⇒トピック往来

☆タカサゴユリは敵か味方か

☆タカサゴユリは敵か味方か

   わが家の庭にタカサゴユリ(高砂ユリ)が咲き始めた。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」の花の美しさは見事だ。ヤマユリのような高貴な香りはないが、人目をひく花だ。

    タカサゴユリをよく見かけるのは斜面地で、日陰でも日なたでも同じように咲いている。肥料分の少ない斜面地でもすくすくと繁殖するチカラ強い植物である。植えた覚えはないので、おそらく種子が風に乗ってやっきて、わが家に落ちて育ったのだろう。旧盆が過ぎたこの時節は花の少ない季節で、茶花として重宝している。雑草の力強さ、そして床の間を飾る華麗さ。なんとも、したたかなタカサゴユリではないか。 

    しかし、立場が異なればタカサゴユリは外敵、目の敵だ。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。侵入生物、まるでエイリアンのようなイメージだ。これによると「和名」はタカサゴユリ、 ホソバテッポウユリ、 タイワンユリ、「学名」はLilium formosanum、「英名」はFormosa lilyだ。「自然分布」は台湾で、「生息環境」は荒地、道端、堤防、高速道路法面、温度選好性、亜熱帯~温帯とある。「繁殖生態」は風媒花、自家受粉可、種子を大量に風散布、 繁殖期:花期は7~9月。ここからが敵対的な表現だ。「生態的特性」として、日当たりの良い法面や道路わき、空き地などに侵入する、とある。「侵入経路」として、観賞用として導入、高速道路法面などでよく見かけるようになった、と。「侵入年代」は1923~1924年、「影響」として、在来種と競合、ウイルス媒介、交雑、影響を受ける生物:在来植物とある。

    「防除方法」は緑化資材にしない、抜き取り刈り取り。面白いのは「備考」だ。「近年各地で繁茂しているが花がきれいなためなかなか駆除されない。少なくとも外来種であることを周知する必要がある」と。そのきれいな容姿に国民はだまされてはいけない。「侵入生物」であることをもっと宣伝して駆除せねば、との苦々しい思いが伝わる文章ではある。

⇒22日(木)午前・石川県珠洲市の天気     あめ     

☆夏の甲子園、星稜レジェンド

☆夏の甲子園、星稜レジェンド

   竹を割るときは、ナタで最初の一節を勢いよく割ると、後は一気に割れていく。これを「破竹の勢い」と言う。甲子園球場で行われている夏の甲子園(第101回全国高校野球選手権大会)準々決勝、金沢市の星稜高校はきのう18日、4本のホームランと22安打で仙台育英を17対1で下し、20日の準決勝にコマを進めた。前日17日の三回戦では智弁和歌山に延長14回でサヨナラ勝ちをしていて、まさに破竹の勢いでの連勝だ。

   これまでの星稜は敗れて伝説を残してきた。40年前、1979年の第61回大会の三回戦で延長18回の死闘を箕島(和歌山)と演じ、敗れた。箕島はこの年の春のセンバツ大会で優勝していて、まさに春夏連覇がかかっていた。その箕島を最も苦しめた存在としての星稜だった。もう一つ、負けて名を上げた試合が1992年の第74回大会の二回戦の明徳義塾(高知)戦。星稜の4番・松井秀喜選手に対しては5打席連続の敬遠だった。松井選手は春夏含め4回甲子園出場で、高校時代の公式試合でホームラン60本を放っていた「怪物」だった。朝日放送の実況アナウンサーが「勝負はしません」と声を張り上げた。連続5敬遠が彼の名を一躍全国区に押し上げた。

   このとき、私は金沢のテレビ局で報道デスクをしていて、高校野球において勝利至上主義でよいのかとのテーマで特集を何度か組んだ。松井選手が逆境に強いとの印象を持ったのもこのころだった。父親の昌雄氏に何度か取材した。息子にこう言い聞かせて育てたそうだ。「努力できることが才能だ」と。無理するなコツコツ努力せよ、才能があるからこそ努力ができるんだ、と。松井選手がプロ入りしてから、ホームランの数より、むしろ連続出場記録にこだわったのも、プロとは本来、出場記録なのだと見抜いていたからなのだろう。

   それにしても高校野球は何かと話題を提供してくれる。夏の高校野球の岩手大会決勝で、県立大船渡の163㌔の右腕投手が肘の違和感を訴えていたので、監督が登板を回避した。球場では怒りのヤジが飛び交い、学校にまで抗議電話が殺到した。安全確保か勝負をさせるか、その是非が議論が今でもくすぶっている。話が横にそれた。星稜がベスト4に入ったのは1995年の第77回大会で、24年ぶりだ。20日は中京学院大中京(岐阜)との戦い。星稜には新たなレジェンドをつくってほしいと願う。(※写真は、星稜のベスト4入りを報じる19日付の朝刊各紙)

⇒19日(月)朝・金沢の天気    はれ 

★熱く不気味な「8月15日」の光景

★熱く不気味な「8月15日」の光景

    それにしても風が熱い。台風10号の接近でフェーン現象の影響で金沢は猛暑だ。能登半島の中ほどにある志賀町では午後2時ごろ、石川県内で観測史上最高となる40度を記録したと先ほどテレビが報じていた。このニュースを聞いて、きょう夕方からの庭の草むしりはやめにした。この危険な暑さで熱中症になろうものなら、「いい年をして、身の程知らず」と言われそうだ。

    熱波の次は大雨になりそうだ。台風10号が日本海に出て、きょう夜からあす16日昼前にかけて、雷をともなって激しいく雨が降る見込み。あす午前6時までに加賀地方で150㍉、能登地方で120㍉の予想。その後、さらに17日午前6時までの24時間に降る雨の量は加賀・能登ともに100から150㍉の見込み、とニュースは伝えている。ちょっと待てよ、17日は学生たち40人と輪島市の黒島天領祭という祭りに参加する予定でいる。豪華絢爛な曳山が街を練る祭りだ。台風よ早く去れ、と心で念じている。

     台風も気になるが、終戦の日の「8月15日」も気になる。政府主催の全国戦没者追悼式(東京・日本武道館)で、安倍総理は「いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも決して忘れません」「戦争の惨禍を二度と繰り返さない、この誓いは昭和、平成、令和の時代においても決して変わることはありません」と淡々と式辞を述べた。韓国の文在寅大統領は日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で「今でも日本が対話と協力の道に出てくるなら、我々は喜んで手を握るだろう」と演説した(韓国・中央日報日本語版)。徴用工判決など歴史問題は輸出管理厳格化のホワイト国除外で対話を優先をしたいとの演説だろう。

    それにしても、北朝鮮が短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返していることについて文大統領はなぜ触れなかったのだろうか。今月24日に自動更新するかどうかの期限を迎える日本と韓国の安全保障上の協定「GSOMIA」についても何も触れていない。ある意味で不思議な8月15日の光景だ。

    最後は東京株式市場だ。全面安の展開で日経平均株価は前日14日より249円安い2万405円。ラインとされる2万円まであとわずかだ。14日のニューヨーク株式市場ダウが800㌦安い2万5479㌦と、値下がり率が実に3%を超えことが直撃した。世界経済の減速懸念が一段と強まったことが背景にあるが、投資家の心理は冷え込んでいるようだ。(※写真は、15日午前8時ごろの金沢の空。不気味な雲が覆う)

⇒15日(木)夕・金沢の天気     くもり

☆ビートルズ大学 「ハッピ・コート」の衝撃

☆ビートルズ大学 「ハッピ・コート」の衝撃

    イギリスのロックバンド「ザ・ビートルズ 」が来日したのは1966年6月29日だった。当時小学6年生だった私自身も少なからず影響を受けた。音楽に興味がわいていたころで中学生になり、ブラスバンド部に入った。トロンボーンを始めた。そして、2年生でエレキギターとドラムによる独自のバンドを結成したのだ。バンド名を「Bombs」とした。激しい音を出すので、「爆弾のようなバンドだ」と周囲からなじられ、bomb(爆弾)をバンド名にした。だた、ビートルズのように歌えるボーカルがいなかったので、ザ・ベンチャーズのインストゥルメンタル・サウンドにのめり込んでいった。そんなことを思い出しながら、今月3日に金沢市で開講した「ビートルズ大学」の講義を聴いてきた。

    「学長」は日本におけるビートルズ研究の第一人者で音楽評論家の宮永正隆氏=写真・上=。宮永氏は金沢市出身で、長らくオランダで家族と住んでいたが故郷に戻ることになり、金沢大学のオープンアカデミーの講座として「ビートルズ大学」を開講されることになった。場所はJR金沢駅西口から歩いて3分ほどにある金沢大学駅前サテライトの3階にある。土日祝に開講する。1講座50分で午前から夕方まで開講している。

    開講初日だった3日は午前10時20分から夕方午後5時15分まで、6講座をどっぷりと聴講させてもらった。語りで映像を交えた講義で、この日は40名余りが聴講した。居眠りしている人はいなかった。むしろ、体を揺らしながらビートズルの曲を楽しんでいる人もいた。冒頭のビートルズの来日に関する講座「ビ-トルズ来日学」ではビ-トルズが滞在した5日間のエピソードが語られた。講義の部屋にはビ-トルズが来日したときにJALフォーストクラスで配れらた記念品の扇子(俵屋宗達の画、本阿弥光悦の書)と同じ扇子=写真・下=や、武道館での公演の楽屋で使用されたコーヒーカップなどが展示された。これだけでも、どことなく当時の雰囲気が漂うから不思議だ。

     1966年6月29日午前3時39分に一行は羽田空港に到着した。実は台風の影響で11時間遅れだった。この時、タラップを降りた4人が羽織っていた法被にもエピソードがあった。宮永氏は当時法被を着せたスチュワーデスにインタビューしている。スチュワーデスには降りるときに法被を着せるという特命があった。何しろ「JAL」のネーム入りの法被だ。でも強制的に着せるわけにはいかない。そこで、臨機応変で対応してくれそうな人はジョン・レノンではないかと直感し、本人に「ハッピ・コートを着ていただけませんか」と頼んだところ率先して着てくれ、ほかの3人も追随したのだという。この「ハッピ・コートの演出」で来日のムードが国内でも一気に盛り上がった。

      講義では、こうしたビートルズにまつわる知られざるエピソードを宮永氏が取材し、その意義や音楽シーンに与えた影響について丁寧に語っている。

⇒7日(水)朝・金沢の天気      はれ
    

★「隠居」という人生の深淵

★「隠居」という人生の深淵

  「四畳半で隠居生活を送る」。ひょっとして人生の最高の贅沢かもしれないと思い勉強会に参加した。きょう(28日)富山市で開催された「茶の湯文化にふれる市民講座」(主催:表千家同門会富山県支部)。講師は歴史学者(日本文化史・茶道史)の熊倉功夫氏でテーマは「家元の代替わりと隠居」。昨年2月に表千家が14代家元・而妙斎(じみょうさい)から15代・猶有斎(ゆうゆうさい)に引き継がれたことからこのタイトルになったようだ。家元の隠居はどのような人生スタイルだったのか。

  茶道の流派のうち、三千家(さんせんけ)は表千家・裏千家・武者小路千家を総称する呼び名で、その三千家の祖が千利休の孫の宗旦(そうたん)であることは知られる。祖父の利休が豊臣秀吉により自刃に追い込まれたことから、自らは大名との関わりを避けたといわれる。「懸念(けんねん)の病(やまい)」、いわゆる心配性でノイローゼ状態だったともいわれる。大名というスポンサーがいないので清貧だった。「収入がないので利休の道具を売って暮らしていた」(熊倉氏)。

  その分、宗旦は侘び茶の精神を磨き上げた。隠居生活は4畳半の住まいで、2畳の広さの茶室だった。宗旦が80歳のときに描いた「茶杓絵賛」がある。「チヲハナレ ヤツノトシヨリ シナライテ ヤトセニナレト クラカリハヤミ」(乳離れして、八歳から(茶の湯を)習ってきたが、八十歳になっても、暗がりは闇である)と。茶道の暗中模索の心境が生涯続いたと表現している。

  代は飛ぶが、8代家元・啐啄斎(そくたくさい)は8歳で父の7代・如心斎(じょしんさい)を亡くし、父の高弟たちに家元として必要な知識を教えられた。40代半ばに京都の天明の大火(1788)で伝来道具を残して全てを失い、再興に全力を注ぐことになる。還暦60歳で9代・了々斎(りょうりょうさい)に家元を譲り、宗旦を名乗った。「木槿(むくげ)にも恥す二畳に大あくら」という句を残している。隠居生活は畳が2畳があれば十分だ、「一亭二客」の茶の湯を十分に楽しめると。火災を経験した人物の諦念というものを感じさせる。  

   幕末から明治維新という大変革のときに10代・吸江斎(きゅうこうさい)、11代・碌々斎(ろくそくさい)は生きた。吸江斎は幼くして千家に入り、家元を襲名した。大津絵の「鬼の念仏図」というユーモラスなタッチで描かれた絵がある。吸江斎筆の「不苦者有智」が賛がある。「福は内」の当て字である。その意味は「苦しまざる者に智有り」。その意味をかみしめると実に哲学的である。時代を生き抜く知恵があれば不安から解き放たれる、と。吸江斎は38歳で子の碌々斎に代を譲り隠居号・宗旦を名乗るが、43歳でその生涯を閉じる。

    碌々斎は天保8年(1837)に生まれ、19歳で家元を継ぐ。31歳のときに明治維新の時代の大波が押し寄せ、京都から東京に遷都。混沌とした世情の中で茶の湯も苦難の道を歩むことになる。大名というスポンサーを失ったことは言うまでもないが、追い打ちをかけたのが文明開化だった。時代の価値観が和の伝統文化から西洋文明へと向かう。当時の財閥の支援もあったとされるものの、家元は全国を行脚し、神社仏閣などで献茶式を行うことで茶の湯の普及にいそしんだ。この努力が地方の茶人とのコミュニケーションの場を創り出し、茶道復興の道筋をつくる。56歳で隠居して父同様に宗旦を名乗る。しかし、その直後、家元の屋敷が火災に遭う。74歳で生涯を終える。

   講演で聴いた家元の隠居スタイルは実にリアリティのあるものだったが、もちろん、すべてが苦行続きだったわけではないだろう。話は現代に戻る。「生涯現役」という言葉もあり、隠居という言葉自体が時代遅れかもしれない。熊倉氏は講演の最後に「会場のみなさん、楽隠居されてはいかがですか」と参加者に投げかけた。楽をするためにあえて隠居するという考えもあるだろう。また、苦を背負い込んで人生を全うすることこそが人生を楽しむという生き方と考える人もいるだろう。そして最後に「即今(そっこん)」という言葉を付け加えた。「今という瞬間を大切に生きましょう。今日庵、不審庵という茶室名は今を生きてこそという生き方を問うています」。胸に刺さる一言だった。

   で、自身はどうするのか。4畳半の隠居生活で茶を点てる。同好の士が集えばそれでよい。隠居は楽しい。あとは何も考えない、か…。

⇒28日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆政局の地鳴りが聞こえるか

☆政局の地鳴りが聞こえるか

   おそくら深夜にも大勢が判明するのだろう。自民と公明とで改選124議席の過半数63の確保が確実になった。しかし、自民と公明、維新による「憲法改正勢力」は改憲発議に必要な参院の3分の2(164)を維持する85議席は微妙な情勢だ。

   安倍総理はテレビ朝日の選挙特番で、「改選議席の過半数を獲得できる見通しとなっているので勝利を得た。安定した政治基盤の上で国益を守る外交を進めていけという有権者からの判断をいただいたと思っている」と語っていた。

   各地で「異変」が起きている。新潟選挙区(改選数1)で、野党統一候補で無所属新人の打越さく良氏が、3選を目指す自民現職の塚田一郎氏を破り、初当選を確実にした。塚田氏は国土交通省副大臣のとき下関北九州道路を安倍総理や麻生財務大臣のお膝元であることに引っ掛けて「忖度」発言したことで起きた国会での騒動の責任を取って辞任している。

   れいわ新選組が比例選特定枠で出馬した重度障害者の舩後靖彦氏の初当選を確実にした。舩後氏は全身の筋肉が動かなくなる難病のALS・筋萎縮性側索硬化症だが、これまで会社経営に参画している。支援者が代読して、「なぜ私が立候補しようと思ったかというと、自分と同じ苦しみを障害者の仲間に味わわせたくないと考えたからだ。ボクという人間を見て、必要な支援とは何かを今一度、考え直してもらえる制度をつくっていきたい」と述べていた。感動的だった。寝たきりになっても声を国会に届けるということを国内だけでなく海外にも知らしめた。その存在感をぜひ国会で示してほしい。

   初陣はならず。静岡選挙区(改選数2)で現職2人に挑んだ、徳川宗家19代目で立憲民主の新人、徳川家広氏は敗戦だった。

   結果として、「安倍1強」の政治基盤は崩れずに維持する。自民の単独過半数の維持は厳しいが、連立を組む公明への配慮をしながら今後も政権を持続するだろう。衆院解散という選択肢をフリーハンドで握りながら、今後も政権運営に当たる。それにしても、参院選での野党の存在感はなかった。「立憲は22議席」との議席予想の読みもあったが、れいわ新選組の方が勢いがある。その風向きを読んでか、選挙特番で各社は安倍氏の次にインタビューしたのはれいわの山本太郎氏だった。

   今後野党の再編が本格化する。それが次なる政局へと展開する。今回の参院選が政治の大きな節目ではないだろうか。政局の地鳴りが聞こえ始めたような気がする。(※写真:21日午後21時15分、金沢市営中央市民体育館で開票作業が始まった)

⇒21日(日)夜・金沢の天気     くもり

★令和最初の国政選挙

★令和最初の国政選挙

         きょう(4日)参院選が公示され、立候補の受付が午後5時で締め切られた。報道によると、選挙区と比例代表合わせて370人が立候補した。夕刊の見出しをチェックすると、「安倍長期政権に審判」など政権に対する評価や消費税率引き上げの是非、それに年金制度や憲法改正などが争点だ=写真=。とにかく17日間の選挙戦に入った。

   全国45の選挙区には74人の定員に対し215人が立候補。政党別では自民党49人 、立憲民主党20人、国民民主党14人、公明党7人、共産党14人、日本維新の会8人、社民党3人などの既成政党のほかに、れいわ新選組1人、安楽死制度を考える会9人、NHKから国民を守る党37人、オリーブの木6人、幸福実現党が9人、労働者党6人 、諸派1人、無所属31人などとなっている。面白いのは、争点を1つに絞った、いわゆるシングルイシューの政党が目立っていることだ。

   NHKから国民を守る党は37人が立候補し、比例代表(定員50)にも4人が届け出ている。受信料を支払った人だけが視聴できるスクランブル放送化や受信料を払わない人を応援・サポートするとアピールしている政治団体だが、シングルイシューだからといって侮れない。先の東京都区議選(投開票4月21日)で17人が当選するなど、4月の統一地方選挙では立候補者47人のうち26人を当選させている。これで同党の地方議員は39人になった。単一論点を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。

   同党が参院選に挑むのは初めてだ。気になるのが政見放送だ。参院比例代表選挙の政見放送を流すはNHKのみで、全国同一内容で放送する。選挙区選挙については都道府県ごとにそれぞれのNHKと民放が放送する。同党の立候補者たちが何を語るのかはシングルイシューなので想像がつくが、問題はどう語るのか、だ。指定されたスタジオでの収録なので、立候補者たちは持ち前のキャクターでどう語るのか。

   今回、安楽死制度を考える会も9人を立候補させている。安楽死は、不治の病に陥った場合に本人の意思で、医師ら第三者が提供した致死薬で自らの死期を早める。オランダやスイスは安楽死を合法化しているが、日本では安楽死に関する法律はない。超高齢化社会を迎えて、自らの人生の質(QOL)を確認して最期を迎えたいという願いやニーズは確かにある。

   参院選では立候補届け出の際の供託金が比例区が1人600万円、選挙区が1人300万円だ。一定の得票がないと没収される。令和最初の国政選挙だ。立候補者はそれぞれ「がっつり」と選挙戦を戦い、有権者のモチベーションを上げてほしい。投票行動へと走るように。

⇒4日(木)夜・金沢の天気    くもり

★「G20」 気になること

★「G20」 気になること

   あさって28日から大阪でG20サミット(20ヵ国・地域 首脳会議)が開かれる。安倍総理としては外交手腕の見せどころで、その成果を持って一気に参院選(公示7月4日、投開票21日)に持ち込みたいところだろう。G20のロゴマークは「富士山」と「桜」をモチーフに描かれている=外務省ホームページより=。

   G20を前に気になることがいくつある。「外交」問題でもつれている韓国の文在寅大統領との日韓首脳会談は行わなれないようだ。朝鮮中央日報の報道(26日)によれば、 大統領府の高官の話として、「我々は会談の準備はできているが、日本はまだ準備ができていないようだ」とし、日本側が大統領との首脳会談を事実上拒否したと伝えている。いわゆる元徴用工訴訟では韓国の外務省が日韓の企業が資金を拠出を提案したが、日本側は拒否した(19日)。日本が韓国に求める日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国が応じる可能性もない。このような状況下であえて首脳会談を持つことはかえって白ける。

   アメリカのトランプ大統領は中東のホルムズ海峡で石油タンカーなど自国船を自ら守るべきだとのツイッター(24日)で投稿した。今月13日に起きた日本のタンカー襲撃事件を意識したものだろう。日本にとってはアメリカに海上警備を頼っているのが現状で、政府内でも波紋を広げた。自衛隊法の海上警備行動(82条)では人命や財産を危機に陥れる不審船が接近してきた場合、総理の承認で自衛隊を派遣できる。海賊対処法でも対応できる。ただ、多国間で対処すること前提で日本単独の派遣は難しい。しかし、これはあくまでも日本側の都合で、トランプ氏が指摘するようにホルムズ海峡の自国船を自衛する決断が必要だろう。

   安倍総理はあす27日、中国の習近平国家主席との首脳会談に臨む。習氏が先週、北朝鮮を訪問したことを受け、今後の非核化の進め方について協議するほか、日本が目指す日朝首脳会談に向けた北朝鮮側の感触も探るのが総理の意向だろう。そのような首脳会談を前にきょうも中国海警局の船4隻が沖縄県尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域を航行していると海上保安庁が発表した。領土問題と首脳会談は別なのだろうか。

   29日にはトランプ氏と習氏の米中首脳会談が行われるようだ。先月20日、習氏は江西省にある長征記念公園を訪れ、「我々はかつての長征の出発点にやってきた。いままた新たな長い道のりが始まった」と述べたと報じられた。長征は国民党軍に敗れた中国共産党が拠点のあった江西省瑞金を離れ、2年かけて1万2500㌔を徒歩で移動しその後攻勢に転じたとされる、苦難と栄光の歴史である。習氏は米中貿易戦争の現状を長征になぞらえたのだろう。「必ず勝つ」と。その後、同省にあるレアアース(希土類元素)の関連企業を視察した。レアアースは、ハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。中国がレアアースを対米交渉のカードにする可能性は十分にある。今回のG20の最大の見どころではないだろうか。

   1年前の6月18日、大阪北部地震が発生し震度6弱の揺れが襲った。G20がつつがなく終了することを祈る。

⇒26日(水)夜・金沢の天気      はれ   

★「かが」にドナルドを誘うシンゾーの気持ち

★「かが」にドナルドを誘うシンゾーの気持ち

   2年前の2017年7月、海上自衛隊で最大の護衛艦「かが」が金沢港に寄港したので見学した。その年の3月に就役したばかりで、艦名は「加賀」に由来するとのことで、海上自衛隊の基地以外の初の寄港地として金沢港が選ばれたということだった。一般公開の日ではなく、乗艦はできなかった。基準排水量1万9500トン、乗組員470人。全長248㍍、幅38㍍の広い甲板を有するヘリコプター空母型の護衛艦だ=写真=。甲板の前方に2機、中央に1機、後方に1機の計4機のヘリが駐機していた。

   広い飛行甲板を活用して、潜水艦を探す哨戒ヘリコプター5機を同時発着させることができる。海上自衛隊の潜水艦の探知や追跡力の向上を狙ったものとされるが、具体的には、性能の向上で探知が難しくなりつつある中国潜水艦への対応を念頭に置いているといわれる。陸上自衛隊との連携も想定していて、10機のヘリが収まる格納庫には、陸上自衛隊の大型トラック50台を搭載することもできる。また、陸上自衛隊が導入した新型輸送機MV22オスプレイも発着が可能となる。

   その護衛艦「かが」を、国賓として日本を訪れているトランプ大統領はきょう28日、安倍総理とともに視察する。今回の視察は安倍氏が打ち上げている「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」を具体的に見て理解してもらおうという意図でトランプ氏を誘ったようだ。インド太平洋構想はインド洋と太平洋でつないだ地域全体の経済成長をめざし、自由貿易やインフラ投資を推進する構想のこと。これは安全保障面ともリンクしていて、法の支配に基づく海洋の自由を訴え、 南シナ海で軍事拠点化づくりを進める中国を封じ込める狙いがある。昨年2018年6月、海上自衛隊、アメリカ海軍、インド海軍による共同訓練(マラバール2018)がグアム島の周辺海空域で実施している。2017年7月のマラバール2017ではインド南部チェンナイ沖で行っている。

   ではなぜ「かが」なのか。「かが」は今年4月に適用された新防衛計画の大綱で空母化が決まっている。大綱には「日米同盟の一層の強化には、わが国が自らの防衛力を主体的・自主的に強化していくことが不可欠」と記されており、防衛力の強化の象徴的なアクティビティが空母化といえる。安倍氏はそこをトランプ氏に強調したいのだろう。

  通商だけでなく、安全保障でも一体感を示す場としての「かが」だ。ところで、安倍氏は「かが」の意味をトランプ氏から問われたら、どのように説明するのだろうか。聞いてみたい。

⇒28日(火)朝・金沢の天気    あめ

☆シンゾーとドナルドの「レアアース談義」

☆シンゾーとドナルドの「レアアース談義」

         この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(26日)で公開している。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、あの芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。米国産の牛肉のダブルチーズバーガーとあえて取材して伝えているところがアメリカのメディアらしい。

   ところで、アメリカと中国の貿易戦争が安全保障問題と絡まって複雑さを増している。今月20日、習近平国家主席は江西省にある長征記念公園を訪れ、「我々はかつての長征の出発点にやってきた。いままた新たな長い道のりが始まった」と述べたと報じられている。長征は国民党軍に敗れた中国共産党が拠点のあった江西省瑞金を離れ、2年かけて1万2500㌔を徒歩で移動しその後攻勢に転じる、苦難と栄光の歴史である。習氏は米中貿易戦争の現状を長征になぞらえたのだろう。「必ず勝つ」と。

   中国にはもう一つの思惑があった。習氏は江西省にあるレアアース(希土類元素)の関連企業を視察した。レアアースは、ハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。ハイテク技術を支えるレアアースはアメリカにとっても欠かせないが、中国からの輸入に依存している。ここで思い出す。2010年9月、尖閣諸島で海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件が起きて、中国が日本向けのレアアースの輸出を全面禁止にした経緯がある。今後、中国がレアアースを対米交渉のカードにする可能性は十分にある。

   あす27日、トランプ氏は即位した天皇陛下と外国首脳として初めて会見したあと、11回目となる日米首脳会談に臨むことになっている。ここでの日米首脳会談のタイムリーさがある。会談で数々の議題はあるが、優先課題としてトランプ氏はおそらく、中国が「レアアース輸出禁止」のカードを切ってきた場合、アメリカとしてどう対応すればよいのか、日中のレアアース問題を乗り越えた日本の経験知と対応策を教えてほしいと尋ねるだろう。そのとき、安倍氏は「脱中国化」を進言するに違いない。一つはレアアースの輸入先の分散化により、中国依存度を下げる。もう一つはアメリカ企業の研究開発力でレアアースの消費量そのものを下げる。その事例として、ホンダがレアアース不使用の磁石の開発に成功し、すでにハイブリッド車用駆動モーターとして実用化していること、などだ。

   1ヵ月後の「G20大阪サミット」(6月28、29日)では、習氏も日本を訪れる。トランプ氏とすれば、今後中国との貿易交渉で浮上するであろう「レアアース問題」に先手を打ちたいと考えるのは当然だろう。ひょっとして、米中の「レアアース問題」が日本の新たなビジネスチャンスとして浮上してくるかもしれない。冒頭のにっこり笑った2人の笑顔に次なる可能性が。

⇒26日(日)夜・金沢の天気     はれ