⇒トピック往来

★アップグレードの強引さに違和感

★アップグレードの強引さに違和感

  最近うんざりしているのが、PCを立ち上げると出てくるマイクロソフトが最新の基本ソフト「Windows10のアップグレード」通知画面だ。親しい友人から「Windows7が使い勝手がいいので、どうすればよいか」と最近相談を受けたこともある。身近な問題であり、世間でも問題になっている。

  苦情でよく耳にするのは、「Windows10へのアップグレードの通知画面が執拗に出る」「Windows10へのアップグレードの通知画面でバツ(×)を押したのにアップデートされてしまった」「勝手にアップデートされてしまい、それまで使用していたフリーソフトが使えなくなった」など。

  私のPCはWindows8なので、10をダウンロードしてもそれほど操作感に違和感はないかもしれないが、それでもアップグレードを見送っている。そもそも、いくら無料だからといって、アップグレード開始日時を自動的に決めて勝手にアップグレードが始まる。それで気に入らなければ1ヵ月未満であれば元のOSに戻すことは可能という姿勢が「強制的」だ。この問題は国会でも取り上げられたようだ。

  メディアによると、マイクロソフトは今月10日に、Windows10に関する記者説明会を開いた。マイクロソフト側の発表はWindows10の優れた点を紹介し、アップデートの通知の操作を説明するものだったようだ。これに対し、記者からは、「強制」問題に集中した。マイクロソフト側は「強制ではない。キャンセルする手順があり、アップデートしても1か月間は元に戻す手段を提供している」「通知のしくみは全世界統一で、日本だけ変更するのは難しい状況。日本語の表記がわかりにくいことは社内でも把握しており、改善の検討は行っている」

  ユーザーが腹を立ているのは、アップグレード通知画面でバツ(×)を押してもキャンセルにはならず、アップデートが実行されることだ。ほとんどのユーザーは、ウィンドーの右上にある「×」をクリックすれば、実行されずにキャンセルされるものだと考えている。しかし、マイクロソフト側では、バツ(×)は、その画面を閉じるというだけの操作で、キャンセルではないと主張していることだ。ここにユーザー側との決定的な認識の違い、ある種の「作為」を感じる。

  Windows10は優れた製品なのかもしれない。ただ、それを「無料だ。ありがたく思えよ」と言わんばかりに、強引にアップグレードさせることに違和感を感じるのだ。

⇒12日(日)朝・金沢の天気   はれ

★花の季節は移ろう

★花の季節は移ろう

  東京の知り合いから「地震の対策はできてますか」とメールがあった。なんでも、ラジオのFM電波で地震活動の前兆となる変動現象を発見した天文学者が独自に「地震予知」のニュースレターを発行していて、それによると「4月9日 M7.8±0.5」の地震が福井や石川県加賀地方で起きる可能性があるという。このメールを読んで、1948年(昭和23年)6月28日16時13分29秒に発生し福井県を中心に北陸を襲った福井地震の再来かとピンと来た。そのときは、都市直下型で、規模はM7.1だった。同規模の地震が果たしてくるのかどうか。

  大学の地震学者でも、公立天文台に所属しているわけでもない、私設の天文台の研究者だ。地震予知を必死に観測する姿はニュースレターを読めば分かる。「4月9日」を固唾の飲んで見守っている。

  公園の桜は春の嵐で桜吹雪の状態になっていた。そして、自宅の庭に出て、観察するとタイツリソウやイワヤツデといった花が咲き始めている。このタイツリソウは、面白い花だ。ネットで調べてみると、タイツリソウは別名で正式にはケマンソウ(ケシ科)。中国や朝鮮半島に分布していて多年草です。日本には15世紀の初めの室町時代にに入ってきらしい。ケマンソウの名前は花を寺院のお堂を飾る装飾品「華鬘(けまん)」に見立てて付けられたとか。

  長くしなるような花茎を釣り竿に、ぶら下がるように付く花をタイに見立てた「タイツリソウ(鯛釣草)」の別名の方がイメージがわいてわかりやすいので、今ではタイツリソウの名が一般的という。写真を見てわかるように、赤いに近いピンクの花はぷっくりとしたハート型で外側の花びらと、その下方から突き出るように伸びる内側の花びらがある。花は開き切ると外側の花びらの先端がくいっと上を向き、またその姿がなんとも愛らしいのだ。

  日本では鯛釣草というめでたいようなネーミングだが、欧米はちょっと感覚が違うらしい。この花が心臓のように見えるので、英語名は「bleedeng heart(血を流す心臓)」、ドイツ語名は「tranendes Herz(涙を流す心臓)」、フランス語名は「coeur-de-Jannette(ジャネットの心臓)」。これに比べれば、本場の中国名は「荷包牡丹(きんちゃくぼたん)」。このほうが何となく日本人としては受け入れやすい。そんなことを思いながら、季節の移ろいを感じている。

⇒8日(金)朝・金沢の天気   あめ

★北陸新幹線のストロー現象

★北陸新幹線のストロー現象

   昨日3月14日は北陸新幹線の「長野-金沢間」が開業して1周年だった。東京から金沢までの所要時間は最速で2時間26分に。新幹線の利用客は在来線特急が走っていたころに比べて3倍に増えた。ここ数日の新聞報道=写真=などによると、去年4月から今年1月の観光客数は、兼六園が前年同期比で1.6倍に増えて、NHKの連続テレビ小説「まれ」のロケ地となった輪島市では、朝市の入込客数が1.3倍になってという。

   上記は誰もが予想した新幹線効果だったが、意外なこともあった。首都圏からの乗客が増えたのだとばかり思っていたら、仙台方面からの客が激増していたことだった。石川県が去年4-6月の3ヵ月で観光客の居住地を調べたところ、前年比の伸び率は関東圏からは180%、宮城県も180%と同じく増加している。確かに仙台駅から大宮駅(埼玉)で乗り換えれば、金沢駅まで乗車時間3時間25分で到着する。これは兼六園で実感した。料金所の近くで立っていると、中国語や英語に混じって、東北なまりの言葉もよく聞こえるのだ。団体客だったので余計目立ったのかもしれない。

   北陸新幹線で喜んでばかりはいられない統計もある。3月1日に石川労働局が発表した、石川県内の卒業予定の大学生、短大生、高専生、専修学校生ら学生の就職内定率だ。全体としては、内定率89.8%と、1996年から調査を始めて過去最高との数字だった。数字だと、就職希望者6436人のうち5780人が内定を得た(1月末調べ)。ところが、さらく詳しく数字を拾ってみると、大学生の県内内定者が減っているのだ。大学生の就職内定者3585人、うち県内内定者は1376人、割割り合いにして35.6%。昨年同期では1327人で38.3%だったので、2.7%の落ち込み。この数字は過去5年間で最低なのだ。これは一体どういうことか。

   「ストロー現象」だ。北陸新幹線の沿線(東京や長野方面)からの求人数が増加している。まるでストローに吸い込まれるようにして、就職する学生が関東方面へと逆流している、と言える。どれだけの求人数があったかは、統計的に定かではない。「リクナビ」など求人情報サイトを経由した就活が主流になってきて、実態が見えるのは、結果の統計だけだ。

   首都圏などからの求人が増え、学生たちの就活の選択肢が増えることはいいことに違いない。ただ、これが現象として、あるいはトレンドになって加速すると、地域を担う若者たちが減少することを危惧するのである。

⇒15日(火)朝・金沢の天気   くもり

☆「災害は復興を待たず」

☆「災害は復興を待たず」

  きょう「3月11日」、東日本大震災が起きて満5年になる。その時、私は大学の公開講座で社会人を対象に広報の在り方について講義をしていた。「東北が地震と津波で大変なことになっている」とテレビを見た公開講座の担当教授が血相を変えて講義室に駆け込んで、耳打ちしてくれたことを覚えている。

  2ヵ月後の5月11日に仙台市と気仙沼市を調査取材に訪れた。当時、気仙沼の街には海水の饐(す)えたような、腐海の匂いが立ち込めていた。ガレキは路肩に整理されていたので、歩くことはできた。岸壁付近では、津波で陸に打ち上げられた大型巻き網漁船「第十八共徳丸」(330トン)があった。津波のすさまじさを思い知らされた。

  昨年15年2月10日、再度気仙沼を訪れた。同市に住む、「森は海の恋人」運動の提唱者の畠山重篤氏に講演をお願いするためだった。畠山氏との交渉を終えて、前回訪れた市内の同じ場所に立ってみた。「第十八共徳丸」はすでに解体されてすでになかった。が、震災から2ヵ月後の街並みの記憶とそう違わない。今でも街のあちこちでガレキの処理が行われていた=写真=。復興という想いを抱いて来たので、現地を眺めて愕然としたのだった。

  復興計画は一体どうなっているのかと考えてしまう。聞けば、高台移転で住民のコンセンサスが得られていないという。過日の報道で、元の場所に戻って住みたい人が3分の1、二度と元の場所には戻りたくない人が3分の1、高台に住みたいという人が3分の1と被災地の人々の思いは3つどもえになっている。海を生業(なりわい)とする人々が多い地域では、高台移転のコンセンサスは難しいのかもしれない。でも、安全な高台に町ごと移す復興計画を実施しなければ復興計画は前に進まない。危険を覚悟で海辺に住みたいのなら、それは自己責任で住むということにすればよいのではないだろうか。

   それにしても、復興工事そのものが進んでいない。一つには、土木・建築系の職員数が集まらないという現実があるようだ。行政のマンパワーだけでなく、被災地は建設工事ラッシュなので、漁港施設、海岸、道路、河川、土地区画整理、宅地造成、下水道等の工事が同時進行している。しかも、国や県、各自治体が一斉に工事を発注するので、建設会社の落札に至らないというケースがあるようだ。工事ができず、さらに工期が伸びるとうい悪循環が起きている。さらに、アベノミクスの「国土強靭化計画」で全国で工事ラッシュが起きている。優先させるべき復興作業の現場では作業員が不足している。採石、生コン、コンパネなどの建築資材や建設機械の不足もあるだろう。

  復興はスピードが肝心だと考える。1923年の関東大震災では、東京市長で震災後に内務大臣と帝都復興院総裁を務めた後藤新平は復興計画を自らの手で書き上げたといわれる。まずガレキをいち早く横浜に持って行った。それが今の山下公園になっている。阪神淡路大震災後は、ほぼ1年半で復興したと高く評価されている。

  今は復興財源については手が尽くされている。震災から4年間の累計で総額が29兆円、さらに、新年度から5年間で6.5兆円を手当てしている。問題は「災害は復興を待たず」である。次なる災害に備えて、ピッチを上げて今の復興を進めなければ、もし不幸にして「次」が起きた場合どうなることか。一つ言えることは、国家の財政破綻という「二次災害」が起きることだけは間違いない。

⇒11日(金)朝・金沢の天気    はれ

★ニュース現場の凄み

★ニュース現場の凄み

  新聞とテレビの取材経験から、現場の迫力や凄(すご)みというものを十分に感じてきた。現場でしか実感できない怒りや悲しみ、有難さというものがあるものだ。だから、今でも現場に行きたいという欲求が湧いてくる。

  昨年9月22日、沖縄旅行で辺野古の現場に行った。翁長知事がジュネーブでの国連人権理事会でアメリカ軍基地の県内移設は「政府は沖縄をないがしろにしている」とスピーチを行った後のことで、連日100人ほどの基地反対派がアメリカ軍基地キャンプ・シュワブのゲート前に集まり、集会を開いていた。

  キャンプ・シュワブのゲート前、現場はものものしい雰囲気が漂っていた。正門の道路を挟んだ向こう側には基地反対派のテントが張られて入れ替わり、立ち代わり大音響でアジ演説が飛び交っていた。タクシーでその前を走行すると、「辺野古新基地NO!」などのプラカードが車から見えるように道路側に差し出される。車との接触が危ない。正面で陣取っていた人がいた。「辺野古埋立阻止」のプラカードを持って椅子に腰かけている。基地と歩道の境界線である黄色い線を超えないように公道スレスレのところでアピールしていた=写真・上=。数センチでも基地側に入れば、おそらく逮捕されるだろう。まさにギリギリの抗議行動がここで見えた。このような絵(映像写り)にならないシーンはテレビメディアでは放送されないだろう。

  国政選挙にはよく行く。夜だ。21時30分、金沢市の開票作業が始まるのに合わせて、金沢市営中央市民体育館に出かける。持参した双眼鏡で何か所かの開披台をのぞいて、開票者(自治体職員)の手元で裁かれる候補者名をチェックすれば、自分なりに候補者の「当落」の判断がつく。あるいは、ちょっとずるいが、テレビ局や新聞社の調査でアルバイトにきている学生たちが双眼鏡をのぞきこみながら=写真・中=、襟元の無線マイクで候補者名を本社に伝えているので、傍らにいれば自ずと聞こえる。どの候補者が現在優勢かということも判断できる。選挙は結果をいち速く知るというリアルタイムの凄みがこの場で体験できる。もちろん、開票作業は公正さを保つという意味で双眼鏡で開票者の手元をのぞくことは違法ではない。バードウオッチィングのようで楽しくもある。

    外国人の活動家が絡むニュースの現場に赴いたのは2011年5月5日だった。和歌山県の南紀に旅行した折に太地町に足を運んだ。日本のイルカ漁を批判したアメリカ映画「ザ・コーヴ」の舞台となった入り江へ。前日にイルカが網にかかっており、あす市場が再開するのでイルカを運搬するというその日だった。おそらく反捕鯨団体シーシェパードのスタッフをみられる外国人2人がカメラ撮影に来ていた。また、入り江の漁を監視する姿もあった=写真・下=。「和歌山県警」の腕章をつけた人も随所に配置されていて、入り江はものものしい緊張感が漂っていた。漁協の前では、外国人数人が、車から漁師風の男が下車するたびに近寄って、たどたどしい日本語で「イルカ漁をやめてほしい」とお札を数枚差し出していた。猟師は無視して漁協に向かった。

  この後、太地町の「くじらの博物館」を見て回った。古式捕鯨などがなぜ途絶えたかというと、これまで見たことない巨大なクジラがきて、漁師100人以上が犠牲になったと説明されていた。自然への恐れや畏怖の念を抱きながら、それでも太地の人たちは海からの恵みを得ようと歴史を刻んできた。そんな様子が見て取れた。

⇒5日(土)朝・金沢の天気   あめ

★テレビはスターだった

★テレビはスターだった

    金沢大学の総合科目の授業「マスメディアと現代を読み解く」を担当している。講義の中で、1953年(昭和28年)に日本でテレビ放送が始まったときの様子を学生たちにこう話す。「そのころテレビは国民のスターだった。黎明期はまだまだ家庭に普及せず、街頭テレビの時代だった。繁華街や鉄道駅、百貨店、公園など人の集まる場所にテレビが設置され、大勢の人たちが群がった。テレビは憧れの的だった」と。学生たちの反応は「信じられない」といった様子だ。

  国産のテレビを最初に市場に送り込んだのはシャープだった。14インチで当時の価格は17万5000円だった。大卒の銀行マンの初任給が5600円の時代だ。庶民から遠い存在だったテレビが徐々に普及していった。NHKの「にっぽん くらしの記憶」のチラシ=写真=に掲載されている写真を見ると、子どもたちが大相撲の中継を夢中になって見ている。このチラシに写っているテレビがシャープ製の日本初のテレビだ。テレビが家庭に普及するとともに、シャープは家電事業の土台を固めて、成長の足場を築いたのだった。

  日本でテレビ放送がスタートして63年後、そのシャープが「身売り」することになった。メディア各社の報道によりと、シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に、「支援」といわれながら、実質的に買収されることになった。鴻海の郭台銘会長は、カリスマ経営者でワンマンと言われる。シャープの経営陣はどのように対応しているのだろうか。知る由もないが、向かう先は一つだろう。

  鴻海はもともとアップルの下請け、その脱皮を狙っている。つまり、独自技術を手に入れ、自社ブランドを作ることにある。そのキーポイントが、シャープの液晶技術ということだろう。シャープの液晶技術は「主要ディスプレイ厚み20ミリ」「コントラスト比10万対1」などオンリーワンと言える。

  シャープの創業者の早川徳次は立志伝中の人だ。シャープペンシルの事業を関東大震災(1923年)で工場を失い、その事業を社員に引き渡して、自らは身ひとつで大阪へ赴く。当時、政府は災害報道に速報性が必要だとラジオ放送の開局を急いでいた。ここ注目した早川徳次は、1925年に国産第1号となる鉱石ラジオを製造し、同じ年にテレビ放送が始まった。鉱石ラジオを真空管ラジオへ進化させていく。戦後になり、テレビの国産第1号を世に送り出した。シャープは常にメディアツール(ラジオ、テレビ)のパイオニアだった。

  先端技術の流失などいろいろ議論はあるものの、鴻海とシャープが組んで次世代の画期的なメディアツールを開発してほしいと願う。

⇒2日(火)午後・金沢の天気   はれ

☆共存のモデル

☆共存のモデル

   「地方」という言葉は、地方に住む物にとってピンとこない。よく、中央である首都圏との対比として使われるからだ。かつて、「表日本」と「裏日本」という言葉があった。商工業で栄える太平洋側と、新幹線も走らず、寂れる日本海側といった比較で使われた。どこかと比較して、何かの基準の優劣だったら、比較されたほうが不快に感じるものだ。ただ、「地域」という言葉は関東地域、関西地域などそれぞれ独自の文化があり、その地域の固有性性を指す言葉のように感じる。単なる比較ではない。

    ただ、今政府が取り組んでいる「地方創生」という言葉は、ちょっとした凄みがある。それは「東京一極集中」VS「オール地方」という構図からだ。地方は地方で崖っぷちに立たされている。地域を再生させる総合戦略をそれぞに打ち立ている。東京の一極集中をこのまま放置してはならない、という地方の意気込みが見え始めている。それが凄みだ。では、どのような仕掛けがあるのか。

    今月5日、石破地方創生大臣が地域再生法の一部を改正する法律案を閣議決定したと記者会見で報じられた。それは、「企業版ふるさと納税」「日本版CCRC」のための措置、新型交付金を講じるという3本柱のだった。今年度内に成立させるという。なるほどと思ったのが企業版ふるさと納税だ。企業が自治体の総合戦略などに基づき、その意義に賛同してて寄付金をすることによって税制上の措置を講じ、企業と地域の連携をはかるという。「一社一村」運動の様相だ。

    もう一つ、注目したのは日本版CCRCだ。都会から地方に移住したいという人々を地域が受け入れ、一つのコミュニティー(共同体)をつくることで新たな考えや発想、仕事が起こすという作戦。CCRC(Continuing Care Retirement Community)は高齢者が健康なうちに地方に移住し、終身過ごすことが可能な生活共同体のような小さなタウン。1970年代にアメリカで始まり、全米で2000ヵ所のCCRCがあるという。都会での孤独死を自らの最期にしてなるものか、と意欲あるシニアが次なるステージを探しているのだ。そうした人々を受け入れる仕組みが地方で創る、それが日本版CCRCの狙いだろう。

    日本版CCRCにしても、企業版ふるさと納税にしても、問題は国と地域の本気度だ。物事を成し遂げる実行可能性を見せることが必要だろう。石破大臣が7日、金沢市を訪れた。地方の雇用創出に向けて必要な課題や対応を考える政府の「地域しごと創生会議」第3回会合に出席するためだ。午前中は、複合型福祉交流施設の「シェア金沢」を視察した=写真=。

    ここでは、3万6000平方㍍の敷地の中に高齢者向けデイサービス、サービス付き高齢者住宅、児童福祉施設、学生向けアパート、温泉、レストラン、カフェなどが点在している。つまり、高齢者や学生・若者、障害者らが一つのコミュニティーの中で生活している。全国でも珍しい、ある意味で先駆的な施設だ。温泉や売店など見学した石破大臣は「外から来ても楽しいだろうなという印象を持った」「若者、よそ者が地域に必要。その人たちが地域に新たな付加価値を生み出す」と、シェア金沢の取り組みを高く評価した。

    シェア金沢での石破大臣の視察は1時間30分にも及んだ。同施設への入りから出までの視察の様子を観察させてもらった。視線はどこにあるのか、どのような言葉を発するのか。その中に本気度を確かめたかった。案内してくれた人、招き入れてくれた人、それぞれに「ありがとう」と出がけに声をかけ、言葉に無駄がなかった。園内に飼っているアルパカを見て、質問した。「なぜこの施設にアルパカを飼っているの」と大臣。「吠えない、噛まない、やさしい動物なんです」と職員。「それだったら高齢者や障がい者も(アルパカを)お世話ができますね。なるほど」と大臣。その後、帰りがけに「さまざまな人が共存するというモデルがここ(シェア金沢)にある」と大臣が評価したのだった。

⇒8日(月)朝・金沢の天気   はれ

★分かれ道

★分かれ道

  きょう夕方、甘利明経済再生担当大臣が辞任した。「週刊文春」の報道を受けて、建設会社からの自身と秘書の建設金銭授受を認めたものだった。夕方からのNHK生中継で、甘利氏の記者会見を50分余り視聴した=写真=。

  自分なりにまとめると、甘利氏は大臣室と地元事務所で2回、建設会社側から現金100万円を受け取った。政治資金として処理するよう秘書に指示し、収支報告書に記載があったことを確認した。会見で面白いのは、菓子折りの中ののし袋に入った現金をやりとりだった。まるで、時代劇の悪徳商人が代官様に献上する菓子箱で、代官が「おぬしも悪よのう、ハッハッハー」と笑い、悪徳商人がペコリと頭を下げて、「よろしゅう、お頼み申し上げます」と言う、あの構図にそっくりだ。

  もう一つが、地元の公設秘書の問題。建設会社から500万円を受け取ったが、収支報告書には200万円の記載しかなく、300万円は秘書が使い込んでしまった、と甘利氏は説明した。結果的に政治資金規正法の虚偽記載となる。普通に考えれば、業務上横領に問われそうだ。刑事事件の可能性も出てきた。おそらく、調査を依頼した元特捜検事の弁護士が甘利氏にその可能性を示唆したのだろう。そして「(甘利氏が)秘書を告発すべきだ」と進言したのだろう。甘利氏は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の大筋合意にまでこぎつけた立役者だ。2月4日の協定署名調印を目前に、分かれ道に迷い込んだ。

  北陸新幹線の開業後、低迷している羽田空港発着の小松線と富山線。ANA(全日空)は今月20日、3月27日からの夏ダイヤの路線便数計画を発表し、小松線と富山線を1日6往復から4往復に減便すると発表した。この発表を聞いて、JRの緻密な「2時間半」の移動選択の分かれ道にはまり込んだ、と思った。

  JRは、かつて上越新幹線で東京と新潟間で「2時間半」を切り、航空便を相次いで撤退させた成功体験がある。JRのこの「2時間半」が移動を選択するときの分かれ道になるとの乗客心理をつかみ、マーケット戦略に位置づけている。そのため、北陸新幹線の最速列車「かがやき」では、あえて軽井沢に停車させず、東京と金沢を「2時間28分」と設定した。乗客はJR東京駅にに行くのか、羽田空港に行くのかの分かれ道。最初から航空便を意識した、したたかで奥深いJRの戦略が見えた。

⇒28日(木)夜・金沢の天気    はれ

★外は大荒れ、山は動く

★外は大荒れ、山は動く

  冬将軍がやってきた。急速に発達した低気圧、住んでいる金沢では風が強く、積雪は数センチながら横殴りの雪が降っている。石川県内全域に暴風雪警報が出された。未明から風が強く、ガタガタと雨戸が揺れて、よく眠れなかった。

   昨夜、ガソリンスンダドに給油に行った。会員価格だが1リットル109円とさらに安くなっていた=写真=。原油価格が下げ止まらない。「米国指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は一時1バレル28ドル台を付け、12年ぶりの安値をつけた。原油安を受けて資源国通貨は急落」と日経新聞WEB版(19日付)は伝えている。世界の経済も大荒れだ。

   芸能界も荒れた。「SMAP」が18日夜、フジテレビ番組「SMAP×SMAP」に生出演し、分裂騒動について5人そろって謝罪し、木村拓哉が「これから自分たちは、何があっても前を見て進みたい」と述べた。ジャニーズ事務所関係者によると、SMAPはこれまで通り5人グループとして存続するという。面白のは、このときの視聴率だ。報道によると、番組全体は関東地区で31.2%だった。瞬間最高視聴率は午後10時22分の37.2%で、キムタクが「前を見て進みたい」とあいさつし、5人がそろって頭を下げた場面だった。つまり謝罪効果が視聴者の共感を言えた、ということだ。それにしても37%、とは…。

   そして「山は動いた」。戦後半世紀以上も台湾の政治をリードしてきた国民党主導の政治だったが、今回の総統選挙では民進党主席の蔡英文候補が56%の得票率で勝利した。立法委員選挙でも、113議席のうち、民進党が68議席を獲得し、第1党に躍り出た。これまで民進党が総統を勝ち取ったことがあった。2000年は国民党分裂によるもので、ある意味で「漁夫の利」だったし、2004年の総統選は接戦の末に銃撃事件が起きて僅差での勝利だった。しかし、立法委員院では少数派だった。

   馬英九政権は中国にあまりにも接近し過ぎた。台湾の人たちにとっては、「中国」という存在が身近に迫ってきて窮屈に感じ始め、学生や若者たちを中心にそのリアクションとして「台湾」を意識し、それが投票行動につながったではないかと考えている。

⇒19日(火)朝・金沢の天気   ゆき

☆2016 年頭放言

☆2016 年頭放言

   穏やかな2016年の元旦を迎えた。金沢の天気は晴れ。積雪もない。外気温は8度(午前11時)だ。青い空を見上げながら、この2016年はどのような一年になるのだろうかと想像をたくましくしてみた。

   まず海外に目を向けると、11月のアメリカ合衆国の大統領選挙だ。前国務長官で民主党最有力候補のヒラリー・クリントン氏か、「イスラム教徒入国禁止」発言で物議をかもしながらも支持を広げる共和党最有力候補のドナルド・トランプ氏か。アメリカの世論調査で、大統領選に向けた共和党の指名争いをCNNなどが先月23日に発表した数字は首位のトランプ氏が39%の高い支持率を保ち、2位のテッド・クルーズ氏の18%を大きく引き離している。CNNは民主党寄りのテレビ局で知られており、実際の支持率はこの数字より高く見積もってよい。

   民主党のクリントン氏も人気がある。調査会社ギャラップ社が先月28日発表した。世界で尊敬する人物に関する世論調査で、女性部門でクリントン氏が13%の支持を集め、男性部門ではオバマ大統領が17%でそれぞれトップだった。クリントン氏のトップは14年連続で根強い人気を見せつけた。男性部門のトップはオバマ氏だったが、2位はローマ法王フランシスコとトランプ氏がともに5%で並ぶ。ただし、尊敬と政治的な支持は次元が異なり、尊敬は現状評価、支持は期待評価の側面があり、そのときの国際的な政治、経済の状況によって、期待値が一気に膨らむ場合がある。たとえば、イスラム過激派組織「IS」が欧米でさらにテロ事件を引き起こすなど暴れるならば、トランプ氏に支持がさらに広がる可能もあるだろう。

   次は、日本の選挙だ。安保法制設立の次に安倍総理がめざすのは憲法改正だろう。国会発議は衆参両院で3分の2以上の賛成が必要だ。衆議院では自公で3分の2を上回るが、参議院でも3分の2を上回るためにはことし夏に予定される改選の121議席のうち、自公で96議席の獲得が必要となる。選挙はおそらく7月だろう。それに、衆院選挙を乗せて、「衆参同日選挙」を安倍総理がもくろんでいると、きょう元旦付の新聞各社は報じている。確かに自民側に勝算はある。5月26、27日に伊勢志摩サミット(先進国首脳会議)が開催される。議長国として世界に貢献する安倍政権のムードを一気に盛り上げ、支持率を上げて、衆参同日選挙に持っていくことを戦略に描いているだろう。ひょっとして自民圧勝ではないだろうか。

   その主な要因が、今回の選挙から始まる「18歳の投票権」だ。メディアや周囲に背中を押されるようにして、若者たちは投票場に足を運ぶだろう。若者たちの投票行動は意外にも保守的だろうと推測している。彼らは、「自分たちを戦争に駆り立てる政党に投じない」という発想は薄く、「この国を外敵から守ってくれる政党に投じる」という発想ではないか、と。当事者意識より、全体観の意識が強いのではないかと最近の若者たちを観察していて思うからだ。

   中国経済の今年はどうだろう。中国はリーマンショックのときに、4兆元(78兆円)の公共投資を実施して、強引にGDP目標を達成した。あのときの成功体験が忘れられないのだろう。今でもGDPを計画通りに動かそうとしているようだ。2012年8月、浙江省紹興市に視察に行った。バスの車中から高層マンションが林立しているのが見えた。中国人ガイドに「人は住んでいるのですか」とたずねると、「あれは鬼城ですよ」と。ほとんど住人がいない高層マンション群、投資売買目的のゴーストタウンだった。そのころはまだ不動産投資が活発だったので、お金は回っていたのだろう。あの高層マンション群は今どうなっているだろうか。低成長下では、非効率な投資に過ぎない。

   最近、中国で戸籍制度改革が動き出した。鬼城のようなマンションの在庫を一掃するための秘策だ。簡単に言えば、都市住民を増やすことだ。農民工と呼ばれる地方からの出稼ぎ労働者は農村戸籍のままで都市戸籍が取得できず、都市のマンションなどを買うことができない。そこで、農村戸籍の出稼ぎ者に都市戸籍を与えて都市住民にする。すると、不動産売買が活発化するという思惑だ。ところが、出稼ぎ者に十分な蓄えがあるのならいざ知らず、低成長下で雇用すら危ういとされる中で、物件を購入する余力はあるだろうか。低利融資でローンを組んだものの、さらなる経済の落ち込みでローン破たんは起きないだろうか、中国版リーマンショックは起きないだろうかと他人事ながら懸念している。

⇒1日(金)午前・金沢の天気     はれ