☆ドイツ黙視録‐1‐
石川県知事の訪独ミッション(5月22日から30日)に加わり、ドイツの環境政策の現場や大学における環境教育の取り組みを見学させてもらった。28日には生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)の関連会議に参加した。「ドイツは環境先進国」と呼ばれるが、どの点が先進なのかつぶさに観察を試みた。題して「ドイツ黙視録」-。
シュバルツバルトの爪痕
5月25日、ドイツの南西部に位置するオーバタール村にバスは着いた。ドイツの里山とも言えるシュバルツバルト(黒い森)が広がる。これまで勘違いをしていた。第二次大戦後、スイスやフランスの工業地帯と接しているため、酸性雨の被害によって、多くのシュバルツバルトの木々が枯死した。黒い森とはこうした状況を指しているのかと思っていた。が、黒い森はかつてモミの木が生い茂り山々が黒く見えたことから付いた名称なのである。黒い森と名付けたのはローマ人という説もあるくらい、昔からの呼称だった。
案内してくれたバーデン=ヴュルテンベルク州森林局長、フロイデンシュタット氏は「昔から森の木々は私たちのパンなんです」とドイツ人と森のかかわりについて話してくれた。ドイツ人はもともと「森に入る民」だった。木を切り、建築材やエネルギー(薪など)を産出した。切った跡には牧草を植え、ヤギやヒツジを飼った。シュバルツバルトは200年ほど前まで牧草地が広がっていた。産業革命の波がヨーロッパにも及び、森にはトウヒ(唐檜)が計画的に植林され、良質の建材、電柱、船のマスト、楽器の素材を産出する一大植林地帯へと変貌していく。現在、山の木の70%が植林によるトウヒだ。かつてシュバツルバツトの語源ともなったモミの木は20%、マツは10%、ブナ3%とすっかり山の様相が変わった。
「森の木々はパン」のお手本のような森林産業がシュバルツバルトに実現したのだった。ところが、人の手によって、トウヒの森へとモノカルチャー化した山々にはさまざまな問題が生じるようになる。密植により、低木に光が当たらなくなり、保水性が失われた山肌には地滑りが頻発するようになった。そして戦後の経済成長に伴って、酸性雨の問題が生じる。さらに、気候変動によって嵐が襲うようになったのはここ10年ほどのこと。1999年のクリスマスにやってきた「ローター(Lothar)」と呼ばれた大嵐による森林被害の爪痕(つめあと)は1万haにも及んだ。
その大嵐の被害状況を保存し、記念公園にした「Lothar pfad(ローターの足跡)」をフロイデンシュタット氏に案内してもらった。「根こそぎ」とはこの状態を言うのだろう。直系6mにも広がるトウヒが根ごと倒れている=写真=。トウヒの根はもともと浅い。深く根をはるはモミの木などは途中でボキリと折れた。このときのトウヒやモミの森林被害は3000万立米と推測され、シュバルツバルトの20年分の木材出荷量に相当する損害となった。トウヒは種が取りやすく大規模な植林に適しているものの、根が浅く風に弱い。その盲点を突くかのように大嵐が数年に一度の割で襲ってくる。当然、単一樹林化への反省が生まれ、森林局では複層林へと森林政策の転換を図っている。
ここで疑問が湧いた。根こそぎ倒れ荒廃した森林を公園として見せる価値はあるのだろうか。まして、キクイムシなどの害虫が異常繁殖すれば2次被害が生じる。この質問にフロイデンシュタット氏はニコリと笑って、我々にこう説明した。「幸いキクイムシの2次被害はいまのところ出ていない。それより、倒れた木の間に若い木が伸びてきているでしょう。私たちは森の自然の治癒力というものを子供たちに学んでほしいと思いこの一角を保存したのです」と。確かに倒木の隙間からトウヒやモミなどの針葉樹のほか、ナナカマドやブナなどの広葉樹の若木が育っている。倒木の根に巣をかけた鳥たちのさえずりもにぎやかだ。
この「Lothar pfad」には年間5万人の見学者がやってくるという。カタストロフィ(破壊)から再生へ。大嵐の爪痕は生きた環境教育の場として生かされている。
⇒30日(金)夜・金沢の天気 くもり
こいのぼりが揚がらなくなった理由として、住宅が狭くこいのぼりを揚げるスペースがないとよくいわれる。でも、能登や加賀の広々とした家並みでも見かけるのは稀だ。それは少子化で揚がらなくなったのでは、という人もいるだろう。能登地区は確かに少子高齢化だが、地域をつぶさに眺めると、公園などで遊んでいる小さな男の子たちは案外多い。まして、加賀地区で少子高齢化の現象は顕著ではない。でも不思議とこいのぼりを揚げる家は極少ないのだ。
どこが「クラシックの民主化」なのかというと、①短時間で聴くクラシック②低料金で聴くクラシック③子どもも参加するクラシック・・・の3点に特徴があるそうだ。民主化というより、クラシックの裾野を広げるための音楽祭ともいえる。1995年にフランスのナント市で始まった音楽祭。この音楽祭の開催は世界で6番目、日本では東京に次いで2番目とか。
その法隆寺で、日本工芸のルーツといわれるのが「国宝 玉虫厨子(たまむしのずし)」。日本史では飛鳥美術の代表作とされる。が、現在のわれわれが目にするは黒光り、古色蒼然とした造作物という印象しかない。すでに描かれていたであろう仏教画や装飾などは、イメージをほうふつさせるほどに残されてはいない。歴史の時空の中で剥離し劣化した。
奥能登・珠洲市に古民家レストランと銘打っている店がある。確かに築110年という古民家には土蔵があり、その座敷で土地の郷土料理を味わう。過日訪れると、中庭で野点が催されていて、ご相伴にあずかった。
節を重んじ、相和すことを重んじる。そんな凛(りん)とした雰囲気が感じられる野点だった。
ミシュランガイド東京に掲載されているレストランは150軒で、最も卓越した料理と評価される「三つ星」は8軒。「二つ星」は25軒、「一つ星」は117軒選ばれている。フランスやイタリア料理が多いのかと思いきや、ガイド全体では日本料理が6割を占めている。和食への評価が世界的に高まっていることがベースにあるのだろう。ちなみに、一つ星は「カテゴリーで特に美味しい料理」、二つ星は「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」、三つ星は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」の価値基準らしい。
なく、静かで落ち着いていて、客層は老紳士・淑女然としたお年寄りが多いのだ。
変えられてしまった人々も多い。そんな被災者の生の声をつづった「住民の生活ニーズと復興への課題」というリポートがある。金沢大学能登半島地震学術調査部会の第2回報告会(3月8日)で提出されたものだ。その中からいくつか拾ってみる。
15日の新聞各紙にこんな事件が報じられた。石川社会保険事務局は14日、野々市町の男性が約43万円の還付金詐欺の被害にあったと発表した。同事務局によると、12日午後1時半ごろ、男性方に「タナカ」と名乗る男から「過去5年間の医療費の返還金があり、昨年10月に案内のはがきを送った」と電話があった。男性がはがきを見ていないと答えると「返還金の期日が過ぎているのでATM(現金自動出入機)から振り込む」と言われたため、近くのATMに行った。そこで男から操作を指示され、口座から43万3097円を振り込んだという。手の込んだ、計算し尽された詐欺である。