⇒トピック往来

★衆院解散、アナログな一日

★衆院解散、アナログな一日

    きょう正午、テレビ中継を視聴していて、臨時国会の冒頭で解散が行われ、バンザイの声が上がった。こんな古典的なアナログなことをいつまでやっているのかと一瞬思い、笑ってしまった。「よしっ、次も当選を目指すぞ」と心意気なのだろうが、それだったら、拍手の一本締めでよいのではないか。    

    午後2時すぎ、金沢大学で担当している共通教育科目「マスメディアと現代を読み解く」を履修した学生たちに次のようなメールを出した。「きょう臨時国会で冒頭解散があり、10月22日の衆院選挙が決まりました。メディア(新聞・テレビ)は選挙情勢や候補者の当落など分析に動いています。ここでお誘いですが、22日の投票が終わり次第、開票作業が始まります。この開票作業を双眼鏡でウオッチして当落を見極める「開披台(かいひだい)調査」というメディア独自の調査手法があります。メディアと連携して開披台調査を実施します。学生30人を募集します。この調査に参加するとメディアの選挙報道の在り様を学ぶことができます。交通費・手当も出ます。10月12日に説明会を開催しますので、参加希望の学生は集まってください。講義を履修していない学生の参加も可能です。」

   この開披台調査は双眼鏡で開票作業員の手元をみて、実際にどの候補に票が入っているのかを読んでそれをメディアの選挙本部に電話で知らせる。30人15組で多様な角度からウオッチするので候補者の得票比率を確かめるには精度は高い。とてもアナログな手法なのだが、確かな読みができる。もちろん、開披台調査は新聞社やテレビ局が各自治体の選挙管理委員会に事前に届けて行う合法的な調査である。

    午後3時ごろ、金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」で、「石川県のクマ事情とネバダ州のクマ対策」と題した講演があり聴きに行った。すると、集まった社会人メンバーの中に、民進党の支持を公言してきたA氏の姿があった。挨拶すると、A氏は「民主党時代から支持してきたが、今回の希望の党への合流はさっぱり理由がわからん。地元の支持者も気落ちが混乱してる」と嘆いた。

    地元の民進党石川県連は1区(金沢)、2区(加賀)、3区(能登)にそれぞれ元職や新人を立てる予定だった。急きょ3氏は希望の党へ公認申請することになった。10日に公示され選挙戦が始まるが、3氏は希望の党から出馬する理由を支持者に説明することから始めなければならないだろう。中には、安全保障関連法の白紙撤回を主張してきた立候補予定者もいる。希望の党への公認申請を望んでも、小池党首からポリシィが違うと排除される可能性もある。選挙に当選するためならば、政権交代のためならば主義主張を曲げてもよいのか、すっきり割り切れないアナログな心の葛藤が渦巻く様子が見て取れる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり   

  

☆金沢オリジナルな墓参り

☆金沢オリジナルな墓参り

    毎年旧盆には能登の実家に墓参りをするが、今年の幹線道路「のと里山海道」は上下ともにとても混んでいた。そこで下道(国道249号、159号)に降りたが、ここも混んでいた。通常ならば1時間30分ほどの距離だが、ことしは3時間余りかかった。3連休に盆休みが合わさって5連休、帰省と観光の車両がどっと能登に繰り出したのだろう。

    この時節いつも思うことだが、同じ墓参りでも金沢と能登・加賀では参り方に違いがある。金沢の場合は、墓所にキリコをつり下げる棒か紐がかけてあり、墓参した人は箱型キリコあるいは札キリコをかける。キリコには宗派によって、例えば浄土真宗の墓地ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏の「進上」には墓参した人の名前を記す。このキリコを献上しておくと、その墓の持ち家の人はキリコをチェックすれば誰が墓参に来たのか分かる仕組みになっている。

    これに対し能登・加賀では、キリコを持参する風習はないが、墓参りの後にその家を訪ねて仏壇にも合掌をする。直接顔を見せる能登・加賀と、名前をキリコに書き置きする加賀の違いがある。むしろ、キリコを持参する風習の金沢の方が独特のようだ。「墓参り キリコ」でネット検索をしても金沢関連の事例しか出てこないことを考えると、全国でも金沢ならでのは風習のようだ。

    ではなぜ金沢だけにとの疑問もわく。金沢での言い伝えでは、代々の加賀藩主の墓地に年寄衆や家老・若年寄らがキリコ(切籠)を献上したことが、年月を経て庶民にも広まったとする説がある。では、ほかの藩の大名にはそのような風習はなかったのだろうかとの疑問もわく。

    話を旧盆ののと里山海道に戻す。道路添いのパーキングエリアには売店がある。高松パーキングエリアで飲み物も買うために立ち寄った。ここで、「金沢オリジナル」の商品を見つけた。「金沢カレーコーラ」と「金箔七味」だ。コーラを飲んでみる。少々ソース風味が効いたコーラという感じだ。ご当地グルメの「金沢カレー」に寄り添うコンセンプトでつくられた飲み物だろう。金箔七味は七味唐辛子に純金箔が入ったもの。赤や黒の粉にキラキラと金が輝く。金箔は生産シェアは99%が金沢。金沢観光のちょっとした辛味の効いた土産だろう。念のために金箔は金沢ではうどんに入れたり、お酒に入っていたりと割と身近だ。(※写真=金沢の墓参りにはキリコが欠かせない。写真のキリコは板キリコ)

⇒14日(月)夜・金沢の天気   あめ

★避難訓練と制裁決議

★避難訓練と制裁決議

   石川県と輪島市の共同による、北朝鮮による弾道ミサイルの落下を想定した住民参加の避難訓練を今月30日に実施すると4日、記者発表した。「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練の実施について」と題した県庁危機対策課による記者発表文の内容は以下となる。

   訓練は今月30日午前9時から、防災行政無線で住民に情報伝達、同市河井町地区で住民が屋内避難を行う。これと連携した訓練として、河井町地区以外の市内小中学校の児童・生徒、教職員が屋内避難等を実施する。行政レベルでも国からのエムネットによる情報伝達を受け、県と各市町・警察本部・各消防本部との情報伝達の訓練を行う。訓練時間そのものは午前9時から10分間の予定、という。

   不可解なこともある。なぜ訓練を実施するのかという点だ。発表内容は以下。「訓練想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我が国に飛来する可能性があると判明」とある。どこかの国が弾道ミサイルは発射したという想定だが、「X国」という表現は何とも回りくどいが、外交に配慮した表現なのだろう。

    先月14日、同じ北陸の富山県高岡市でもJR高岡駅や小学校周辺で弾道ミサイルを想定した避難訓練が実施された=写真=。高岡市役所のホームページによると、訓練は、国や県、市の情報伝達系統の確認と居合わせた人それぞれの行動確認を行うことを目的とした。午前9時4分、ミサイル発射情報を携帯電話で受信した人、エムネットを受信した警察や鉄道、バス会社などからの呼びかけで知った人などが身を守るため「地下街に逃げる」「頑丈な建物に逃げる」「乗り物から降りる」など避難行動を取った。

   ちなみに、富山県庁の記者発表文でその目的を見ると、「想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我に飛来する可能性あると判明」と石川県とまったく同じ「X国」としている。石川、富山両県とも国の指導での実施なのでこのような同一表現になるのだろう。しかし、訓練を実感を持って訓練を行うというのであれば、「X国」ではなく「北朝鮮」と表現してもよいのではないだろうか。

   グローバルなレベルはもっとリアリティがある。北朝鮮が先月(7月)4日と28日の二度、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施したことをめぐり、今月5日の国連安全保障理事会で新たな制裁決議が全会一致で採択された。報道によると、その主な内容は、北朝鮮の主な外貨獲得の手段となっている石炭、鉄鉱石、海産物の輸出について、上限や例外を設けることなく一切禁止するとした。また、北朝鮮労働者の新たな受け入れも原則禁止とした。これによって、北朝鮮の総輸出額の3分の1に相当する10億㌦が減る。採択にはロシアと中国も賛成に回った。現実感のある制裁決議だ。

(※写真は高岡市役所HPより。高岡駅で屋内避難を呼びかける)

⇒7日(月)朝・金沢の天気    くもり

★「環境」という税負担

★「環境」という税負担

   毎月届く「電気ご使用量のお知らせ」に「再生エネ発電賦課金」という項目があり、今月(6月)分は1296円だった。この賦課金は使用した電力量1kwh当たり2.64円で、月々1200円から1300円を払っている。年間で言えば1万5000円ほどだ。

   再生可能エネルギー発電促進賦課金。賦課なので、全世帯に一律に割り当て負担させている。太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーの電気が普及すれば、わが国のエネルギー自給率の向上に有効で、化石燃料への依存度の低下につながるということで、負担の意義は分かる。

   今月始め、町内会で金沢市が来年2月から導入する家庭ごみ有料化の説明会があった。指定ごみ袋で、袋の容量1㍑当たり1円の課金となる。有料化の対象は「燃やすごみ」と、ガラス類や陶磁器類など「埋め立てごみ」の2種類。市の担当者の説明では、45㍑容量のごみ袋1袋を週2回出すとして、年間4000円余りの負担となる。

   使用済みの紙おむつや、庭木の剪定で出た枝葉や落ち葉などは有料化の対象から除かれている。また、事業者が出す燃やすごみと埋め立てごみはすでに有料化が実施されている。説明会で、有料化する理由について問われると、環境問題として「減量・資源化の促進」「費用負担の公平性の確保」「将来世代の負担軽減」などの言葉が節々で聞こえた。石川県内19の市町で、現時点で無料なのは金沢を含め小松、白山、野々市の4つの市のみ。ほかの15市町はすでに有料化されている。これも負担の意義は分かる。

   もう一つ、石川県には「森林環境税」がある。給与所得者の場合、毎年500円が給与から天引きされ、住んでいる市町へ納付される。会社などの法人も負担していて、年間で2億円余りになる。これが、手入れ不足の人工林の整備や、放置竹林の除去、クマやイノシシなどの野生獣の出没を抑止するための里山林の整備などに充てられている。

   石川だけでなく、日本の森林は危機的な状況といわれる。森林の所有者が高齢化し、後継者の都市生活化が進む中で所有林の管理は行き詰まっている。豪雨などにより大量の倒木が自然災害をより深刻なものにしている。さらに、イノシシやクマ、ニホンジカ、サルなどによる獣害被害は年々増え続け、被害範囲も里山だけでなく市街地にまで広範囲化している。これも負担の意義は分かる。

   年間でざっと2万円の「環境負担」だ。個々の負担の意義は理解できるが、それにしても金額がかさむ。「武士は食わねど環境税」かもしれない。

⇒22日(土)午前・金沢の天気    はれ

   

★空も世情も「梅雨前線停滞」

★空も世情も「梅雨前線停滞」

    きょうは朝から能登へ乗用車で出かけた。途中大雨に巻き込まれた。雨がたたきつけるようにフロントガラスに当たり、ワイパー回転を一番速くしても前方が見えず、しばらく車を停車し小降りになるのを待った。出発すると、しばらくしてまたたたきつけるような雨に見舞われた。3度運転を見合わせた。車を運転していて、一時的な強い雨はこれまで経験はあるが、波状的な激しい豪雨はこれが初めてだったかもしれない。

    梅雨前線停滞の影響による激しい雨の情報は、車の中でNHKのAMラジオをチェックしていた。輪島市門前で7月の観測史上最高となる1時間53㍉の非常に激しい雨となり、金沢地方気象台は石川県内の広い範囲に大雨洪水警報や大雨警報を出した。七尾市の崎山川が一部氾濫、また同市の熊木川と中能登町の二宮川で氾濫危険水位に。このため2千世帯に避難勧告が出された。

    交通インフラへの影響も大きかった。JR七尾線の金沢ー和倉温泉間は43本が運転休止。北陸新幹線では午前11時ごろ、新潟県糸魚川市の雨量計が規制値を超えたため、富山―長野間の上下線で最大1時間45分にわたって運転を見合わせ、8700人に影響が出たという。目的地の珠洲市には金沢から3時余りかかった。普段は雨でも2時間10分だ。

    話は変わるが、夜、テレビでニュースを見ていたら、きょうの夕方に東京・秋葉原では「ゲリラ豪雨」があったようだ。都議会議員選挙の選挙戦最終日、JR秋葉原駅前で街頭演説した安倍総理(自民党総裁)に聴衆の一部から「辞めろ」「帰れ」のコールが起きていた。テレビ映像では、「安倍政権を許さない」などのプラカードを掲げた集団だったので、一般聴衆というよりも組織的な動員だろう。もし、「辞めろ」コールに他の聴衆も呼応するような大きなうねりになれば、都議選どころか即刻退陣表明となったかもしれない。

    ところが、映像を見ている限り、総理が「あのように演説を邪魔する行為を私たち自民党は絶対にしません。相手を誹謗中傷しても何も生まれない。こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない」と声を高めると、演説に呼応する「そうだ」の大きな声援がわき上がり、「辞めろ」コールはかき消された。その反応を見て安堵したのか、総理はむしろ余裕の表情を見せていた。また、この街頭演説の会場に森友学園問題の籠池泰典氏の姿もあり、百万円の札束らしきものをコンニャクのようにビラビラさせて報道陣のカメラに納まる様子が映っていた。このゲリラ的なパフォーマンスには首をかしげる。

    なんだか世の中全体に梅雨前線が停滞しているような鬱屈した気分のこの頃だ。

※写真はカエルの木彫(金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」)

⇒1日(土)夜・金沢の天気   くもり

☆続々々・北ミサイルと「餓死」発言

☆続々々・北ミサイルと「餓死」発言

    26日、北朝鮮の弾道ミサイルの飛来を想定した住民の避難訓練が、石川県内では初めて、輪島市で実施される見通しとなった。当日のニュースによると、県庁として、輪島市役所に訓練の実施を打診していて、市側が同日正式に受け入れの意向を示したことで、今後、具体的な時期や場所、規模などについて本格的な調整が進められるという。これまで日本海側の自治体を中心に秋田、山口、山形、新潟、福岡などの県で実施されている。来月には富山、長崎でも行われる予定だ。

    報道によると、谷本知事は記者団に対し「これだけ毎週のようにミサイルが飛んでくるという事実があるから、どう対処するか考えなければいけない。 一度、訓練をしておいたほうがいいのではないか」と話したという。なぜ輪島市なのか。その理由について、県側は記者からの質問に対して、2007年3月の能登半島地震を経験した輪島市は住民避難の訓練をこれまで何度も実施しているとの説明だった。理由は果たしてこれか。

   ことし3月6日に北朝鮮が「スカッドER」と推定された中距離弾道ミサイル弾道ミサイル4発を発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔㍍の海上に、いずれも1000㌔㍍飛行して落下したと推測されると日本政府が発表している。ただ、能登半島沖の落下について発表したのは3日後の9日午前だった=写真=。このタイムラグについて、事実を政府が伏せていたのか、伏せていたのならそれはなぜか、以下憶測である。

    能登半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。このレーダーサイトには、航空警戒管制レーダーが配備され、日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視している。日本海は自衛隊の訓練空域でもっとも広く、「G空域」と呼ばれる。そのエリアに、しかも監視レーダーサイトの目と鼻の先に北朝鮮はスカッドERを撃ち込んだのだ。

    では、能登半島沖の落下がなぜ3日間遅れで発表となったのだろうか。北朝鮮は日本側の航空警戒管制レーダーが弾道ミサイルの「射程内」であると強調する意味を込めて撃ち込んだのだろうが、政府は当初、防衛上あえてその情報を出さなかった。が、これでは北朝鮮側に日本のレーダーの監視機能の精度は高くないと誤解を与えることになりかねないと、政府内部で議論の末に公表することにした、と推測する。何を言いたいかというと、弾道ミサイルが日本側に向けられた場合、その標的の一つが高洲山の航空警戒管制レーダーであると政府が認識しているということだ。高洲山は輪島市の中心市街地の北東部に位置し、能登町とも近い。地域行政としては上記のことを察知していても、国防上のことなので表立っては言えないのだろう。住民の不安心理をかきたてることになるからだ。

    28日、NHKニュースによると、政府は能登半島沖の排他的経済水域で北朝鮮などから来た漁船が違法操業を行っていることから、取締態勢を強化するため海上保安庁の巡視船を派遣する方向で調整に入った。とくに能登半島300㌔沖の排他的経済水域内の大和堆(やまとたい)は日本海側の有数の漁場でもある。これまでも水産庁が漁業取締船を出すなどして対応に当たってきたが、一部の漁船の乗組員が武装している恐れがあることから、海上保安庁の巡視船を派遣することになったようだ。

          空から弾道ミサイルが狙い撃ちで飛んで来る。海には違法操業の漁船が武装してやってくる。しかも、能登半島から200㌔、300㌔先でのことだ。そう考えると、谷本知事の「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない」発言(21日・県町長会)は自身の切迫感をついさらけ出してしまったのか。案外これが顛末ではないだろうか。

⇒29日(木)夜・金沢の天気   あめ

★続々・北ミサイルと「餓死」発言

★続々・北ミサイルと「餓死」発言

   石川県の谷本知事が県議会一般質問(22日)で答弁していたころ、北朝鮮の弾道ミサイル発射に不安を募らせている日本海の漁業者らが農林水産大臣に対して安全確保を要請する陳情行動を行っていた。

   JF全漁連(全国漁業協同組合連合会)が同日、東京で緊急集会を開催。この中で、石川県漁業協同組合の笹原丈光組合長が参加者を代表して意見表明を行い、「先月29日にミサイルが落下した日本海の海域は石川県のイカ釣り漁師が操業する漁場に近い。それでも生活のために漁に出ざるをえない」と不安を訴えた(NHK金沢ニュース)。このあと、全漁連の関係者らが農林水産省を訪れ、山本大臣に対し、▼漁業者の安全を確保するため、あらゆる手段を用いて弾道ミサイルの発射を阻止することや、▼万が一、被害が生じた場合は国が救済策をとることを要請した。これに対し、山本大臣は「北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域内に落下すると、漁業者が萎縮して、漁業が停止しかねない」と述べ、政府全体で対処したいの考えを示した(同)。

   23日朝、新聞紙面を開くと広告欄(5段)で「弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合、Jアラートを通じて屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れます」と背景が黄色の目立つ広告が目に入った。政府広報で「弾道ミサイルが日本に落下…」という文字がいろいろ想像を掻き立てる。テレビでもCM(30秒)が流れている。普通に考えれば、その緊急性が迫っているとも受け取れる。政府は予めアメリカなどから情報を得て、「6月下旬が危ない」と。しかし、露骨に情報開示をすると、国民がパニック状態に陥る。そこで、政府広報でワンクッション置くカタチで国民に周知をしている。でなければ、税金を使ってこのような大々的な政府広報を打つだろうか。まったく勝手な想像だが。

   谷本知事が22日の県議会一般質問で、自らが発した発言「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない」(21日・県町長会)を撤回した。23日、在日本朝鮮人総連(朝鮮総連)の石川、福井、富山の3県本部の役員が石川県庁を訪れ、知事あてに抗議文を提出し、謝罪を求めた。抗議文では「前代未聞の暴言であり、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺や関東大震災時の朝鮮人大虐殺を彷彿とさせる」と記している(24日付・朝日新聞石川版)。

   北朝鮮の弾道ミサイルをめぐる一連のニュースの流れをどう読むべきなのか。今回の知事発言はもともと一般の支持を得られるような内容ではない。一方でこのような報道もある。県庁にはメールや電話での意見が相次ぎ、23日午後4時時点で290件に上っている。「少し問題じゃないか」などと批判する意見がある一方、発言に賛同する声もあり、賛否は半々という(24日付・北陸中日新聞)。

   この記事に、オックスフォード英語辞書が選んだ2016年の言葉「post-truth(ポスト真実)」を思い出した。この単語は、客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞だ。ニュースは新聞、テレビだけでなく、インターネットなど多様化している。むしろ、若い世代の情報源はソーシャルメディアが多い。すると、これまでの新聞やテレビなど既存のメディアが提供する事実に対して不信感を高めることにもなるという現象が起きる。知事の発言内容より、「知事はそれだけ心配しているのだ」との同情が賛同への言葉となる。post-truthはメディアの曲がり角を表現する言葉でもある。

⇒25日(日)朝・金沢の天気   あめ

★続・北ミサイルと「餓死」発言

★続・北ミサイルと「餓死」発言

      22日午前10時から始まった石川県議会一般質問の午前の部が終わり休憩に入る。谷本正憲知事は知事室に向かう途中、議会庁舎と行政庁舎との連絡通路で報道陣に囲まれ、ぶら下がり取材に応じた。11時35分だった。

   「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない」(21日・県町長会で発言)の真意について記者から説明を求められ、知事は「県民の命を預かる立場からすると経済制裁を実効性があるものにしないといけない。ミサイル発射を止めることが大事だという趣旨だった」と述べた。さらに、別の記者から「発言を撤回するのか」と尋ねられ、知事は「撤回が要るなら撤回する」「過激派な発言は反省しなければならない」と述べた(23日付・新聞各社)。

  午後0時4分、知事室に戻り、再び本会議場に知事が入ったのは同0時52分。

  午後1時、県議会一般質問が再開され、発言に立った共産党の議員が「経済制裁の強化は必要だがその目的は対話ではないのか」「問題に向き合う姿勢においても、表現の面としても適切さを欠いたもの」などと発言の撤回を求めた。知事は「発言そのものが過激だったのは否めず、人命無視と受け止められかねないので撤回したい」と述べ、「漁業者から安心して操業できる環境をつくってほしいという悲痛な叫びが届いており、あの発言をした」と釈明した。また、自民党の議員からは「北朝鮮には拉致被害者や日本人妻など同胞も多くいる。発言には配慮を」と忠告する発言もあった(23日付・新聞各社)。

  午後4時5分、議会庁舎と行政庁舎との連絡通路で再び報道陣に囲まれ、知事は「ありがたい。忠告をしっかり受け止める」と述べた(22日付・北陸中日新聞)。

  22日午後4時までに、県公報広聴室には知事の「餓死」発言について150件の電話やメールが寄せられた。賛否いずれの意見もあるという(22日付・北國新聞)。きょう23日は在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)北陸3県の本部が知事に抗議文を渡す(22日付・北陸中日新聞)。

  谷本知事の座右の銘は「衆人皆師(しゅうじんかいし)」と聞く。自己中心的にならず、人々の声に謙虚に耳を傾けるという意味と解釈すればよいのか。

⇒23日(金)朝・金沢の天気   はれ 

☆北ミサイルと「餓死」発言

☆北ミサイルと「餓死」発言

    昨日(21日)のブログで、石川県は北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えた住民避難訓練を能登半島で検討しているとの知事の発言を伝えた。さらにこれが意外な展開を見せている。今朝の朝刊各紙によると、21日午前10時30分から金沢市のホテルで開催された県町長会の懇談会で、谷本正憲知事が北朝鮮の相次ぐミサイル発射に触れて、「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない」と過激な表現で発言した、という。これが全国ニュースにもなっているのだ。

   上記の発言の前後を精査する。知事のこの発言は、参加者から「北陸電力志賀原発(能登半島の志賀町にある)がミサイルで狙われたら」との質問に答えたもの。発言後に、「挑発行動が止らない現状は国際社会の対話のによる圧力が限界に来ている、効果的でない」と指摘した上で、「北朝鮮の国民には申し訳ないが、生活に困窮するくらいの経済制裁で『今のリーダーではもうダメだ』と考えてもらう必要がある」と述べた(北陸中日新聞)。

    県町長会の会合の後、午後3時45分、県庁で報道陣から「餓死」発言の真意を問われた知事は「北朝鮮にはとんでもないリーダーがいる。北朝鮮国民を生活困窮に追いやれば内部から崩壊する。国民が痛みを感じる制裁を加えないといけない」と説明した。「過激な言葉にならざるを得ない」と述べ、「餓死」発言を撤回することはしなかった。それどころか、知事はミサイル対応訓練を挙げて、「われわれは避難訓練までしなければならない。これ自体、おかしな話。北朝鮮のやり方は暴挙をはるかに超えている」とむしろ非難の語気を強めたのだ。

    北朝鮮がことし3月6日に同時発射した弾道ミサイル4発のうち1発は能登半島から北に200㌔㍍の日本海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方300-350㌔㍍に落下している(政府発表)。日本海と接する地域では北の脅威は現実になっており、知事発言に共感する部分もある。ただ、発言内容を吟味すると矛盾点がある。

    北朝鮮を兵糧攻めにする手段を日本が握っているわけではない。つまり、実行不可能なことを知事は発言しているのだ。「国民を餓死」という発言も人道上で問題がある。逆に北朝鮮はあと200㌔、ミサイルの距離を延ばせば能登半島に届く。実行可能なのだ。今回の知事発言を逆手にとって、北のリーダーが「わが人民を愚弄した。許せん」と能登半島に向けて発射ボタンを押さないか、むしろその方が不安である。

⇒22日(木)朝・金沢の天気  くもり

★北のミサイル、このタイミングの意味は

★北のミサイル、このタイミングの意味は

  今朝(8日)のテレビニュースによると、北朝鮮が複数の飛翔体を発射した模様だ。8日朝、北朝鮮の東部の元山付近から北東の日本海に向けて複数の飛翔体を発射した。韓国軍は地対艦ミサイルと推定していると伝えている。日本政府は北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)やエムネット(緊急情報ネットワークシステム)で国民に伝達するとしているが、現時点ではそうしたメッセージは出ていない。とうことは、朝鮮半島の近海に向けて発射したようだ。

   韓国軍が分析しているように、これが地対艦ミサイルということになれば、地上から敵艦艇を攻撃するミサイル、つまり、沿岸防衛が目的で、上陸作戦や海峡から陸上に近づく敵艦艇を攻撃するものだ。目標設定は定かではない。ただ、日本海で原子力空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」の2隻が今月1日から3日までの日本の自衛隊と共同訓練を行った。これを想定しての北朝鮮の発射だったのか。しかし、報道によると訓練を終えた2隻の空母は日本海をすで離れた。ロナルド・レーガンは沖縄東方の海域で海上自衛隊との訓練を続けている。

  北朝鮮はすでに去ってしまったアメリカの原子力空母に向けて、デモンストレーションとして発射したのだろうか。先月、3種類の新型弾道ミサイルの発射実験を相次いで実施し、ミサイル開発を加速させる姿勢を示していた。これに対し、今月2日に採択された国連の安全保障理事会の新たな制裁決議では、弾道ミサイルの関連団体・個人が制裁対象に加えられていている。北朝鮮は今回の発射で、こうした制裁圧力に屈しない姿勢を改めて示したとでもいうのだろうか。それにしてもタイミングにずれている。あるいは、あえてタイミングをはずしたのだろうか。(※写真はアメリカ海軍のホームページより。6月1日の日米の共同訓練の模様)

⇒8日(木)朝・金沢の天気    あめ