☆庭に咲くユリの花 同じユリでも外来種は駆除すべきか

庭のタカサゴユリの花が開き始めた=写真・上=。例年ならば処暑(8月23日)のころが開花の時季だが、ことしは5日ほど早いようだ。旧盆が過ぎた今のこの頃は花の少ない時季でもあり、金沢では茶花として重宝されている。

10年ほど前の話だが、このタカサゴユリをめぐって意見を交わしたことがある。金沢大学で教員をしていたときのことだ。金沢ではタカサゴユリを茶花として床の間に飾ることを話すると、植物の研究者が「えっ、あんな外来種を床の間に飾るなんてバカげている」と嘲笑したのだ。自身もそのときまではあまり自覚はなかったが、タカサゴユリは漢字名で「高砂百合」。日本による台湾の統治時代の1924年ごろに園芸用として待ち込まれたようだ(Wikipedia「タカサゴユリ」)。当時としては外来種という意識もなく、ユリとして日本人になじんだのだろう。そして、茶室の床の間にも飾られるようになった=写真・下=。

ところが、先の植物の研究者のように、立場が異なればタカサゴユリは外敵、目の敵だ。国立研究開発法人「国立環境研究所」の公式サイトには、「侵入生物データベース」にリストアップされている。侵入生物、まるでエイリアンのようなイメージだ。「学名」はLilium formosanum。注目したのは、「備考」だ。「全国的に分布を広げている種であり、自然植生に対して悪影響が及ばないよう、適宜管理を行う必要がある」と記載されている。ただ、以前読んだ「備考」では、「近年各地で繁茂しているが花がきれいなためなかなか駆除されない。少なくとも外来種であることを周知する必要がある」と書かれていて、苦々しさが伝わってくるような文面だった。いずれにしても要注意の植物と指摘している。

植えた覚えはないので、おそらく種子が風に乗って庭に落ちて、繁殖したのだろう。確かに繁殖力は強い。根ごと抜いてもいつの間にか生えてくる。前述のデータベースの「影響」の欄には、「植物病害ウイルスの宿主であることが報告されており、これらのウイルスを在来植物種に媒介するリスクが想定される」とあり、在来種を枯らす恐れもあるようだ。

花を見ていれば、心が和む。それを在来種に影響を与える外来種だと区別して駆除すべきなのか。ある意味悩ましいタカサゴユリではある。

⇒19日(火)午後・金沢の天気  はれ