☆抜けた指輪の話
ジョグラフ氏は名古屋市で開催された第16回アジア太平洋環境会議(エコアジア、9月13日・14日)に出席した後、15日に石川県入り、16日と17日に能登を視察した。初日は能登町の「春蘭の里」、輪島市の千枚田、珠洲市のビオトープと金沢大学の能登学舎、能登町の旅館「百楽荘」で宿泊し、2日目は「のと海洋ふれあいセンター」、輪島の金蔵地区を訪れた。珠洲の休耕田をビオトープとして再生し、子供たちへの環境教育に活用している加藤秀夫氏(同市西部小学校長)から説明を受けたジョグラフ氏は「Good job(よい仕事)」を連発して、持参のカメラでビオトープを撮影した。ジョグラフ氏も子供たちへの環境教育に熱心で、アジアやアフリカの小学校に植樹する「グリーンウェーブ」を提唱している。翌日、金蔵地区を訪れ、里山に広がる棚田で稲刈りをする人々の姿を見たジョグラフ氏は「日本の里山の精神がここに生きている」と述べた。金蔵の里山に多様な生物が生息しており、自然と共生し生きる人々の姿に感動したのだった。
ジョグラフ氏がまぶたに焼き付けた能登のSATOYAMAとSATOUMI。このツアーはCOP10の関連会議を石川に誘致する第一歩だった。では、どのようなプロセスを経て、ジョグラフ氏は能登を訪れたのだろうか。実は、3人の仕掛け人がいる。谷本正憲知事、中村浩二教授(金沢大学)、あん・まくどなるど所長(オペレーティング・ユニット)である。その年の5月24日、3人の姿はドイツのボンにあった。開催中だった生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)にジョグラフ氏を訪ね、COP10での関連会議の開催をぜひ石川にと要請した。あん所長は谷本知事の通訳という立場だったが、身を乗り出して「能登半島にはすばらしいSATOYAMAとSATOUMIがある。一度見に来てほしい」と力説した。このとき、身振り手振りで話すあん所長の右手薬指からポロリと指輪が抜け落ちたのだった。3人の熱心な説明に心が動いたのか、ジョグラフ氏から前向きな返答を得ることができた。この後、27日にはCOP9に訪れた環境省の黒田大三郎審議官にもCOP10関連会議の誘致を根回し。翌日28日、日本の環境省と国連大学高等研究所が主催するCOP9サイドイベント「日本の里山里海における生物多様性」でスピーチをした谷本知事は「石川の里山里海は世界に誇りうる財産である」と強調し、森林環境税の創設による森林整備、条例の制定、景観の面からの保全など様々な取り組みを展開していくと述べた。同時通訳を介してジョグラフ氏は知事のスピーチに聞き入っていた。能登視察はその4ヵ月後に実現した。
能登視察はジョグラフ氏にとって印象深かったのだろう。その後、生物多様性に関する国際会議で、「日本では、自然と共生する里山を守ることが、科学への崇拝で失われてしまった伝統を尊重する心、文化的、精神的な価値を守ることにつながっている。そのお手本が能登半島にある」と述べたそうだ。能登のファンになってくれたのかもしれない。
※この文は橋本確文堂が発行する季刊誌「自然人」(第20号/春)に寄稿したものを採録したものです。

なかなかの深みのあるストーリーだった。公演は、劇団ふるさときゃらばん(東京都小金井市)による「ホープ・ランド(希望の大地)」=チラシ・写真=。地球温暖化で、海に沈んでしまった赤道直下の島・モルバルの人々が手づくりの船に乗ってニッポンにやってくる。酋長がニッポンの友人、実業家オカモトから、過疎というニッポン特有の病気で、見捨てられ、荒れはてた山里があると聞いたからだ。過疎という病はニッポン人しから罹らず、モルバル人には感染しないから大丈夫と、夢と希望を持ってやってくる。南国の底抜けに明るい人たちだ。
31日の夕方、いつも利用する金沢市内のガソリンスタンドに向かった。電飾看板の「レギュラー99円」の文字が目に飛び込んできた。先の夏ごろまでは1リットル180円もした。幾分安くなったとはいえ、これまで5000円札を入れて、30数リットルしか入らなかった。それが徐々に下げて、先日は1リットル105円で入れた。それがあっさり100円を割ったのである。「現金会員」という条件つきでの「レギュラー99円」ではあるものの、円高を実感した。家計が助かる。
「金沢大学の地域連携」の一年を振り返る。大きく三つある。一つは、能登半島に大きく展開したということ。二つには、生物多様性条約第9回締約国会議(CBD-COP9、ボン)に参加し、石川県と国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットなどと連携して、COP10関連会議の誘致に向けて足がかりをつくったこと。三つ目として、里海とトキの研究事業に新たに着手できたということだ。
食を豊かにするのは味付けや食材の多さだけではない。「もてなし」という情感のこもった気づかいや応対が伴ってこそ、膳に並ぶ食も輝きを増す。もてなしは英語でホスピタリティといい、最近では学問として研究されてもいる。ところで、このもてなしの原点ともいえる農耕儀礼が能登半島に伝承されており、先ごろ、文化庁はユネスコ(国連教育科学文化機関)が無形文化遺産保護条約に基づき作成するリスト(09年9月)の登録候補の一つとして申請した。「あえのこと」である。「あえ」は饗応(ご馳走をしてもてなすこと)を意味する。
金沢大学地域連携推進センターが主催する「金沢大学タウン・ミーティング in 内灘」が12月20日、内灘町役場で開催された。金沢大学はタウン・ミーティングを平成14年度からこれまで石川県内7地区(輪島市、加賀市、鶴来町、珠洲市、能登町、羽咋市、穴水町)で開催しており、今回で8回目.。地域からの話題提供の中で、内灘町のボランティア団体「クリーンビーチ内灘作戦」代表の野村輝久さんが「内灘砂丘を蘇らせる」と題して、角間の里山から切り出したモウソウチクを利用した砂丘の復元運動を紹介した。
想像したのは強盗が入るなどの最悪の事態。すると奥の方で懐中電灯の明かりが揺れている。「やっぱり」と思い。大声で「誰かいるのか」と凄んだ。すると奥から家内の声、「停電なの」。力が抜ける。