★IRTイフガオ考~4~
世界遺産でもあるイフガオの棚田でブランド米と呼ばれるのが、「WONDER」の米。赤米で、粒が日本のジャポニカ米と似てどちらかといえば丸い。値段は1㌔100ペソ。マニラのマーケットでは米は1㌔35ペソから40ペソなので、ざっと3倍くらいの値段だ。この米をアメリカのNGOなどが買い付けてイフガオの棚田耕作者の支援に動いているという。もう一つ、「棚田米ワイン」も味わった。甘い味でのど越しが粘つく。アルコール度数は表示されてなかったが25~30度くらいはありそうだ。ブタ肉のバーベキューと合いそうだ。イフガオでは棚田米に付加価値をつけて販売する動き出ているのだ。こうした取り組みが一つ、また一つと成功することを願う。
「イフガオ棚田の誇り、それは人々が平等な関係でつくりあげたことだ」
イフガオでは何人かの「親日家」と話すことができた。親日という意味合いは、かつて日本の大学で留学経験があり、日本とフィリピンの関係を前向きに考えているとの意味だ。「私は純イフガオでございます」と話しかけてくれたのはフィリピン大学のシルバノ・マヒュー教授だった。国際関係論が専門で、日本には2度にわたって13年の留学経験を持つ。イフガオ州立大学で開催した国際フォーラム「世界農業遺産GIAHSとフィリピン・イフガオ棚田:現状・課題・発展性」では、「THE IFUGAO RICE TERRACES: A Socio-Cultural & Globalization Perspective」のタイトルで講演もいただいた。
「純イフガオ」という通り、本人はイフガオ族の出身で両親はいまでもイフガオで田畑を耕している。彼に、ICレコーダーを向けて、イフガオの問題についてインタビューした。快く答えてくれた。質問のその1は、今回のフォーラムの開催の意義について感想を聞いた。
「(世界遺産、あるいは世界農業遺産など)文化遺産に関するシンポジウムで本当に意義のあることは、例えば日本とフィリピンが国境や社会を超えて語り合う、あるいは、知恵・知識・技術などの諸問題について情報を交換し、お互いに知り合うことだと思います。これこそがグローバリゼーション、国際化であり、学問の世界、行政の世界、NPOやNGOにはそれぞれの立場がありますが、やはり文化遺産を保全・維持するためには、日本とフィリピン、あるいはアジア地域でもいいのでグローバルに話し合う会議を開催することは大変大事だと私は思います」
質問その2はイフオガの問題について、「フォーラムの講演でマヒュー教授は、今、イフガオの人たちが抱える一番の問題は、田んぼをつくる人た
ちの田から心が離れてしまっていることではないかという印象を受けたのですが、そういう解釈でよいか」と質問を投げた。
「イフガオ族には歴史上、王政というものはなかった。奴隷のような強制労働はなく、人々は平等な関係と意志で営々と棚田をつくり上げた。われわれイフガオの民はそのことに誇りに思っている。しかし、現代文明の中で、世界中どこでもそうだと思いますが、イフガオでもそうした昔のことを忘れてしまっています。昔と今とのギャップがどんどん開いていくと、保存する価値は薄くなってしまいます。ですから、例えばイフガオの人が、自分は別の所に住みたいと言って、祖先から伝えられた土地を忘れて離れていってしまうという問題を解決する方法があればいいと切に願っています」「日本でも同じようなことが農村地域で起きていると昨日のフォーラムで指摘がありましたが、日本とフィリピンで共通するこの問題をどのようにそれを防ぐかです。もちろん国際化した中では、どこにでも行けるようになっていますが、せっかく昔々の祖先につくってもらったものはやはり大事にしなければならないと思います」
質問その3として、「日本の能登と佐渡、イフガオが今度どのように交流を持てばよいか。日本に期待することは何か」と。
「まず、日本とイフガオということより、ご承知のように、フィリピン全体に対してイフガオは文化的にも少し特別な部分を持っています。イフガオ族の文化と、日本の昔の文化には共通点があると思います。そういうものを忘れないために、交流が必要です。これから、遺産の保存技術も含めた日本の優れた技術、あるいはお互いの考え方や価値観に関する交流をすれば、もっともっと文化遺産の保存に役立つと思います。日本の知恵とイフガオの知恵をお互いに考えながらやると、もっと効果的かと思います。そういう意味で、これから本当に日本とフィリピンが文化遺産保存のコンソーシアムという形で定期的にやれば、あるいはもうもっと広く言えば、アジアの文化遺産を一緒に考えながらやっていったら、組織化することも含めて進めばいいと思います」
マヒュー教授の提案は具体的だった。共通する文化があれば、国境を越えて、グローバルに話し合いましょう、知恵を出しましょうと。そして国内問題や政治問題として矮小化しないこと。問題の解はその先に見えてくる。
⇒22日(日)夜・金沢の天気 はれ
いまでもイフガオ族には一神教には違和感を持つ人が多いといわれる。コメに木に神が宿る「八百万の神」を信じるイフガオ族にとって、一神教は受け入れ難い。一方で、それゆえに少数民族が住む小中学校では、欧米の思想をベースとした文明化の教育、「エデュケーション(Education)」が徹底されてきた。今回の訪問では、14日に現地イフガオ州立大学で世界農業遺産(GIAHS)をテーマにしたフォラーム「世界農業遺産GIAHSとフィリピン・イフガオ棚田:現状・課題・発展性」(金沢大学、フィリピン大学、イフガオ州立大学主催)を開催したが、発表者からはこのクリスチャニティとエデュケーションの言葉が多く出てきた。どんな場面で出てくるのかというと、「イフガオの若い人たちが棚田の農業に従事したがらず、耕作放棄が増えるのは特にエデュケーション、そしてクリスチャニティに起因するのではないか」と。
られたとされる棚田は「天国への階段」とも呼ばれ、イフガオ族が神への捧げものとして造ったとの神話があるという。村々の様子はまるで、私が物心ついた、50年前の奥能登の農村の光景である。男の子は青ばなを垂らして鬼ごっこに興じている。女子はたらいと板で洗濯をしている。赤ん坊をおんぶしながら。車が通ると車道に木の枝を置き、タイヤが踏むバキッという音を楽しんいる子がいる。家はどこも掘っ建て小屋のようで、中にはおらくそ3世代の大家族が暮らしている。ニワトリは放し飼いでエサをついばんでいる。器用にガケに登るニワトリもいる。七面鳥も放し飼い、ヤギも。家族の様子、動物たちの様子は冒頭に述べた「昭和30年代の明るい農村」なのだ。イフガオの今の光景である。
つぶさにその様子を観察していると一つだけ気になることがあった。人と犬の関係が離れている。子供の後をついてきたり、子供が犬を抱きかかえたり、「人の友は犬」という光景ではないのだ。今回の訪問に同行してくれた、イフガオの農村を研究しているA氏にそのことを尋ねると、こともなげに「イフガオでは犬も家畜なんですよ。それが理由ですかね…」と答えた。人という友を失ったせいか、その運命を悟っているのか、犬たちに元気がない、そしてどれも痩せている。気のせいか。
ちで車が停まると、少女が手作りのネックスレのよなものを売りに来た。初めてのフィリピン、初日からカルチャーショックを受けた。それにしても、フィリピンは新旧、貧富がはっきりと浮かび上がる都市だ=写真=。
一方で、発表までに51時間余りという時間を費やす必要があったのかどうか。考察するヒントとなるニュースがいくつかあった。韓国中央日報インターネット版(日本語)によると、韓国の国家情報院の元世勲院長が20日、「北朝鮮が金正日総書記死去の時間と発表した17日午前8時30分に金総書記の専用列車は平壌竜城駅に停車中だった」と報告したと複数の与野党情報委員が伝えた。さらに引用すると、元院長は「金総書記は15日に現地指導をはじめ色々な行事があり、列車の動線を確認したが16~17日の2日間は動かなかったものと把握している」と説明した。金総書記が「走る野戦列車の中で重症急性心筋梗塞により死去した」という北朝鮮当局の公式発表とは違い、「待機中の列車」あるいは「第3の場所」で死去したということだ。ただし元院長は、「金総書記がどこかに行こうと列車に乗ってすぐに死去した可能性はある」と付け加えたという。
そうした能登のリアス式海岸を悪用したのが、北朝鮮による拉致事件だった。1977年9月19日、東京都三鷹市役所で警備員をしていた久米裕さん(当時52歳)は、能登の宇出津海岸から北朝鮮に拉致されてた。久米さんを能登に連れていった在日朝鮮人が、入り江にいた北朝鮮の工作員に引き渡したとされる。複雑に入り組んだリアス式海岸は工作員の絶好の隠れ場所となっていたのだ。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)での最大の成果は、名古屋議定書とともに、条約の今後10年間の活動の方向性を示す愛知ターゲットを採択したことだといわれる。名古屋議定書は、正式には「ABS(遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分)に関する名古屋議定書」との名称。以下が骨子となる。▽資源を利用する場合は、事前に原産国の許可を得る、▽資源を利用する側は、原産国側と利益配分について個別契約を結ぶ、▽資源に改良を加えた製品(派生品)の一部は利益配分の対象に含めることができる。対象に含めるかどうかは契約時に個別に判断、▽不正に持ち出された資源ではないかをチェックする機関を各国が一つ以上設ける。
式典は30ヵ国から政府関係者が集まりにぎやかだった。でも、なぜ金沢で開催するのか、と疑問符がつく。歓迎レセプションで谷本正憲石川県知事と、武内和彦国連大学副学長(東京大学教授)がその理由を明かした。キックオフイベントは環境省と国連大学などが中心となって5月に東京で開催する方向で準備が進んでいた。ところが3月11日に東日本大震災、そして福島の原発事故などがあり、中止となった。「愛知ターゲット」を何とかスタートさせたいと思いを募らせた関係者に浮かんだアイデアが、昨年12月「国際生物多様性年クロージングイベント」を開催した金沢市でキックオフイベントができないか、だった。会場はどこでもよいという訳にはいかない。生物多様性という意味合いが地域で理解され、これに協力的で、国際会議の開催経験があり、しかもそれなりの開催費も負担する自治体となると絞られてくる。知事はどうやら武内氏らに懇願され最終的に引き受けたらしい。
ただ、この挨拶も度が過ぎるというのもある。ちょうど6年前の2005年12月17日、いきなり金沢市内で50㌢という積雪に見舞われた。こうなると挨拶どころか、ケンカを売っているようにも思える。「人間ども見ておれ、自然をなめるなよ」といった感じだ。すると、人々は「ちょっと待ってくださいよ。二酸化炭素の排出などで地球は温暖化に向かっているのではないですか。それなのになぜ大雪なのですか」と思ってしまう。すると自然の声もさらに荒々しくなる。「地球温暖化は人間が引き起こしていると思っているようだが、オレに言わせれば、地球の寒冷期がたまたま温暖期に入ったわけで、これはオレが差配している自然のサイクルだ。今後雪を降らせないとか少なくするとかは一体誰が決めたんだ、それは人間の勝手解釈だろう。オレは降らせるときはガツンと降らす。2008年1月にはバクダットにも雪をプレゼントしてやったよ」と。北陸という土地柄では、冬空を見上げながら自然と対話ができる。1936年に世界で初めて人工雪を作ることに成功し、雪の結晶の研究で知られる中谷宇吉郎(1900-62、石川県加賀市出身)は「雪は天から送られた手紙である」という言葉を遺している。
九谷焼の若手の絵付職人、造形作家、問屋、北陸先端大学の研究者らが集まり、現代人のニーズやライフスタイルに合った九谷焼をつくろうと創作した作品が並ぶ。九谷焼といえば皿や花器などをイメージするが、置物、それも昆虫のオブジェだ。