⇒トレンド探査

★ブリ起こしの雷の季節 能登高級ブランド「煌」初競り400万円

★ブリ起こしの雷の季節 能登高級ブランド「煌」初競り400万円

発達した積乱雲が近づいているとして、気象庁はきょう午後0時42分に、石川県能登地方に「竜巻注意情報」を発表した。積乱雲が近づくと雷や急な風の変化、それに雹(ひょう)が降るなど荒れ模様となる。ただ、雷は「待ってました」と言わんばかりの季節の訪れでもある。「ブリ起こしの雷」。石川や富山など北陸ではこの時期、雷が鳴ると「寒ブリ」が揚がるとの言い伝えがある。ブリの季節の訪れだ。

きのう1日朝、能登半島の七尾港や能登町宇出津港に、定置網に入った寒ブリ552本が水揚げされた。その中でも重さ14㌔以上で、カタチの良さなどから選ばれた高級ブランド「煌(きらめき)」の初競りが金沢市の石川県漁協かなざわ総合市場であり、重さ14.5㌔、長さ92㌢のブリに400万円の値が付いた(2日付・地元メディア各社の報道)。「煌」の認定制度は県漁協が2022年から始め、七尾市に本社がある食品スーパーが4年連続で初競りモノを競り落としている。

その400万円で落札された天然能登寒ブリが食品スーパーできょうまで展示されているというので、さっそく見学に行ってきた。発砲スチロールの箱に横たわる14.5㌔のブリはさすがに貫禄がある=写真=。寒ブリは眼のふちが黒いのが特徴だが、じっと睨まれているようにも感じ、恐れ多い。この寒ブリは能登町の鵜川漁港で水揚げされたもので、この日、規格基準の厳しい「煌」ブランドに認定されたのはこの一本のみ。

重さ14㌔以上のブリはほかにも数本あったものの、胴回りが十分なサイズではなかったため、認定されなかった。ちなみに、「煌」になり損ねた寒ブリは15万円から50万円で落札されたようだ(2日付・地元メディア各社の報道)。

食品スーパーの店員に「(煌を)いつさばくのか」と尋ねると、きょうの夕方にさばき、あす3日に寿司として限定販売するとのことだった。ところで、能登で寒ブリの話でよく誤解されるのは、雷鳴に驚いて、ブリが能登や富山湾に逃げ込んで来るという説。むしろ、時化(しけ)で日本海も荒れるので、イワシといった魚が沿岸に寄って来る。それをブリが追いかけてきて、定置網にかかるというのが定説のようだ。たかがブリ、されどブリ。冬の訪れとともにブリの話は尽きない。

⇒2日(火)午後・金沢の天気 くもり時々あめ

★参院選で若い世代の投票率アップ 共感呼ぶSNSが決め手

★参院選で若い世代の投票率アップ 共感呼ぶSNSが決め手

けさスマホのメールをチェックすると、「警察庁」から「重要なお知らせ」が届いていた。「組織犯罪対策部」からの連絡で、「あなたはマネーロンダリングの疑いがあります。保釈金として180万円を下記の口座にお振り込みください・・・」と。真夜中に到着したメールだ。こうしたメールは開かないことにしてるが、眺めているうちに段々と腹が立ってきた。おそらく日本語を知らない人物の仕業だろうと想像がつく。「疑い」で「保釈金」を払うことの意味が通らない。まさに架空料金請求詐欺だ。警察庁をかたっての詐欺行為を警察はなぜ真っ先に取り締まらないのか。ほかにも、「NTTドコモ」から「請求書支払いについての詳細」などが届いていた。最近この手の迷惑メールが多すぎる。

話は変わる。この数値は、日本の選挙行動の常識を根底から変えるシグナルではないだろうか。総務省がまとめたことし7月20日投開票の参院選の年齢別投票率(抽出調査)によると、2022年7月の前回選や2024年10月の衆院選と比べて19~39歳の若い世代の投票率が大幅に上昇したことが分かった(今月5日付・メディア各社の報道)。今回の参院選全体の投票率は58%で、前回選の52%を6ポイント上昇したものの、上昇幅が最も大きかったのは20歳代後半の52%で、これは前回選の37%や衆院選の38%から14ポイント前後増加した。さらに、30歳代前半は56%で前回選から12ポイント、30歳代後半は57%で同じく11ポイント上昇した。

これまでよく言われていた投票率は「年齢≒投票率」で、60代は60%、30代は30%という直線的な相関の数値だった。ところが直近の参院選で20〜30代の投票率が大幅に上昇した。この背景は何なのか。大きな要因として、SNSを基盤とした情報流通の断層化があるかもしれない。若い世代はテレビや新聞などの選挙報道よりも、共感できる発信者とプラットフォームを媒介に投票行動を決める傾向がある。つまり、政策の中身だけでなく、どの媒体で誰が何を語るかが決定的に重要になるのだろう。

とは言え、SNSの潮目は速いので、同じプラットフォームが次回以降も持続するかどうかは不確実だ。一つ言えることは、これまでの「高齢者向け施策を優先すれば選挙に勝てる」という政界の暗黙の前提が崩れつつあるということだ。政治家に求められるのは若い世代に刺さる政策、そして選挙ではプラットフォームごとに適合させたコミュニケーションの仕方が勝敗を分けるのかもしれない。※経営戦略のコンサルタントで知られる大前研一氏のメールマガジン(11月14日付)の記事を一部引用

⇒14日(金)夜・金沢の天気   くもり

★きょう立冬 季節の味ズワイガニ、初競り450万円、かに面おでん

★きょう立冬 季節の味ズワイガニ、初競り450万円、かに面おでん

季節は移ろい、きょうは二十四節季の「立冬」。カニの季節が訪れ、食卓に上る頃でもある。きのうズワイガニ漁が解禁となり、きょう金沢市民の台所でもある近江町市場に並んでいる。店頭ではオスの「加能(かのう)ガニ」やメスの「香箱(こうばこ)ガニ」がずらりと=写真・上=。「加能」は加賀と能登の意味。山陰地方の「松葉ガニ」、福井県の「越前ガニ」の向こうを張った名称ではある。「香箱」は小さな箱の意味で小さな甲羅のこと。

市場で市民が求めていたのは甲箱ガニ。小さいので食べやすい。ゆで上がったもので1匹1200円から2200円。甲羅の中の内子(未成熟卵)と外子(成熟卵)、カニ味噌はまさに季節の味わい。市民が香箱ガニを求めるもう一つの理由。それは食する期間が加能ガニに比べ短いから。ズワイガニの漁期は3月20日までだが、その中で香箱ガニの漁期は資源保護政策で12月29日まで。食する期間が短いのではやく食べておこうという気持ちにかられる。

市場で買い求めたのは、ちょっと贅沢な「かに面」。香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したもの。手ごろなもので1個1500円から1800円。金沢のおでん屋に行くと、おでんのだし汁で味付けされたものが出される=写真・下=。かつて、かに面おでんは庶民の季節の味だったが、いまは1個3000円はする高級品のものもある。急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業がきっかけだった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面が人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。いまの言葉で言えば、「オーバーツーリズム」かもしれない。

ところで、毎年ズワイガニ漁の解禁で初競りが地元メディアのニュースになる。各漁船が選んだカニの最高価格を競う「蟹-1(かにわん)グランプリ」。ことしは重さ1.76㌔、甲羅幅16.1㌢の加能ガニが最高級ブランド「輝(かがやき)」に選ばれ、450万円で競り落とされた。水揚げしたのは能登の珠洲市の漁船。競り落としたのは、きょう7日に開業する金沢の旅館だった。香箱ガニの最高級ブランド「輝姫(かがやきひめ)」は甲羅幅9.5㌢以上のものが対象となるが、それに資するものはなかったようだ。ようやく訪れたズワイガニの季節。例年のことだが、しばらくは家族や友人たちとの会話はカニの話題で盛り上がりそうだ。

⇒7日(金)夜・金沢の天気   はれ

☆能登半島の尖端が動き出す 風車と珠洲焼、炭焼き窯

☆能登半島の尖端が動き出す 風車と珠洲焼、炭焼き窯

先日(今月12日)に能登半島の尖端の珠洲市に行くと、山の尾根の風車が回っていた=写真・上=。同市にある30基の風力発電は長さ30㍍クラスのブレイド(羽根)で、日本海から風で悠然と回る光景は自然のエネルギーを感じさせ、ある意味で地域のシンボルでもある。それが、去年元日の最大震度7の能登半島地震ですべて停止した状態となった。メンテナンスを施せば再稼働するものの、山道などが崩れてアクセスがままならない状態が続いていた。それがようやく回り始めたようだ。

震災後、地域も動き出している。伝統的な焼き物でもある珠洲焼もその一つ。毎年秋に作品を一堂に集めた珠洲焼祭りを開いてきたが、能登地震で窯が全て壊れるなど壊滅的な被害を受けた。このため、去年は開催ができなかった。現在も18ある窯元のうち6つしか復旧していないものの、珠洲焼の陶工たちでつくる「珠洲焼創炎会」が共同で使用する窯を修復することで創作活動の再開にこぎつけた。そして、今月11日と12日、2年ぶりに珠洲焼祭りの開催が実現した。

会場となった珠洲市多目的ホール「ラポルトすず」前の広場では、17人の作家が手がけた数々の器や花入れなどが並んでいた=写真・中=。珠洲焼は黒に近い灰色が特徴の焼き物で、平安時代から室町時代に生産された後に途絶えたが、1976年に復活したことで知られる。今回も珠洲焼の復活祭と言える。会場は珠洲焼を求める人々でにぎわっていた。

珠洲焼祭りを見学した後、今度は炭焼き窯を見学に行った。山の中で製炭業を営む大野長一郎氏を訪ねた。茶道用の炭である「菊炭」を生産する石川県内では唯一の業者でもある。今回の能登半島地震で稼働していた4つの炭焼き窯が全壊した。2022年6月19日の震度6弱の揺れで窯の一部が大きくひび割れ、2023年5月5日の震度6強でも窯の一部が崩れた。震災のたびに支援者の力添えを得ながら修復していたが、本人は限界を感じていた。ことし5月に訪れたときには、「土で造る窯はもう無理。地震に強い鉄窯でやってみる」と語っていた。その後、クラウドファンディングを利用し、金属製窯の導入した=写真・下=。

鉄窯には先月17日に初めて火を入れた。気密性が高く、1回当たりの生産量は土窯より落ちるが、従来の半分の時間で焼き上がるため、1ヵ月の生産量は同じという。茶道用の菊炭もこれから手掛けるという。大野氏は「まだ満足のいく炭には仕上がっていないけど、これから完成度を高めていく」と意欲的だった。

珠洲市を含む能登は、少子高齢化と地震多発の日本の縮図でもある。珠洲焼祭りや大野氏の炭焼き窯を見学して、災害復興のモデル地区として再生して欲しい、そんなことを思いながら帰路に就いた。

⇒14日(火)夜・金沢の天気  あめ

☆金の価格高騰1㌘2万円超え 金を楽しむ金沢という街

☆金の価格高騰1㌘2万円超え 金を楽しむ金沢という街

国内の金の価格が初めて1㌘2万円を超えたとメディア各社が報じている。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げで金利が付かない金の魅力が相対的に高まるとの思惑から国際的な金相場が高値で推移しているという背景があるようだ。2023年9月に1㌘1万円を超えたときなど、何度かこのブログで金と金沢の関係性について述べた。以下、「☆高騰する金の価格 金を楽しむ金沢という街」(2023年9月4日付)などをベースに再録。

金、ゴールドの価値は世界共通のものだ。そして、金属であり、伸びる特性がある。それを極限まで薄く伸ばしたのが「金箔」である。 「金沢は金箔で持つ」と言われ、金沢は金箔の全国シェア98%を誇る。400年以上の伝統があるとされる縁付(えんづけ)金箔の製法はユネスコの無形文化遺産に登録されている(2020年12月)。そして、金沢では金は日常遣いでもある。金は体によいとされ、金箔を入れた日本酒、化粧品、金箔をまいたソフトクリーム、うどんもある。かつて、金沢の子どもたちが頭にたんこぶをつくると、金箔が熱の吸収によいことから膨らんだ部分にはっていた。(※写真は、金沢金箔伝統技術保存会ホームページより)

最近では「金継ぎ」が国内外で知られるようになった。東京パラリンピックの閉会式(国立競技場・2021年9月5日)でアンドリュー・パーソンズ会長が発した言葉だった。日本の金継ぎの技術について、「不完全さを受け入れ、隠すのではなく、大切にしようという発想であり素晴らしい」と述べて、金継ぎという言葉が世界でもトレンドになった。さらに、金継ぎは一度は壊れてしまった製品を修復するだけでなく、金箔を使うことでアートを施し、芸術的価値を高める。

金の価格は高騰し続けてきた。外国為替市場で円安・ドル高が進行し、円建ての国内金価格が上昇。世界景気の減速懸念から「安全資産」とされる金が選好されていることも後押ししている。こうなると金箔生産が盛んな金沢では、業者は材料入手が難しくなるのではと思ったりもする。ところが、そうではないようだ。知人からかつて聞いた話。「金箔製造業者は潰れない(倒産しない)」と。なぜなら、インゴット(地金)の価格が安いときに大量に仕入れ、高くなれば売って経営を安定させる。「良質な金を見極める目利きであり、金箔業者は金のトレーダーだよ」と知人は妙にほめていたことを覚えている。

金の価格高騰もさることながら、その金をどのように生活で使い、楽しみ、そして新たな価値を創造するか。金沢という街はそのショーウィンドーかもしれない。

⇒30日(火)午前・金沢の天気   はれ

★自民総裁選に期する論戦~対アメリカ外交、人口減対策、教育改革~

★自民総裁選に期する論戦~対アメリカ外交、人口減対策、教育改革~

まるで人気投票のような雰囲気の選挙だ。日本の政治の舵取りはこれでいいのだろうかとマスメディアの報道などを視聴していてつい思ってしまう。自民党の総裁選挙はきょう22日に告示され、投開票は10月4日となる。そして、今回の総裁選で出てきた「フルスペック」という言葉もなんだか分かりにくい。

フルスペック方式の総裁選はいわゆる「国の会議員票」(現在295票)と全国の党員などによる「党員票」(295票)の合わせて590票で争われる。党員票は全国で100万人余りに及ぶ党員・党友が投票を行い、ドント方式で票換算する。この方式は、選挙で各候補者の得票数を1、2、3……と整数で割っていき、商が大きい順に295票を配分する。問題はここから。過半数を得た候補者が総裁に就くが、過半数を得られなかった場合は上位2候補者で決戦投票を行う。この場合は国会議員票の295票と都道府県連票の47票の計342票の過半数を得た候補者が総裁となる。この方式は自民党の「総裁公選規程」で定められている(9月7日付・NHKニュースWeb版、選挙ドットコムなど参考)。

去年9月の総裁選では投票権を持つ党員・党友は全国で105万人余りで、投票率は66.16%だった。ちなみに、総裁選の規定では、投票権を持つ党員・党友は去年までの2年間、党費などを納めた者と決められているそうだ。今回の告示後の日程は、あす23日午前に共同記者会見、午後は公開討論会、30日には政策討論会がいずれも党本部で開催される(9月18日付・NHKニュースWeb版)。

冒頭の話に戻る。今回の総裁選では人柄ではなく、直面する日本の課題を論点にしてほしい。一つは、対アメリカに対する現実的な外交だろう。トランプ政権の下でいつまで「追随外交」が続くのか。日米安保条約を修正して日本独自の選択肢を持つ必要があるのではないか。そして、年間90万人が減少する日本の国力は確実にやせ細っていく。将来を見据えた移民政策を打ち出すのか、出さないのか。国の方針をはっきり定めるときが来たのではないか。そして、世界はAIとITのトレンドのただ中にある。現行の教育や学習体系をどう変革させていくのか。

総裁選ではこうした直球の議論を戦わせてほしいものだ。自身は党員・党友でもないが・・・。(※絵画は、ヴァチカン美術館のラファエロ作『アテネの学堂』。上のプラトンとアリストテレスは論争を繰り広げているが、下のヘラクレイトス=左=とディオゲネス=右=は我関せずの素振り)

⇒22日(月)午後・金沢の天気   はれ

★店頭に「能登ひかり」 震災・豪雨にめげず耕し続ける農家の想い

★店頭に「能登ひかり」 震災・豪雨にめげず耕し続ける農家の想い

金沢のスーパーのコメ売り場には新米がずらりと並んでいる。石川県産のコシヒカリ「一粒のきらめき」は5㌔税込み5379円だ。去年、新米を買ったときは同2312円だったので、今では倍以上の値段になっている。そこで、少しだけ割安な「能登ひかり」を買うことにした。それでも5㌔税込み5163円だ=写真=。

能登ひかりは能登地域の標高が50㍍以上ある山あいで生産され、「能登はやさしや土までも」と唄われる能登の大地と気候風土で育ったブランド米でもある。早生品種で、8月下旬から9月中旬に収穫される。もともとコシヒカリの系統の能登ひかりは、米粒が大きく、粒の腹が白いのが特徴とされる。味はコシヒカリと似ていて、噛むほどに旨味が広がる。

能登ひかりにはちょっとしたドラマがある。一昔前まで能登の気候に合う品種ということで生産されていたが、モチモチ感のあるコシヒカリに押されて生産する農家は少なくなっていた。それを見直したのが、京都や大阪といった関西の寿司屋だった。「ベタベタとした粘りがない分、握りやすく、食べたときにも口中でパラッとバラけるので、寿司によいのだという」(講談社新書『日本一おいしい米の秘密』)。さらに、このバラける食感がスープ料理にも合うということで、金沢市内のレストランなでども使われるようになった。

奥能登では去年元日の能登半島地震で被災した農地が徐々に回復しているものの、同年9月の奥能登豪雨の被害を受けた水田も多い。ことしの作付面積は昨年同様に、震災前の6割程度にとどまっていることろが多いようだ。それだけに、能登ひかりのコメ一粒一粒に農家の想いが込められているに違いない。まさに「能登はやさしやコメまでも」だ。

⇒12日(金)夕・金沢の天気  あめ

★ノンアルコールがアルコール文化を変える日が来るのか

★ノンアルコールがアルコール文化を変える日が来るのか

年齢も古希を超えたのでアルコールを少々控えようと思い、飲んだ翌日は飲まないことにした。もう1年になる。飲むのが習慣となっていた自身にとってこれは結構、人生の試練となった。「誰かと約束したわけではない。自分に甘える日があってもいい」と連日飲んだこともある。「いやいや自分を甘やかしていけない。自分の身は自分で守る」と翌日は飲まないを厳格に自分に言い聞かせたこともある。そんなことを繰り返しているうちに、妙にアルコールを飲む回数そのものが減ってきた。自制しているわけではない。自然とそうなってきた。

そうなったきっかがノンアルコールビールだった。コンビニにビールを買いに行くと、「ノンアルコール ALC 0.00%」というレッテルが目に入った。銘柄は「Asahi」とある。買って自宅で飲んでみるとビールの風味は変わらず、普通のアサヒビールだった。ただ、しっとりと体に落ちてくるアルコール感がない。なんとも不思議なビールだと思ったのが、去年9月のことだった。

そのころワインやビール、日本酒を飲んだ翌日はアルコールは一切飲まないと肝に銘じていたころだ。とは言え、冒頭で述べたように自己制御ができずに連日飲んだりと試練が続く日々だった。10月ごろに、ふとノンアルコールビールのことを思い出し、どうしても翌日飲みたければ代替にノンアルコールを飲めば気持ちが収まると思い、始めた。続けているうちに、飲まないことでイライラとしていたストレスがなくなっていた。そして不思議なことに、アルコールを飲む日にノンアルコールを飲んでいることが多くなってきた。でも飲んだ気分になっている。もちろん、酔ってはいない。

ふと思ったことだが、ノンアルコールビールはビールの飲料感があり、なんとなく気持ちが落ち着く。そして普通の炭酸飲料でもあるわけで、職場や仕事中に飲んでもいい。もちろん、飲んだ後で車を運転してもいい。これは「ノンアルコール文化」ではないだろうか。

ネットによると、アサヒビールはビール好きの働く人たちが「仕事」と「ビールを楽しむ時間」をうまく両立させ、どちらも充実させる生活を意味する「ワークビールバランス」を提唱しているようだ。確かに、職場の上司が「仕事に疲れたら冷たいビールでも飲んで一服して、また頑張ろう」と部下を励ます日が来ているのかもしれない。そして、この夏は猛暑日が続き、とてつもなく暑かった。この「ワークビールバランス」が広まったのではないだろうか。

⇒29日(金)午後・金沢の天気  はれ

☆石川産ブランド梨「加賀しずく」 1個600㌘に秘められた物語

☆石川産ブランド梨「加賀しずく」 1個600㌘に秘められた物語

前日の激しい雨とは打って変わってきょうの金沢は朝から晴れ渡っている。午前中、買い物に出かけた。お目当ては「加賀しずく」。秋の訪れを感じさせる石川県産の梨のこと。近所のJA販売店「ほがらか村」に行くと、果物売り場に並んでいた。「お一人様2個まで」と貼り紙が出ていた。次々と客が訪れていて、開店から40分ほどで品切れの状態となった。自身もぎりぎりで2個買うことができた。

値段は1個700円。店員によると、もう少し大きめになると1個900円だという。毎年この時季に買い求めているが、「ジューシーで酸味がなく上品な甘さ」とでも表現しようか、さすが名産品だと納得する。ちなみに、横の棚の「幸水」(金沢産)は4個入りの袋で1400円だった。それにしても、梨は400㌘程度のものが多い中、加賀しずくは600㌘程度とずっしり感があるのも特徴だ。

この石川のブランド梨にはちょっとしたドラマがある。県農林総合研究センターの開発チームがオリジナルブランドを世に出すまでに16年の歳月をかけた。1998年、日本の梨を代表する「幸水」と石川県の希少梨である「鞍月(くらつき)」の良いところを受け継いだ高級品種の栽培に挑んだ。ちなみに鞍月は、豊水と幸水、20世紀などの畑から出来た突然変異種とされ、金沢の一部の農家で栽培されるブランド梨だ。開発チームは、1個600㌘の大きな果実を1本の木に実らせるために、果実の数を一般的な梨の60%程度に抑え、養分を集中させることで新種の開発にこぎつけた。

2013年、栽培に成功した6種の中からもっとも食味のよかった1種に絞り込んだ。ところが、甘さはあるものの、一般的な和梨の特徴とされるシャリ感が少なく、 どちらかというと洋梨に近い食感だった。そのため当初、青果市場の関係者や生産者には評価されなかった。そこで、開発チームは消費者1050人に協力してもらい、新種と既存のブランド梨2種の3種を品種が分からないかたちで食してもらい、どれがおいしいか(好きか)を調査をした。すると圧倒的に新種に票が集まった。この結果をベースにして消費者に支持される新ブランドを目指し、2014年に農林水産省に品種登録を申請。2016年に名称を「加賀しずく」と決定し、2017年に市場デビューを果たした。

今月26日から出荷が始まり、初競りでは最も高級な「プレミアム」の1箱(6個入り)に過去最高の20万円の値がついたと地元メディアでニュースになっていた。変遷をたどりながら、ブランドを確立した加賀しずくの物語だ。金沢市や白山市、加賀市の農家94軒が8.4㌶の畑で栽培している。これから出荷本番を迎える。

⇒28日(木)夜・金沢の天気  はれ

★世相を映す言葉、日本「米フレーション」とアメリカ「TACO」

★世相を映す言葉、日本「米フレーション」とアメリカ「TACO」

世の中は常に動いていて、同時に世相を映す言葉も生まれる。最近の言葉をいくつかメディアから拾ってみた。最初に、なるほどと思ったのは「米(コメ)フレーション」。「令和の米騒動」とも呼ばれるほどコメ不足で価格が全国的に高騰し、金沢のスーパーでも石川県産米が5㌔袋で税込み4000円を超えている。と同時に食品価格も高騰していて、コメを中心とした価格高騰、インフレーションを「米フレーション」と称されるようになった。

そして、「一物三価」という言葉も目にするようになった。まず、高騰したのが銘柄米で5㌔で4000円台で店先に並んだが、これを受けて政府の備蓄米が3月から4月にかけて一般競争入札で店先に並び、これが同じく3000円台。それでも「高い」と、小泉進次郎氏が農水大臣に就任早々に「5㌔2000円」と連呼し、随意契約で備蓄米を放出し、6月から東京や大阪のコンビニなどでは1㌔400円台で並ぶようになった。新米、古米、古古古米という違いはあるものの、消費者に選択肢が広がったことで、米フレーションは落ち着くのかもしれない。(※写真は、金沢のスーパーに並ぶ一般競争入札の備蓄米)

さらにアメリカでは「TACO」。タコと呼んで、トランプ大統領を揶揄する造語のようだ。「TRUMP ALWAYS CHICKENS OUT」の頭文字を取ったもの。トランプ大統領は常にびびって退く、という意味のようだ。厳しい高関税を課すと宣言したにもかかわらず、株式・国債・ドルが一斉に売られるトリプル安に見舞われると、撤回する動きに出るなど二転三転している。カナダとメキシコへの関税や、そして中国への145%の関税もこのTACOパターンだった。

トランプ氏の言動を見透かし、通商政策に愛想を尽かしたのは実業家のイーロン・マスク氏かもしれない。マスク氏は去年の大統領選でトランプ氏を支持し、巨額資金を応援活動につぎ込んだ。今年1月にトランプ政権が発足すると、「政府効率化局(DOGE)」の運営に携わり、財政の健全化を目指して連邦政府機関の閉鎖や業務縮小、人員削減に次々と着手した。そのマスク氏がトランプ氏と仲違いし、先月5月30日に政権を離れた。報道によると、その原因はトランプ氏が「大きく美しい法案」として打ち出した大規模減税の延長で、マスク氏は財政を悪化させるとして非難していた。マスク氏には、その大きく美しい法案こそTACOなのだろう。

⇒6月7日(土)午前・金沢の天気  はれ