危険物」だ。さらに、水難救助法では漂着船の解体処分や遺体の火葬をするのは自治体だ。2018年のまとめで、北朝鮮からとみられる木造船の漂着は201件で前年の2倍だった。そのうち、石川県での漂着船の処分は21件、経費は880万円に上った。最終的に国が全額負担、われわれの税金だ。

    ことし10月7日、北の漁船と衝突事故もあった。能登半島沖350㌔の日本のEEZ(排他的経済水域)で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突した。事故の原因は、取締船が北の漁船に放水して退去するよう警告したところ、漁船が急旋回して取締船の左側から衝突してきた(※写真、10月18日・水産庁が公開した動画映像から)。単なる操縦ミスなのか威嚇による故意の事故なのか、調べの措置がないまま、北の乗組員は救助され僚船に引き取られた。後日、北朝鮮側は「(日本の)意図的な行為」で漁船を沈没させたとして賠償を要求している。

   このような無謀で不合理、理不尽な光景がまた来年も日本海を舞台に繰り返されるのか。 

⇒29日(日)午前・金沢の天気     はれ

★ 「令和元年」回顧=日韓亀裂

★ 「令和元年」回顧=日韓亀裂

   今の日本と韓国の関係性をたとえるなら、「信なくば立たず」という言葉に尽きる。もともと、孔子が、政治を執り行う上で大切なものとして「軍備」「食糧」「民衆の信頼」の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことに由来する。相互に信頼があってこそ成り立つ、人と人、人と国、国と国の関係性だが、残念ながら現在の日韓ではこの関係性は成り立たない。

          「信なくば立たず」、亀裂状態が続く日韓関係

   その発端は2018年10月30日、朝鮮半島から内地に動員された元「徴用工」といわれる人たちが、日本企業を相手取って損害賠償を求めていた裁判で、韓国の最高裁は賠償を命じる判決を言い渡した。これに対して、日本政府は1965年の日韓請求権ならびに経済協力協定で、請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を定めているので、韓国の最高裁が日本企業に対する個人の請求権行使を可能としたことは、「国際法に照らしてありえない判断」(安倍総理)と強く批判している。「徴用工」は強制的に労働をさせられたいう意味合いでくくられているが、果たして実態はどうだったのか。出稼ぎで日本にやって来た人たちも多くいた。いまのままでは、戦前に日本で働いた朝鮮半島の労働者はすべて「徴用工」であり、受け入れ企業すべてが賠償請求の対象になる。

   2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。火器管制レーダーは、ミサイルで対象を攻撃するために距離や高さ、移動速度を計測するためのもので、通常のレーダーとは全く違う。当時の岩屋防衛大臣が翌日21日の緊急記者会見で、このレーダー照射の一件を公表した。火器管制レーダーを照射したのは韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」。P1は海上自衛隊厚木基地所属。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に照射の意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ。防衛省ホームページには、撮影した動画が掲載されていて、経緯が紹介されている。

   ことしに入ってさらに韓国側の「あおり」外交がエスカレートする。8月23日、韓国側からGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄(延長拒否)を決定したと発表した。その理由が、日本側の不誠実な態度が韓国の国家的自尊心を喪失させ、日韓の信頼関係が失われたとしていた。そして、GSOMIA破棄についてにはアメリカ側からの理解を得らているといると説明した。これは、日本側が8月2日に韓国を「ホワイト国」から除外する決定をしたことへの趣意返しだった。韓国側の輸出管理制度に不備があり、軍事転用される可能性があるフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの3品目を個別許可とし、優遇措置(一般包括許可など)を停止するというものだった。 

   ところが、韓国側は11月22日、破棄を決定していたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について失効期限(23日午前0時)の直前に回避を決めた。日米韓の安保協力を重視するアメリカ側の強い圧力で韓国側が土壇場で折れたカタチだが、米韓関係にしこりが残った。その6日後の28日、北朝鮮はEEZに向けて弾道ミサイル2発を打ち上げた。

⇒28日(土)午後・金沢天気    はれ

☆ 「令和元年」回顧=迫る危機

☆ 「令和元年」回顧=迫る危機

      石川県には「森林環境税」がある。給与所得者の場合、毎年500円が給与から天引きされ、住んでいる市町へ納付される。会社などの法人も負担していて、年間で2億円余りになる。これが、手入れ不足の森林の整備や放置竹林の除去など、クマやイノシシなどの野生獣の出没を抑止するための里山林の整備などに充てられている。

       「中山間地ハザード」は日本の課題モデル

   それにしても、日本の森林は危機的な状況かもしれない。森林の所有者が高齢化し、後継者が都市生活者となる中、森林に整備の手が入らずが荒れ放題になっている。豪雨などによる大量の倒木が自然災害をより深刻なものにしている。さらに、イノシシやクマ、ニホンジカ、サルなどによる農作物などへの被害は年々増え続け、里山だけでなく市街地にまで広範囲化している。 

   きょう出席した会議での話だが、能登半島の先端、珠洲市で2018年度に捕獲・処分されたイノシシは1600頭、隣接する輪島市では2000頭に上る。イノシシの成獣を処分すると1頭当たり3万円が支払われる。処分したイノシシの多くは、捕獲した人が所有する山林に埋める。いま問題となりつつあるのは、埋める場所がもうなくなりつつあることだ。最近海岸に流れ着くイノシシの死がいが報告されるようになっている。担当者は「海岸の崖から転落したというより、埋める場所がなく、不法投棄されたのではないか」と案じていた。

   各自治体では億単位のお金をつぎ込んで捕獲獣の処理施設を造り始めている。ただ、地域の高齢化でイノシシなど野生獣を捕獲する人は年々減少していくだろう。一方で、イノシシのメスは一頭で平均26匹前後の子を産むとされる。

   手が入らなくなった中山間地におけるもう一つの問題は、ため池である。川がない地域などで農業用水を確保するために中山間地にため池が造成された。中には中世の荘園制度で開発された歴史あるため池も各地に存在する。農業の担い手がいる地域では、梅雨入り前にため池の土手を補修するなど共同管理している。問題となっているのは、担い手がいなくなったため池である。大雨によってため池が決壊すれば、山のふもとにある集落は水害と土砂災害が一気に襲ってくることになる。農水省がことし6月発表した、自然災害で人的被害が生じる恐れがある「防災重点ため池」は全国6万3千ヵ所に及ぶ。農業用ため池全体(16万6千ヵ所)の実に4割を占める。

   ため池を放置すれば土砂崩れや水害のリスクが高まる。沼地化して、その後に樹木が生えて原野に戻っていくこともある。一方でため池は生き物の楽園でもある。能登半島はコハクチョウや国指定天然記念物オオヒシクイなどの飛来地としても知られる。これらの水鳥はため池と周辺の水田を餌場としても利用している。また、ため池は絶滅危惧種であるシャープゲンゴロウモドキやトミヨ、固有種ホクリクサンショウウオなど希少な昆虫や魚類の生息地でもある。ため池の管理が大きな曲がり角に来ている。

   森林を放置すれば獣害、ため池を放置すれば自然災害。中山間地におけるハサードであり、日本の課題モデルではないだろうか。

(※写真は、共同管理がなされている、石川県七尾市の漆沢の池。400年以上も前に造られ、農水省の「ため池百選」に選ばれている)

⇒27日(金)未明・金沢の天気    あめ

★「令和元年」回顧=ONE TEAM

★「令和元年」回顧=ONE TEAM

    今年話題となった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、ラグビーワールドカップの決勝トーナメントに進出した日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれた。予想通りだった。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だった。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じたものだ。

      「ONE TEAM」が教えてくれた次なる可能性  

    この「ONE TEAM」の在り様は、日本の将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と言うと共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよい。そんなことを想起させてくれたのが「ONE TEAM」の戦いぶりだった。

    そこで、「ONE TEAM」を多国籍型の移民政策だと想定してみる。実は「ONE TEAM型移民政策」はすでに動いている。政府は、2020年を目途に留学生受入れ30万人を目指す「留学生30万人計画」を外務省や文部科学省に指示して推進している。たとえば、金沢大学でも2023年までに外国人留学生2200人の受け入れを目指している。法務省は留学生に在留資格を発行していて、留学生がさらに国内の企業へ就職する場合は在留資格の変更許可を出している。2018年の許可数は2万5942人で、前年に比べ3523人、15.7%も増加している。日本の大学で専門性を身につけた留学生が日本の企業で就職するケースは今後増えるだろう。

    事例がある。金沢市にある繊維会社(インテリア、スポーツ衣料)は、社員52人のうち28人が外国人だ。留学生を積極的に採用している。生産管理と品質管理、営業は専門性を持ったベトナムや中国人スタッフが担当。金沢本社とアジアの生産工場を往復するマネジメントのスタッフもいる。こうした海外に生産拠点を置く企業だけでなく、サービス産業やITベンチャー企業も外国人採用枠を増やしているのだ。会社の中で互いに技術やアイデアを競い合う多国籍型の会社組織が当たり前の時代になりつつある。

     もう一つの「ONE TEAM多国籍型移民政策」は、今年4月から施行された改正出入国管理法(入管法)だろう。高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人は長期就労も可能になり、家族の帯同も認める(特定技能2号)。地域の企業がグローバル展開するには、有能な外国人技術者を獲得し、そして地域に定住してもらう政策が必要となる。石川県内にはそれを積極的に進めている自治体がある。

     自治体の首長はこう語った。「有能な外国人技術者を雇用すると妻子を伴ってくるケースが多い。その子どもたちの教育環境を整えることで、企業はそれを誘い文句に、海外からの優秀な技術者をスカウトしやすくなる」と。首長に「では、どのような教育環境が必要なのですか」と突っ込んで尋ねると、「それはインターナショナルスクールのような教育環境だろう」と明快だった。

     地域にインターナショナルスクールの教育環境を整えること、それが海外から技術者を呼び込む「試金石」になる。地域の企業も国際的な大競争の時代にさらされている、そこをどう生き残るかまさに地域の未来課題でもある。「ONE TEAM」が示唆するテーマは実に深い。

⇒26日(木)朝・金沢の天気    はれ