☆能登の旋風(かぜ)-2-
おそらく今回のイベントで一番のVIPとも言える生物多様性条約事務局のアハメド・ジョグラフ事務局長が9月16から1泊2日で能登を訪問した。2010年の国際生物多様性年の「仕掛け人」である。この年、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10、名古屋市)が開催される。その関連会議を石川県に誘致するために、金沢大学、石川県、国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(金沢市)などが条約事務局に働きかけている。
カメラを構えたジョグラフ氏
実は今回のイベント「能登エコ・スタジアム2008」もその関連会議のシュミレーションとしての意味合いで金沢セッション、能登エクスカーションが構成された。ジョグラフ氏の能登訪問は2010年の能登エクスカーションの「下見」との意義付けもある。もし、ジョグラフ氏がここで「能登で見るべきもの、学ぶべきものはない」と感じれば、2010年の能登エクスカーションは沙汰やみになる。迎えるスタッフもプラン段階から気を遣った。では、ジョグラフ氏の反応はどうだったのか。
まずジョグラフ氏のコースを紹介しよう。15日午後に金沢入りし、16日午後から能登訪問。キノコ山の保全活動などをツーリズムにしている「春蘭の里」(能登町)を訪ねた。その後、輪島の千枚田を経由して17時には金沢大学「能登学舎」(珠洲市)に到着。この時点で能登を150㌔走行し、疲労の様子もうかがえた。しかし、ジョグラフ氏が初めて自らのカメラを構えたのは能登学舎の近くにあるビオトープでのこと。広々とした水田地帯の山側に接した休耕田を生物の生息環境に配慮した湿地にしてある。ジョグラフ氏の目がくりくりと動いたのは、案内人のK氏が説明したとき。K氏は地元の小学校の校長で、ビオトープで育む生き物について熱心に教えている。「このビオトープは学校の教育の一環で子供たちが利用している」と説明した。ジョグラフ氏も環境問題を子供たちの教育に生かすことに力を注いでいて、途上国の小学校に木を植える運動を進めている。「グリーン・ウエーブ」運動と呼んで、日本でもその輪は広がりつつある。ジョグラフ氏とK氏、互いに共感するところがあったようだ。
17日は、海の生き物を調査している「のと海洋ふれあいセンター」(能登町)で足を止めた。次に、輪島市の山中にある金蔵を訪れた。日本の里山の原風景とも言える棚田がなだらかに広がる。限界集落とも呼ばれる高齢化した地域。それでも人々は律儀に田を耕し、その収穫時に稲はざを立てる。ジョグラフ氏は「日本の里山の精神がここに生きている」と感想を述べた。
私は部分的にしか同行できなかったが、「夢にも描けなかった光景が現実となった」との思いを抱いた。水稲栽培では一枚の田の面積が小さく生産性は低い。機械化の効率が悪い分、手がかかる。ため池の管理にも骨が折れる。それでも祖先から受け継いだ農地を「もったいない」と人々は律儀に耕してきた。結果、里山環境は保たれ多種多様な生き物が生息する環境になっている。その里山の人々をジョグラフ氏が評価してくれたのである。
里山で大切なことは、情緒的な側面も大切なのだが、新たな価値評価を与えて、求心力をつけることだと考える。SATOYAMAはすでに生態学の研究者の間では国際的な認知を受けつつあり、国連大学高等研究所が中心となって研究を進める「里山里海サブ・グローバルアセスメント」も具体的に動き始めている。こうした研究が科学的な裏づけをもって、世界に情報発信できれば、日本人が見る里山の風景もまた一変する。里山の国際評価が加速する。そんな旋風(かぜ)をジョグラフ氏の訪問で感じた。(写真:珠洲市粟津のビオトープでカメラを構えるジョグラフ氏)
⇒21日(日)夜・神戸の天気 くもり
まず、「能登エコ・スタジアム2008」の概要を説明しよう。金沢大学などが企画し,地域自治体と連携して開催した初めての大型イベント。4日間で3つのシンポジウム、6つのイベント、1つのツアーを実施した。生物多様性などの環境問題を理解するとともに、海や山を活用した地域振興策を探ろうという内容。13日に開催したキックオフシポジウム「里山里海から地球へ」=写真=には市民ら280人が参加し、国連大学の武内和彦副学長(東京大学教授)や生物多様性ASEANセンターのG.W.ロザリアストコ部長、女子美術大学の北川フラム教授が講演した。
この文を書いていたとき、実は念頭に石川県の谷本正憲知事のことがあった。失礼な言い方になるかもしれないが、谷本氏はことし春ごろまで、それほど里山や里海といった言葉に深い造詣を抱いてはおられなかったと思う。ところが、この4月に金沢で設置された国連大学の研究所(いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット)が里山里海を研究テーマにしていること、さらにドイツでの環境視察(5月22日-29日)、その視察の最中で生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)の関連会議でスピーチをきっかけとして猛勉強され、いまではおそらく「里山知事」を自認するまでになった。そして、環境への取り組みとして、里山里海をテーマに行政施策に反映させてもいる。谷本知事には里山里海の風景がこれまでとまったく違って見えているのだ。
~里山里海(さとやまさとうみ)という言葉が最近よく使われるようになってきました。日本ではちょっと郊外に足を運べば里山があり里海が広がります。実はそこは多様な生物を育む生態系(エコシステム)であるとことを、私たち日本人は忘れてしまっていたようです。二酸化炭素の吸収、生物多様性、持続可能な社会など、環境を考えるさまざまなキーワードが里山里海に潜んでいます。「能登エコ・スタジアム2008」ではこれらのキーワードを探す旅をします。それを発見したとき、あなたが見える里山里海の風景は一変するはずです。~
先月(7月)28日に金沢市を襲った豪雨は午前5時から8時までの3時間で254㍉だった。報道によると、県が「百年に一度」と想定している規模の雨量は2日間で260㍉なので、まさに「想定外」の降りだった。金沢市災害対策本部が2万世帯5万人に避難指示をした。27日から日本海から北陸地方にかけて東西に前線が停滞し、28日に南からの暖かい湿った空気が流れ込んできた。このため、大気が不安定となり、雲が急速に発達し、短時間で激しい雨をもたらしたというの金沢地方気象台の見解だ。
国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は毎年、緊急の食料援助を必要とする国をリストアップしている。2007年5月にリストアップされたのは33カ国。このうち17カ国は内戦と紛争で、食料援助しようにも、その活動が阻まれるところ多い。つまり、援助部隊が襲撃されることもある。そんな国は間違いなく破綻に向かう。
その講演会でのこぼれ話。レスター氏はペットボトルの水を嫌がった。水をわざわざペットボトルに入れなくても、水差しでよい、石油を原材料にする経済の仕組みはもう転換すべきだとはレスター氏の主張だ。そして講演20分前には瞑想に入り、スニーカーで登壇した。
この「自在コラム」でも何度か取り上げたベートーベンの話を再度。昨年10月から、金沢大学が運営する「能登里山マイスター」養成プログラムに携わっていて、能登通いが続いている。車で大学から片道2時間30分(休憩込み)をみている。何しろ能登学舎があるのは能登半島の先端、距離にしてざっと160㌔にもなる。早朝もあれば、深夜もある。体調がすぐれないときや、疲れたときもある。運転にはリスクがつきまとう。同乗者がいればまだよいが、怖いのは一人での運転である。眠気が襲う。
3年前の冬だった。金沢の行きつけのスナックに入ると、珍しくジャズピアノのキース・ジャレット(Keith・Jarrett)のCDがかかっていた。キース・ジャレットは1975年に初めて、当時のPLで「ケルン・コンツェルト」を聴き、すっかりファンになった。鍵盤を回すような軽快な旋律、そして興に乗って発せられるキース・ジャレット自身の呟きが、いかにも即興ライブという感じで、心に響く。
飛来しているコウノトリには足環がないことから、兵庫県豊岡市で野生放鳥されているコウノトリではなく、どうやら大陸から飛んできたらしい。2005年7月にも飛来が確認されていて、3年ぶりということになる。近所の人の話が面白い。この水田地帯にはサギ類も多くエサをついばみにきている。羽を広げると幅2mにもなるコウノトリが優雅に舞い降りると、先にエサを漁っていたサギはサッと退く。そして、身じろぎもせず、コウノトリが採餌する様子を窺っているそうだ。ライオンがやってくると、退くハイエナの群れを想像してしまった。サギ類はコウノトリ目サギ科の鳥である。