⇒トレンド探査

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

   年末年始の新聞広告は例年のごとく派手さが目立った。中でも際立ったのがネット動画配信サービス「NETFLIX」の全国紙の広告(31日付)だった。何しろ両面見開きで、暗闇から朝焼けが始まるというアングルの写真だ。左側に小さく、「再生のはじまり」の見出しで、メッセージが始まる。「東の国も西の国も北の国も南の国もまるで世界のすべてが止まってしまうようだった。だけど人の想像力は、どんな時にも止まらなかった。世界には新しい物語が生まれ続けている。見たことのない世界が広がり続けている。あなたがボタンを押せば、世界はもう一度はじまる。何度でもはじまる。」

   NETFLIXの社名は右下に小さく記されていた。新型コロナウイルスの感染拡大で世界の人々は「巣ごもり」生活を余儀なくされ、NetflixやHulu、Amazon プライム・ビデオといったネット動画配信サービスは高収益を確保したに違いない。前年は全面広告を使って「正月はNetflixざんまい!」とPRしていたのに比べれば、「再生のはじまり」は動画再生とコロナ禍からの再生の2つの意味を絡めた、とても練られた広告ではないだろうか。

   入試願書の受付開始日と合わせた近畿大学の全国紙広告(3日付)は相撲部の学生の練習の図柄で、「近大DX え、近大まだデカなるん?」と少々自虐的な見出し。文章を読むと、「デジタルを駆使することで、学生や世の中に新しい教育モデルや価値観を提供する、それが近大のめざすDX。中でも、急ピッチで進めているのが、好きな所で好きなだけ24時間学び放題になる、授業のオンデマンド化。」などとうたっている。最後に「コロナな時代に日本一のDX大学をめざして、2021年も近大はデラックスに進化し続けます! あっ・・・ちなみに相撲と本文の内容は全く関係ございません!!」とオチもつけている。実に関西っぽいアドバタイジング。

   地元紙の広告(1日付)で目を引いたのか「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション 地域に、元気と笑顔を届けたい。」という北國銀行の全面広告。同行の頭取が昨年6月に14年ぶりに交代し、これまでの同行にはなかったオープンさ、そしてサービスにIT技術を導入する手法が地域でも評判になっている。確かに、同行の公式ホームページをチェックすると、「本店(金沢市)に勤務する役員1名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました」と発表している。これまでだったら、このような情報は公開しなかっただろう。

   地銀がこれから本気で地域と向き合い、「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション」に取り組むのであれば、開かれた気持ち(オープンマインド)と情報公開が必要だ。地域経済の改革の担い手としての地銀に期待したい。

⇒4日(月)朝・金沢の天気   くもり  

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

   前回ブログの続き。僧侶の方からいただいた賀状。ドイツ人僧侶。丑年ということで、ホルスタインをイメージした賀状のデザインが面白い。ドイツの大学で日本語を学んでいて「Zen」(禅宗)に興味を持った。2011年に能登半島にある曹洞宗の總持寺祖院で修行に入り、もう10年。自坊を持つまでになった。3年前に立ち話で、「信仰ではない無我の境地、好き嫌いは言わない、与えられたものを素直にいただく」と。禅宗のきびしい修行を耐え抜いた言葉が重く、そして心に透き通る。寺には、ドイツほかヨーロッパ、南米ブラジルなどからのZenを求めてやってくる。

   賀状を読んでいてふと思いついた。彼が3年前に述べた言葉はまさにコロナ後の世界観であり社会観、人生観ではないだろうか。飽くなき欲求から脱する人生設計や、独占ではなく分け合う(シェアリング経済)社会、成長を前提としなくてもよい社会システムを求める、いわゆる「ポスト資本主義」と呼ばれる動きが胎動している。コロナ禍を経験した人類が心のレジリエンス(復元力)を探してZenの思想に共鳴し、教えを求める時代がやってくるに違いない。そのときに彼の果たす役割は大きいのではないか。

   県会議員や市長をつとめたベテランの政治家の方からいただいた賀状は実にストレ-トな内容だった。昨年11月、加賀海岸(加賀市塩屋‐片野)は国の重要文化的景観に認定された。海岸沿いの砂防林は江戸時代から昭和初期にかけ、人々の手によって植栽が行われ、沿岸集落の懸案だった飛砂被害が抑えられ、生活の安定や現在の土地利用に大きな役割を果たしてきたと評価された。認定に当たっては、文化的景観を訴えるために各方面に呼びかけ、現地でのガイドを買って出るなどリーダー的な存在だった。

   ところが、その加賀海岸に隣接する別の市が洋上風力発電の計画を打ち上げている。高さが最大で260㍍もある風車が沿岸に沿って20基から37基並べる構想で、賀状では「いさりび、夕日等が見えず障害になります。これには断固反対なのです。風力発電には反対ではないのです。この景観を害する行為には反対なのです」と呼びかけている。隣接市とすれば、1昨年も前から計画を進めていた。菅内閣は温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げ、再生可能エネルギーに注目が集まっている。

   国の重要文化的景観の認定にこぎつけた地元とすると、次はユネスコの「世界遺産の可能性」(賀状)を追求することに目標を定めている。歴史と景観の地域資源を守り高めることで国際評価につなげたいという想いが滲む。賀状に鋭く浮かぶ時代のジレンマではある。

⇒3日(日)午前・金沢の天気  くもり時々ゆき

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

   ことしの年賀状は書き出しを「謹賀新年」とはしなかった。昨年からの新型コロナウイルスが感染拡大する中で決して「おめでたい年を迎えた」などとは自身の気持ちとして言えないとこだわったからだ。その代わりに、「希望が持てる新年でありますように」と記した=写真・上=。では、果たして2021年(令和3年)は希望が持てる年になるのだろうか。いただいた年賀状からことしを読んでみる。

   菅内閣を皮肉った賀状をいただいた=写真・下=。大学時代の同級生で、元雑誌社の編集長。「麻生太郎(副総理)81歳! 二階俊博(幹事長)82歳! あ~あ。老人はもういいよ。若い政治家はいないの? と思ったら、いつのまにか私も高齢者で今年67歳に。」との自虐的な内容には笑える。「中身スカスカの『スカ総理』は73歳とイラストも添えている。

   共同通信社が12月5、6日に実施した全国電話世論調査(回答は固定電話524人、携帯電話519人)によると、菅内閣の支持率は50%で、前回11月から12.7ポイント急落した。政府の新型コロナウイルス対策は「評価しない」が55%。感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか尋ねたところ「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げたのは計76%に上った(12月6日付・共同通信ニュースWeb版)。

   内閣支持率が下がり続ければ、おそらく解散・総選挙は近い。それはいつか。以下憶測だ。コロナ禍の感染拡大で勢いづいている今の状態では3月、4月の総選挙は無理だろう。むしろこの時期はワクチン接種がピークを迎えている。ワクチン効果の評判が広がれば、世論の安心感と政府への評価が高まる。その絶妙なタイミングを狙えば、解散・総選挙は7月の東京オリンピック(21日競技開始、23日開会式)前の5月か6月ではないだろうか。

   賀状を手にして、狡猾な老人政治家たちが考えそうなシナリオを描いてみた。自らも老人政治家たちの腹を探ろうする年代に入った。
 
⇒2日(土)夜・金沢の天気  くもり時々ゆき

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

   2021年(令和3)元旦の初夢は、なんと「東京オリンピック」だった。テレビを見ている自分がいて、そのテレビのモニターには国旗を掲げた選手団が次々と入場行進してくる。なぜか、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が選手団について「最近のロシアでは・・」「インドでは中国に対し・・」などと時事解説を行っている。それを違和感なくじっと見ている自分の姿だった。ふと目覚めて時計を見ると、午前2時33分。再び寝込んだが、夢の続きを見たかどうかは覚えていない。

   きょうのブログは初夢が正夢になってほしいと願いつつ書いている。知人と話していても、「このままだとオリンピックの開催は無理だろう」との声をしばしば耳にするようになってきた。政府の新型コロナウイルス対策担当の西村・経済再生担当大臣は自らのツイッター(12月30日付)の動画で「新型コロナウイルスの感染がこれ以上拡大すれば緊急事態宣言も視野に入る」と述べている。コロナ禍の拡大は止まず、ウイルスの国内感染はきのう国内で初めて4000人を超えて4188人と過去最多となった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。暗雲が垂れ込める正月を迎えた。

   起死回生、頼みのワクチン接種はどうなのか。アメリカやイギリスなどではすでに一部で接種は始まっているが、日本ではアメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの承認申請が行われていて、早くて2月中に承認されるかどうか結論が出る見通し(12月28日付・同)。このニュースを見て、開催国の日本がこの対応の遅さで果たして選手団を迎えることができるのだろうか、と思ってしまう。

   CNNニュースWeb版日本語(12月31日付)によると、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がインタビューで、4月初めからワクチンを広範囲に行き渡らせることが可能となり、人口の70%から85%が接種を受ければ集団免疫を獲得でき、ウイルスの感染拡大を抑え込むことができる。初秋までにはかなり正常に近い状態に戻れるとの見通しを示している。「ワクチン先進国」のアメリカでこのスケジュール感だ。

   予定通り東京オリンピック競技が始まると想定すれば7月21日(開会式は23日)がスタートだ。それに先立って、日本で行われる国際大会や強化合宿に参加する国外の選手が5月以降で続々と入国してくるだろう。予定通り開催するには4月中にはコロナ禍をなんとか収めなければ間に合わない。逆算すれば、3月と4月に国内での接種を広範囲に行い、集団免疫を獲得しておく必要があるのではないだろうか。

   菅総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「コロナ危機は、国際社会の連帯の必要性を想起させました。我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)

   総理の所感とは裏腹にコロナ禍の猛威は世界に迫る。感染力が強いとされる変異種化したウイルスがイギリスや南アフリカ、フランス、イタリアなど17の国・地域で広まり、日本政府は今月末までオリンピック選手を含めて入国制限をする措置をとった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。各国の選手団そのものが結成されるのかどうか、どう克服して開催するのか。総理が述べているように、人類の「団結した世界」をぜひ実現をしてほしい。今から出かける初詣ではそう願いたい。

(※写真は、元旦の床の間に飾った「鶴と亀」の掛け軸と、正月飾り)

⇒1日(金)午前・金沢の天気    くもり時々ゆき

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

   アメリカCNNのニュースWeb版(12月11日付)で、覆面のパロディ画家、バンクシーの新作を楽しませてもらった。「Aachoo!! : Banksy confirms new sneezing woman mural as his latest work」と題した話題で、イギリス・イングランドの民家の壁に描かれている。くしゃみをする老婆が顔をゆがめ、手にしていたステッキとポシェットを思わず放り出し、口から噴き出した飛沫の先には入れ歯が飛んでいる=写真・上=。笑える壁画だが、よく考えると、日本でも極たまに街で見かける光景ではある。

   話は変わる。けさ金沢では10㌢ほどの積雪になっていた。この時季、さらに積もると近所の人たちがスコップで道路の雪すかし(除雪)を始める。自宅の前の雪は自分たちで除雪する。雪国の住民の「自助・共助」の美しい街の光景ではある。ただ、今日的な問題もはらんでいる。スコップだ。

   かつて、鉄製が多かったが、軽量化とともにアルミ製に変化。さらに、最近はプラスチックなど樹脂製が主流だ。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。

   粉々に砕けたプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   この不都合は真実の解決方法はただ一つ。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端を金属にすることだろう。これを法令で措置すべきではないだろうか。雪国・秋田出身の菅総理ならばこの解決策のイメージはわくかもしれない。「2050年のカーボンニュートラル」宣言の次は、「マイクロプラスチック・ゼロ宣言」を出してほしい。

⇒20日(日)朝・金沢の天気   ゆき

★雪吊りは雪害対策、そして雪庭のアート

★雪吊りは雪害対策、そして雪庭のアート

   強い冬型の気圧配置で北陸には断続的に雪が降ってはいるが、金沢の自宅周辺でも積雪は数㌢だ。気象庁の予報によると、日本海側はこれからも雪が続く見込みで、平地でも大雪のおそれがある。数㌢の積雪でも雪を侮ってはいけない。路面の凍結で転倒したり、交通事故が多発する。そして、樹木にとっても雪は「重荷」となる。とくに、北陸の雪は湿気が多く、いわゆるパウダースノーではない。その分、重いのだ。

   例年12月中頃に造園業者に「雪吊り」の作業を依頼している。ことしはきのう16日に作業をしてもらった。15日から積雪があり北陸地方は大雪との予報が出ていたので、作業そのものができるのか心配だったが、なんとか冬将軍が来る前に間に合った。

   金沢の造園業者は雪吊りにかけてはなかなか「うるさい」(技が優れている)。雪吊りには木の種類や形状、枝ぶりによって実に11種もの技法がある。庭木に雪が積もると、「雪圧」「雪倒」「雪折れ」「雪曲」と言って、樹木の形状によってさまざま雪害が起きる。そこで、プロは樹木の姿を見て、「雪吊り」「雪棚」「雪囲い」の雪害対策の判断をする。毎年見慣れている雪吊りの光景だが、縄の結び方などがまったく異なる。

   雪吊りで有名なのは「りんご吊り」だ=写真・上=。五葉松などの高木に施される。マツの木の横に孟宗竹の芯(しん)柱を立てて、柱の先頭から縄を17本たらして枝を吊る。パラソル状になっていることろが、アートなのだ。「りんご吊り」の名称については、金沢では江戸時代から実のなる木の一つとしてリンゴの木があった。果実がたわわに実ると枝が折れるので、補強するため同様な手法を用いていたようだ。

   低木に施される雪吊りが「竹又吊り」=写真・下=。ツツジの木に竹を3本、等間隔に立てて上部で結んだ縄を下げて吊る。秋ごろには庭木の枝葉を剪定してもらっているが、ベテランの職人は庭木への積雪をイメージ(意識)して、剪定を行うという話だった。このために強く刈り込みを施すこともある。ゆるく刈り込みをすると、それだけ枝が不必要に成長して、雪害の要因にもなる。庭木本来の美しい形状を保つために、常に雪のことが配慮される。「うるさい」理由はここにあるようだ。

   この時節、周囲の庭木の雪吊りを眺めながら、スコップで雪すかし(除雪)をする。玄関前の雪を側溝に落とし込む。10分ほどの軽い運動でもある。冒頭で述べたように雪を甘く見てはいけない。一夜にして50㌢を超える積雪だと数時間の重労働となる。(※写真は2019年1月の積雪と雪吊り)

⇒17日(木)午前・金沢の天気   くもり

★一喜一憂「合理性のパラドックス」

★一喜一憂「合理性のパラドックス」

   それにしても「なぜ」だ。週明けの9日の東京株式市場、日経平均株価は2万4839円、前日比で514円高く、29年ぶりの高値だとか。29年前は日本のバブル景気の末期。アメリカ大統領選で民主党のバイデン氏が事実上の勝利宣言を出し、選挙後を見据えた投資だろうか。

   一方で、欧米では新型コロナウイルスの感染が再拡大している。 世界での感染者は累計5040万人、国別でもっとも多いのはアメリカの997万人だ。亡くなった人も世界で累計125万人、うちアメリカは23万人だ(11月9日付・ジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード)。これが経済に及ぼす影響は計り知れないだろう。世界的にコロナの第2波、第3波が来ているという印象だ。人類はコロナ禍に打ち勝つことができるのだろうか。と、やや悲観的に考えていたところに来て、この株高だ。おそらく、世界中で巨額の金融緩和や財政出動が行われ、来年になればワクチン開発によってコロナ禍も収束に向かうという読みなのだろうか。

   ミクロの合理性の追求がマクロの非合理性をうみだしてしまうという「合理性のパラドックス」を学生時代に学んだ。株価が上がると予想されると、大量の買いが入り株価が高騰する。バブルである。逆に株価が下がると予想されると、売り浴びせが起こり、急落してパニックが起こる。バブルもパニックもマクロ的にはまったく非合理的な動きではあるが、株価の上昇が予想されるときに買い、下落が予想されるときに売る投機家のミクロ的行動には合理的だ。株式市場だけでなく、投票行動などでも起こるパラドックス現象だ。

           コロナ禍が世界にもたらしている景気後退の影響はシビアだ。8月17日に内閣府が発表した四半期(4-6月) のGDP速報値は、前期比マイナス7.8%で年率換算はマイナス27.8%、3期連続のマイナス成長だった。 アメリカも年率換算でマイナス32.9%だった。リーマンショック後の2009年の1-3月のGDPはマイナス17.8%だったので、それを大幅に超えたことになる。

   実体経済がともなっていないのに株価だけが上がるこの現象は「合理性のパラドックス」化をさらに鮮明にするのではないだろうか。内閣府が次に発表する四半期(7-9月)のGDP速報値は今月16日午前8時50分だ。

⇒9日(月)夜・金沢の天気     くもり

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

   今月初め、かかりつけの病院に行くと待合室に「【重要】定期通院をされている方へ 電話による診療について」の貼り紙=写真=がしてあった。オンライン診療のお知らせだった。5月に行ったときには貼ってはなかった。医師からも「予約していただければ、電話でもOKですよ」と。で、次回はさっそくオンライン診療を利用することにした。

   これまでは、医師は血圧を測って、最近の様子を聞いて、いつもの薬を処方していた。これからは、自身で測った血圧の数値と、「とくに変わりありません」と電話で医師に伝えるだけだ。その後、病院からのFAXが指定する薬局に届き、自身は薬を取りに行くことになる。通院する時間が省け、何より、待合室での新型コロナウイルス感染への気遣いもなくなる。病院でのオンライン診療はコロナ禍以前でもOKだった。

   それのオンラン診療が大きく変わろうとしている。厚労省は特例措置として、新型コロナウイルスの院内感染などを防ぐため、ことし4月から電話やタブレット端末などを活用したオンライン診療での初診を容認している。ただし、期限は感染が収束するまでと決められていた。それを特例ではなく、いつでも初診はオンランでOKとする動きだ。菅内閣では特例措置を恒久化に向けて動き始めているのだ。

   報道によると、今月6日の政府の経済財政諮問会議では、民間議員がオンライン診療の「特例措置の恒久化」を提言。翌7日の規制改革推進会議でも当面の審議事項にオンライン診療を盛り込んで、「デジタル時代に合致した制度として恒久化を行う」と明記した。

   これについては、患者目線とズレがあると感じる。政府はデジタル化のために「初診もOK」と考えているようだが、患者側としては、やはり初診は医師に症状をしっかりと伝え、診療をしてほしい。もちろん、オンライン初診OKであったとしても、患者側が足を運べばよいだけの話なのだが。医師としても、触診など対面より得られる情報は少なく、誤診につながるのでNGだろう。リスクが高すぎる。

   さらに、医療側にすれば、検査料や管理料などが取れなくなるので収入減となり経営の問題にもなるだろう。さらに、患者になりすまして薬を不正に入手するといった犯罪の温床になるのではないか、といったことにも思いをめぐらしてしまう。デジタル化推進のためにオンラインで「初診もOK」の動きはどうもすっきりしない。後味が悪い。

⇒15日(木)朝・金沢の天気     くもり

★文明の利器ソ-ラーパネルも災害時には凶器に

★文明の利器ソ-ラーパネルも災害時には凶器に

          先日、近所の電気屋の社長とソーラー発電の話をしていて、意外なことを聞いた。ことし7月に九州など各地での豪雨が発生し、川沿いの平野部に設置されていた太陽光発電設備が冠水や浸水、水没して損壊したり、流されるというケースが相次いで起きたようだ。

   ネットで調べると詳しいサイトがあった。太陽光発電の専門メディア「PV eye WEB」(8月1日付)によると、鹿児島県志布志市にあるメガソーラーでは、崖の上から構内に大量の土砂がなだれ込み、約100枚のパネルが破損した。熊本県球磨郡錦町にある太陽光発電所は、付近を流れる球磨川が氾濫したために水没。鹿児島県鹿屋市のメガソーラーも太陽光パネルの下に備えつけられていたPCS(パワーコンディショナ)まで水に浸かった。被害は地上設置型の太陽光発電設備だけでなく、住宅用太陽光発電設備も多数被災した。

   水害にあったこうした太陽光パネルは絶縁不良となっていて、接触すると感電する恐れがあるというのだ。特に複数枚の太陽光パネルが接続されたまま飛ばされたり、流されたりしている場合、日射を受けて発電し、高い電圧・電流が発生するケースがあるようだ。

   経産省公式ホームページに、流された太陽光パネルの対応について説明している。水が引いた後であっても集電箱内部やパワーコンディショナ内部に水分が残っていることも考えられ、触ると感電するおそれがあり、ゴム手袋やゴム長靴着用等の感電対策を行うよう呼び掛けている。また、50kW未満の太陽電池発電設備の場合は販売施工業者が、50kW以上の設備の場合は選任されている電気主任技術者に連絡し、作業を行うよう設置業者に指示している。

   各自治体では独自の条例をつくり始めている。国土交通省や都道府県のホームページ等で公表されている洪水浸水想定区域や、市区町村のホームページ等で公表されている洪水ハザードマップの地域では設置そのものを禁止する動きだ。数々の水害に見舞われてきた石川県の小松市では、都市型水害から市民の生活や財産を守る「総合治水対策の推進に関する条例」を制定し、洪水ハザードマップなどの地域に太陽光発電施設などを設置する際は行政との事前協議が必要としている。

   損傷した太陽電池パネルは日が当たると発電し、感電や火災につながる可能性がある。可能ならばパネルの表面に遮光を施す、たとえばブルーシートや段ボールで覆う、裏返しにするなどの対策が必要となる。文明の利器も災害時には凶器となるのだ。

(※写真は能登半島の尖端、珠洲市にあるソーラー発電施設)

⇒12日(月)夜・金沢の天気 くもり

★こんな「ノーベル賞」を上げたい2人

★こんな「ノーベル賞」を上げたい2人

   「ノーベル賞」という言葉がメディアで目立ってきた。10月はノーベル賞の季節でもある。ノーベル財団の公式ホームページによると、10月5日に医学生理学賞を発表し、その後、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞と順次発表。12日の経済学賞をもって終える。 今年の授賞式は、新型コロナウイルスの影響でリモート形式のようだ。毎年気になるノーベル賞だが、もし、このようなノーベル賞があったらと想定して、自身が贈りたい人物を思い描いてみる。

   もし、「ノーベル環境賞」があるとすれば、あげたい人物は17歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんだ。なんと言ってもパンチの効いたスピーチが心に響く。「You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I’m one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing.」(あなたたちは空虚な言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪った。それでも、私は幸運な者の1人だ。人々は苦しんでいる。人々は死んでいる。生態系全体が崩壊している)=国連気候アクション・サミット2019(9月23日)でのスピーチから引用。

         地球温暖化対策に本気で取り組んでいない大人たちを叱責するメッセージだ。「私たちが地球の未来を生き抜くためには温暖化対策が必要なんです」と必死の叫び声が聞こえる。(※写真は、2019年9月21日に国連本部で開かれた「若者気候サミット」で温暖化対策を訴えるグレタさん(右)。左はグテレス事務総長=国連「Climate Action Summit 2019」公式ホームページより)

   もし、「ノーベル民主活動賞」があるとすれば、あげたい人物は、香港国家安全維持法の違反容疑でことし8月に逮捕され、保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんだ。周さんは保釈後、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞が頭の中に浮かんでいたという。

   『不協和音』には「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」などの歌詞があり、民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろうか。2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、今回含めて4回目の逮捕だ。

   周さんは保釈後、「ユーチューブ」で動画を配信している。「釋放後Live!憶述警察爆門拘捕過程」のタイトルで逮捕について述べ、この中で3分間ほど日本語で語りかけている。「心の準備ができていないまま逮捕され本当に不安で怖かった。国家安全維持法では起訴後の保釈は認められていないため、このまま収監されてしまうのではないかと怖かった」「2台のパソコンと3台のスマホが没収された」と当時の状況を述べている。最後に「日本の皆さんも引き続き香港のことに注目してほしい」と呼びかけている。

    彼女の言葉には矜持を感じる。中国政府に対する葛藤、23歳にして香港という自らの居場所を死守するために戦い続ける勇ましさだ。

⇒30日(水)夜・金沢の天気     くもり