⇒トピック往来

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

トキが能登に帰って来る。環境省が来年6月に予定している、国の特別天然記念物トキの放鳥場所が決まった。本州で初となる放鳥の場所は、能登半島の中ほどにある邑知潟(おうちがた)周辺=羽咋市南潟地区=。石川県や能登4市5町などで構成する「能登地域トキ放鳥受入推進協議会」では2022年に9市町によるそれぞれの「トキ放鳥推進モデル地区」を設定し、トキが生息しやすい減農薬の水田など環境づくりに取り組んできた。環境省の専門家による調査などを経て、きょう開かれた協議会で県が提案し、邑知潟周辺を放鳥場所と決めた。

選ばれた理由は大きく二つあるようだ。一つは、邑知潟を中心に羽咋市南潟地区には2㌔圏内の水田面積が1185㌶あり、放鳥が予定される15羽から20羽のエサ場としても十分な広さ。もう一つが、地形が佐渡の地形とよく似た場所だ。潟と平野を挟むように眉丈山系と石動山系があり、トキがねぐらをつくる場所として適している。また、新潟県の佐渡から飛来したとみられるトキの姿が2011年以降たびたび目撃されていて、2013年には5ヵ月間ほど住み続けたことなども評価された(16日付・NHKニュースWeb版)。

かつて能登はトキの生息地だった。眉丈山では1961年に5羽のトキが確認されている。ところが、田んぼでついばむドジョウやカエルなどのエサは農薬にまみれていた。能登のトキは徐々に減り、「本州で最後の一羽」と呼ばれたトキが1970年に捕獲され、新潟県佐渡の環境省トキ保護センターに繁殖のために送られた。ところが、翌年1971年3月、鳥かごのケージの金網で口ばしを損傷したことが原因で死んでしまう。(※写真・上は、輪島市三井町洲衛の空を舞うトキ=1957年、岩田秀男氏撮影)

こうしたいきさつもあり、石川県と能登9市町は環境省による本州でのトキ放鳥を熱心に働きかけてきた。国連が定める「国際生物多様性の日」である5月22日を「いしかわトキの日」と独自に定め、県民のモチベーションを盛り上げてきた。冒頭の能登9市町による「トキ放鳥推進モデル地区」も独自の取り組みとして設けたものだ。一連の動きが環境省で評価され、来年の能登での放鳥につながっている。(※写真・下は、羽咋市南潟地区の邑知潟と水田。左の山並はかつてトキが生息していた眉丈山)

トキのゆかりの地でもある眉丈山と邑知潟に再びトキが舞う日がやってくる。能登半島地震の災害からの復興のために石川県が策定した『創造的復興リーディングプロジェクト』の13の取り組みの中に、「トキが舞う能登の実現」が盛り込まれている。トキが舞う能登を震災復興のシンボルとしたい。その思いが動き出す。

⇒16日(水)午後・金沢の天気  はれ

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

参院選も後半戦に入ったが、それにしても静かな選挙選だ。「お願いします、お願いします」と連呼する選挙カーが金沢の自宅近くをたまに通る程度。石川選挙区(定数1)は全県が選挙区なので、金沢や能登、加賀を巡るのに時間がかかるのだろうか。ただ、後半から終盤にかけて金沢に集中してくるので、1議席をめぐる戦いはこれから激しくなるのかもしれない。

今回の選挙で自身が注目するのは、去年元日の能登半島地震の復旧・復興にそれぞれの候補者がどう向き合い、何を訴えているか、だ。そこで、候補者の公約や地元メディアでのインタビュー記事などから拾ってまとめてみた。以下、5人の候補を届け出順に。                    

◇共産党・村田茂候補(62):医療費と介護費の免除はことし6月まで延長されたが、さらに少なくとも9月まで延長させる。住宅再建で家を建てるには300万円の支給だが、少なくとも600万円に引き上げるべき。仕事の問題と住宅の問題は急を要している

◇自民党・宮本周司候補(54):まずは社会のインフラ整備。生活の再建と同様になりわい再建にまだ判断を迷っている多くの事業者がいる。復旧によって再生される街の雰囲気や街並みを具体的なイメージで語り合い、復興の姿を具現化し共有することが先決だ

◇国民民主党・濱辺健太候補(31):復興には仕事と教育環境を整える政策が必要だ。能登には空港があるので発着便を増やし、周囲を整備することで企業誘致や新しい産業を生み出す環境づくりを進める。そのための資金的な支援は国が後押しする

 ◇NHK党・小澤正人候補(49):コアとなる市の中心部を目に見えるカタチで復旧する。そうしたシンボル的なところが目に見えると、人々には安心感が生まれる。インフラ整備も急ぐ必要があり、各市町を結ぶ幹線道路が傷んでいるので復旧を加速させる

◇参政党・牧野緑候補(40):子育て世代が安心して暮らせる環境を整える。そのためには自給力が必要で、国として畑付きの住宅を整備したり、農業や漁業の人材を育成する学校をつくる。若者世代にもこうした学びを通して復興に参画してもらう仕組みを創る

能登の復旧・復興について、それぞれが考えを具体的に述べているので、実に分かりやすい。とくに、復興のシンボルづくりには共感する。ふと思ったことだが、ならば能登の復興をテーマに5人でパネル討論を開いて、互いに考えを深めてはどうだろうか。思いつきを述べたにすぎない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気  はれ

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

前回ブログの続き。輪島の海女が2年ぶりにアワビやサザエの漁を始めた。ウエットスーツ、水中眼鏡、足ひれを着用して素潜り。輪島市や、49㌔沖合の舳倉島=写真・上=を拠点に170人ほどの海女たちがいる。

舳倉島は古くからアワビが採れる島として知られる。万葉の歌人・大伴家持が越中国司として748年、能登を巡行している。島に渡ってはいないが、輪島で詠んだ歌がある。『沖つ島 い行き渡りて潜くちふ あわび珠もが包みて遣やらむ』。沖にある舳倉島に渡って潜り、アワビの真珠を都の妻に送ってやりたい、との意味のようだ。この和歌から分かることは、少なくとも1277年前の昔からこの島ではアワビが採取され、いまでも連綿と続いているということだ。

アワビ漁を守り続けるため、海女たちは自主的に厳しいルールをつくっている。素潜りを原則として、決してアクアラングなど呼吸器具を装着しない。アワビの貝殻の大きさ10㌢以下のものは採らない。漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る時間は午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日は一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。まさにSDGsの手本とも言える。

ところで、きのう採れたサザエやアワビはきょう金沢の近江町市場に並ぶと聞いていたので市場に行ってきた。水産物店の店先にサザエ=写真・中=が並んでいたので、店主に「どこのサザエですか」と尋ねると、「輪島の海女採り」と即答で返ってきた。大きいサイズのものは1個200円、中小型のものは5個で600円の値段だ。

それにしてもアワビ=写真・下=が見当たらない。そこで、「アワビはないの」と尋ねると、「去年の地震の影響でいまほとんど採れていない。値段も2万円と地震の前の倍になっている」とのこと。確かにきのう輪島漁港の荷捌き場をのぞいた時もアワビは数えるくらいしかなかった。アワビはこれまで浜値で1㌔1万円が相場だったが、それが一気に2万円とは。アワビは海底の岩場にへばりくつように生息している。それが、地震による海底の隆起で地形が変化したため、アワビの生息場所も変化した。その場所を把握できていないため採取する量が減ったということもあるようだ。

どの水産物店にもアワビが見当たらない。先の店主に再度聞いた。「では、アワビはどこに流れた」。すると、「ほとんど東京だろうね」と。値段の高騰で金沢ではさばき切れないと判断した仲介業者が東京市場に流しているようだ。2年ぶりのアワビ漁、はやく「金沢市民の台所」近江町市場に戻ってほしいものだ。

⇒14日(月)午後・金沢の天気   はれ

★にぎわう能登の海辺 水上バイク全国大会、2年ぶりの海女漁

★にぎわう能登の海辺 水上バイク全国大会、2年ぶりの海女漁

きょう能登半島の千里浜(ちりはま)海岸へ海の景色を見に行く。この海岸の面白さは、全長8㌔のうち6㌔で車での走行が可能だ。「千里浜なぎさドライブウェイ」と称されている。波打ち際を乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所あり、アメリカ・フロリダ半島のデイトナビーチ、ニュージーランド・北島のワイタレレビーチ、そして千里浜海岸だ。

到着すると、大変な混雑に見舞われていた。そして、沖合では何台もの水上バイクが波しぶきを上げて走行している=写真・上=。掲げられている横断幕を見ると、「JJSA 全日本選手権 4th Stage 」とある。水上バイクの全国大会「オールジャパンジェットスポーツシリーズ」=写真・中=。大会の様子を見に来ていた地元の人に尋ねると、千里浜大会はきのうから始まっていて、全国5ヵ所で行われるシリーズ戦のうち第4戦目で、年間チャンピオンを決める重要な一戦のようだ。全国から集まった160人の選手が水上で熱いレースを繰り広げていた。

さらに半島を北上して輪島漁港に行く。このブログでは何度か取り上げた海女のアワビとサザエの漁が始まったので、その様子を見に行った。海女たちは魚介類や海藻を専門とするプロの漁業者だ。アワビやサザエのほか25種類も採取している。アワビは貝殻つきで浜値で1㌔1万円ほどする。よく働き、よく稼ぐ。新聞記者時代に取材に訪れたとき、「亭主の一人や二人養えんようでは一人前の海女ではない」という言葉を何度か聞いた。自活する気概のある女性たちの自信にあふれた言葉だった。「輪島の海女漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されている(2018年)。

午後1時半ごろ、輪島漁港に海女の乗った漁船が次々に到着して、アワビやサザエを荷捌き場に次々と降ろしていた=写真・下=。1つの船に6人から8人の海女が同乗して、輪島港から49㌔離れた舳倉島周辺で素潜り漁を行っている。去年は元日の能登半島地震の影響で漁を控えたので2年ぶり。港では海女たちの明るい声が弾んでいた。漁は9月まで行われる。

⇒13日(日)夜・金沢の天気   はれ

★炎天下で参院選、石破総理あす能登で遊説 復興具体策どうする    

★炎天下で参院選、石破総理あす能登で遊説 復興具体策どうする    

きょうは参院選の公示日ながら、金沢の街中はえらく静かだ。そもそも選挙の争点が見えない。きのう(2日)午後、NHKで放送していた与野党の8党首による討論会(日本記者クラブ主催)を視聴したが、なんとなく見えた争点は、物価高対策として現金給付なのか消費税の減税なのか、だろうか。

「バラマキの2万円はいつ配るのか。財源は足りるのか」。国民民主の玉木氏は与党の現金給付案について自民の石破氏(総理)に突っ込みを入れた。これに対し、石破氏は野党の消費税減税案について、「恩恵を受ける対象が誰なのか重点化せずに減税するのは、むしろバラマキに近い」などと応酬していた(コメントは意訳)。石破氏は「一番重要なのは賃上げ」とも強調していた。

このやり取りを有権者の目線で見れば、自民の現金給付は一時的な家計支援であり、野党の消費税減税の方が国政選挙の争点として価値があるのではないか。それよりもっとスケール感のある与野党の論争を聴きたいものだ。たとえば、「身を切る改革」として、衆院と参院の二院制のそのものの是非論を争点にしてはどうか。(※写真は、参院選石川県選挙区のポスター掲示板。5氏が出馬し1議席を争うが、うち4人のポスターが貼られていた=金沢市泉野出町3丁目の金沢市総合体育館横、午後4時ごろ撮影)

きょうの地元新聞の5段広告で「明日7月4日 石破総裁来る! 石川能登の復興のために 街頭遊説13時45分~ 場所能登空港・第2駐車場」と掲載されている。能登の有権者は、能登復興の具体策をこの場でぜひ示してほしいと期待しているに違いない。

話は変わる。前回ブログで能登半島地震で被災した輪島市で最大のホテル旅館が閉鎖、その原因の一つが観光需要が見込めず、再建に向けた投資がままならないことだ、と述べた。以下、それを裏付けるような話。金沢国税局が今月1日に公表した2025年分の路線価(1月1日午前0時時点、平方1㍍当たり)によると、輪島市河井町の朝市通りは昨年比で16.7%減の3万5000円となった。地震前の評価だった前年は4.5%減だったので、地震で下落率が一気に拡大したことになる。この16.7%減は全国で最大の下落率だった(メディア各社の報道)。不動産需要を見いだし難い輪島の現状が数字として表れてきた。

もう一つ。石川県は去年1月1日からことし6月1日時点の県内の人口と世帯数の推移を発表した(今月1日)。輪島市は去年1月の2万1903人から2823人減り、1万9080人(減少率12.9%)。減少数は能登の9市町で最も多かった。地震による人口減少や観光客の入込数が見込めない状況がいつまで続くのか。暗い数字の話が続いた。

⇒3日(木)午後・金沢の天気  はれ

☆大の里横綱昇進パレードは沸き、チェロとワインに酔いしれる

☆大の里横綱昇進パレードは沸き、チェロとワインに酔いしれる

あの輪島以来52年ぶりに石川県から大相撲の新横綱に昇進した大の里関の祝賀バレードがきのう(29日)午後、出身地の津幡町で開催された。同町に住む親せきが自宅の2階から撮った写真を送ってくれた。オープンカーに二所ノ関親方と大の里関が乗り、こちらに向かって手を振ってくれている=写真・上=。1.2㌔のルートを30分ほどかけて進み、沿道の町民やファンが「おめでとう」「唯一無二」などと声援を送っていたようだ。祝賀パレードは去年夏場所の初優勝を記念して7月に催されていて、今回で2回目となった。

横綱昇進後、初めて故郷に凱旋した大の里関には栄誉も贈られた。パレードの到着点の町文化会館シグナスで報告会が開かれ、馳知事から県民栄誉賞が、矢田町長から町民栄誉賞がそれぞれ授与された。7月13日に初日を迎える名古屋場所でのさらなる奮闘を期待する声に、大の里関は「お祝いムードはきょうで終わり。あすから切り替えて稽古して、頑張りたい」と決意を新たにしていた(メディア各社の報道)。

きのう午後はコンサートに出かけた。金沢歌劇座で開かれた金沢交響楽団の第75回定期演奏会=写真・中=。同楽団は1972年に結成され、教員など様々な職業の社会人や主婦、学生らにより運営されているアマチュア・オーケストラ。今回の演奏曲はブラームスの『ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲』、そしてドボルザークの『チェロ協奏曲』。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)からプロのバイオリン奏者・坂本久仁雄氏、チェロ奏者・大澤明氏が入り、指揮者は山下一史マエストロがタクトを振るという、ある意味で豪華な演奏会だった。

ドボルザークのチェロ協奏曲は、独奏チェロの技巧的な美しさと、ドラマティックとも言えるオーケストレーションが印象的な名曲でもある。情感豊かに奏でられ、客席で酔いしれていた。

さらに酔いしれたのが、コンサートの終了後に金沢で開催されたワイン・セミナーに参加したとき。「オーパス・ワンとロバート・モンダヴィの世界」をテーマに、カリフォルニア・ワインを楽しみ学ぶ会だった。「ワインとは私にとって情熱である。そして家族、友人である。それはまた、温かい心、寛大な精神でもある」は、カリフォルニア州ナパ・ヴァレーを拠点にワイン造りに生涯を捧げたロバート・モンダヴィの名言だ。

そのロバート・モンダヴィがこだわって造ったワインが「オーパス・ワン」=写真・下=。カリフォルニアの季節外れの低温、タイミングの悪い雨、収穫直前の熱波などの難しい気候にめげずに造り続けるヴィンテージの豊穣なストーリーに耳を傾けながら味わった。ちなみに、オーパス・ワンは、音楽用語で「作品番号1番」。唯一無二のワインとの意味が込められているそうだ。

⇒30日(月)午前・金沢の天気  はれ

☆万博そぞろ歩き(続)・・万博のシンボルは巨大な大屋根リング

☆万博そぞろ歩き(続)・・万博のシンボルは巨大な大屋根リング

万博の作品はパビリオンの中だけではなく、外にも飾られている。中でも、「インド」パビリオンの前にある大きな手のオブジェが目立つ。合掌する青色と肌色の手だ=写真・上=。「ナマステハンド」と呼ばれている。インド人は会ったとき、そして別れの挨拶に合掌して、「ナマステ」と言葉を発する。ナマスは敬礼・服従するという意味で、テは「あなたに」の意味がある(Wikipedia「ナマステ」)。インドのお国柄を象徴するような作品だ。

外から大屋根リングを眺めると、大勢が歩いている。エスカレーターで高さ12㍍の屋上「スカイウォーク」に行き、楽しそうに歩いている様子が見える=写真・中=。リングの全長は2025㍍なので、1㌔をゆっくりめの15分で歩いたとして、30分ほどで一周する。来月7月28日夕方には、スカイウォークで7000人が参加して盆踊り大会が開かれるようだ。

そして、大屋根リングは巨大な休憩所のような雰囲気が漂う=写真・下= 。リングの下は歩ける交通空間であると同時に、雨風や日差しなどを遮る快適な滞留空間として利用されている。EXPO2025公式サイトによると、リングは「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインの理念を表すシンボルとなる建築物、と評されている。そして、構造が神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)接合の工法を加えた建築で、和の風格がある。

大屋根リングは、最大の木造建築物としてことし3月4日にギネス世界記録に認定された。正式な英語記録名は「The largest wooden architectural structure」。万博会場を回っていて、万博のシンボルと言われるものはなんだろうかと考えると、やはり大屋根リングだろう。1970年の万博では、芸術家の岡本太郎氏がデザインした、あの「太陽の塔」がシンボルだった。ただし、大屋根リングは万博終了後に一部を残して解体されることになっている(EXPO2025公式サイト)。つかの間の万博のシンボル、そしてギネス世界記録の建築物はさっと姿を消すことになる。個人的には、心に残ればそれでよい。

⇒27日(金)夜・金沢の天気    くもり

★万博そぞろ歩き(下)・・オーストラリア館前でワニ肉ロールを食す

★万博そぞろ歩き(下)・・オーストラリア館前でワニ肉ロールを食す

「未来の都市」パビリオンの入り口付近に日本の伝統的な文様とされる「なまこ壁」が見えた。「万博らしくないな」と思いながらよく見ると、「くら KURA」と書かれた暖簾(のれん)が掛かっていた。「くら寿司」だ。順番待ちの長い行列ができていたので、列には並ばなかったが、万博のくら寿司は特徴があるようだ。ネットによると、寿司のほかに、70ヵ国・地域を代表する料理を再現した特別メニューがあり、各国の駐日大使館から協力を得て、限りなく本場の味わい近いメニューを再現した、とある。リトアニアのシャルティバルシチャイは「冷たいボルシチ」と呼ばれ、見た目も鮮やかなビーツを使用したスープで、この暑さで人気のようだ。

ツアーの同行者から誘われ、チャレンジしたのがワニの肉。「オーストラリア」パビリオンの前にショップがあり、「クロコダイルロール」と赤ワインを注文した。説明書きには「ワニの切り身・ネギ・レモンマートルマヨネーズ・ブリオッシュロール」とある。値段は1650円。オーストラリア人らしき女性販売員から「ワニ、オイシイデスヨ」と片言の日本語で手渡された=写真・中=。少々ドキドキしながら口にした。ワニの肉は硬いイメージだったが、鳥肉のような柔らかさだった。そして、これがオーストラリア産の赤ワインとぴったりと合う。まさにマリアージュ。ちょっとした海外旅行気分も味わえた。

「宴ーUTAGE」という外食パビリオンでは、大阪外食産業協会が新しい外食の在り方を提案しているというので館内をのぞくと、外食チェーン店や老舗菓子店が万博限定メニューや試食を提供していた。そんな数々のメニューの中で「SDGs冷麺」が目を引いた=写真・下=。冷麺を食べたいが、食物アレルギーが気になるという人のための冷麺のようだ。小麦粉を使わずに米粉100%麺、グルテンフリー、アレルゲンフリー、トマトソース、スーフード、とある。値段は1180円。

SDGsには「誰一人取り残さない」という原則がある。それを食の世界でも進めるというのが、 「天下の台所」「食い倒れ」の大阪らしい発想なのかとも思った。

⇒26日(木)夜・金沢の天気   あめ

☆万博そぞろ歩き(上)・・鼓動する「iPS心臓」に未来医療の可能性

☆万博そぞろ歩き(上)・・鼓動する「iPS心臓」に未来医療の可能性

あのパビリオンをぜひ見てみたいとの意識はなかったが、誘われるままに「万博見学ツアー」に今月23、24日の両日参加した。企画したのは金沢市内のある生産者団体。金沢から大阪の万博会場まではバスで移動し、休憩が数回入って5時間30分で到着した。梅雨の猛暑と騒がれていたので熱中症を心配したが、大阪は両日とも曇り空でにわか雨もあり、日中の最高気温も30度前後だった。

入り口は西ゲート。結論から言えば、来た甲斐があったと思ったのは、iPS細胞で創られた「小さな心臓」が鼓動する様子を見たときだった。円筒形の容器の赤い培養液の中でドク、ドクと動いている。人には五感というものがあるが、それが強烈に刺激されたような感覚に陥った。人には心と体がある。その生命の源(みなもと)は心臓だと改めて思うと同時に、鼓動するその姿は生命の神秘を感じさせる。(※写真・上は「PASONA」パビリオンで展示されている「iPS心臓」)

説明書きによると、この小さな心臓は大阪大学のチームが作成したもので、コラーゲンの土台にiPS細胞由来の心筋細胞を植え込み、3.5㌢ほどの原型をつくった。血液を循環させる本来の心臓のような機能はない。そういえば、大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。まさに、この小さな心臓はテーマそのものではないか。この作品展示を見た次世代を担う若者たちが生命の可能性を信じて、「iPS心臓」を完成させる未来がやってくるかもしれない、と想像を膨らませた。

万博会場に来て初めて気がついたことは、実にさまざま企業や法人・団体が新技術を用いて作品展示を行っている。その一つがロボット。「未来の都市」パビリオンで展示されている川崎重工業が開発した四足歩行ロボット「CORLEO(コルレオ)」=写真・下=は、2050年の移動手段をイメージして開発した乗り物で、山岳地帯など険しい道での走行を想定している。体を動かしていろいろなポーズを取っていたが、まるで未来世界の映画を見ているような光景だ。ぜひ乗ってみたかったが、残念ながらまだ試乗はできないとのこと。

iPS心臓や四足歩行ロボットを見て、ふつふつと未来社会のイメージが湧いてくる。それが万博の面白さかもしれない。

⇒25日(水)午後・金沢の天気   くもり

★のと・かが小話・・連日猛暑、金沢すいか、ドクターイエロー

★のと・かが小話・・連日猛暑、金沢すいか、ドクターイエロー

きのうきょうと金沢は猛烈な暑さだ。自宅近くの街路の温度計で35度、2日連続の猛暑だ=写真・上、22日正午すぎ、金沢市野田町の山側環状道路で撮影=。テレビニュースによると、金沢から南に位置する小松市ではきのう36.9度となり全国最高を観測、きょうも猛暑となっている。そして、石川県内ではきょう午後5時までに熱中症の疑いで11人が病院に搬送されたようだ。一方、能登半島の北部では午後から大気の状態が不安定となり、3市町(珠洲、穴水、志賀)には洪水警報が出された。ところによって1時間に30㍉の激しい雨が降る見込みで、金沢地方気象台では川の増水や土砂災害などに注意を呼びかけている。

早々と訪れた猛暑の日に合わせたかように、金沢市のJA販売所では「金沢すいか」の売り込みが始まっている。「夏到来 砂丘地より直送」との看板が出ていたので、店に入ってみた。Lサイズものでひと玉2200円。それにしても大玉だ。冷蔵庫に入るだろうかと思いながら見渡していると、4分の1にカットされた「カットすいか」=写真・中=が並んでいたので、これを2個買うことにした。1個780円。

金沢すいかは金沢港近くの砂丘地などで栽培されていて、ひと昔前までは「砂丘地すいか」などと呼ばれていた。それをブランド農産物として知名度を上げ、販路を広げようと生産者が奮闘しているようだ。この地域の農家では伝統野菜である「加賀野菜」の栽培も盛んで、サツマイモの「五郎島金時」や「加賀太きゅうり」、「源助だいこん」などがある。砂丘地だけに水の管理も大変だろうことは想像に難くない。

最近ちょっとした話題になっているのが、金沢市に隣接する白山市にある市立高速鉄道ビジターセンター「トレインパーク白山」で常設展示が始まった「ドクターイエロー」=写真・下=のこと。この黄色い列車は、走りながら線路のゆがみや電線の高さ、信号の動作などを細かく調べる役目を担っている。これらをチェックをすることで、新幹線が安全に走れるようなる。まるで医者の定期検診のような役目から、ドクター・イエローと呼ばれているそうだ。

白山市で常設展示されているのは東海道・山陽新幹線の点検車両として1979年に製造されたもので、2005年に引退した後は「リニア・鉄道館」(名古屋市)で先月まで展示されていた。ドクターイエローは運行ダイヤは不定期で、しかも非公表であるため、知る人ぞ知る列車でもある。このため、その黄色いボディは「幸運の黄色い新幹線」、「見ると幸せになれる」と鉄道ファンの評判を呼んでいた。きょう見学に行くと大勢の家族連れでにぎわっていた。3度目の鉄道人生を歩むことになったドクターイエロー氏、ようこそ北陸へ。

⇒22日(日)夜・金沢の天気   くもり時々あめ