★能登・祭りの輪~2年ぶり復活、海で乱舞する大漁祭り~

旧盆のこの時季、能登の各地では祭りが開催されている。奥能登の穴水町では海の安全と大漁を願う「沖波大漁祭り」が14日と15日の両日、能登半島地震から2年ぶりに復活した。祭りは5本のキリコが町中を練り歩き、15日には海中へキリコを担ぎ込んだ。

担ぐキリコは高さ5㍍ほど。鉦(かね)と太鼓が打ち鳴らされ、「ヤッサイ、ヤッサイ」と威勢のよい掛け声で法被姿の担ぎ手が首まで海水につかりながら大漁を祈願し巡行した。両日は35度近くの暑さで、例年だと午後2時からキリコを動かすが、ことしは暑さ対策として午後4時からに変更しての巡行となった。祭りの復活は能登半島地震で被災した能登の復興のシンボル、そんな光景でもある。(※写真・上は、穴水町の沖波大漁祭り=日本遺産「灯り舞う半島 能登〜熱狂のキリコ祭り〜」 活性化協議会の公式サイトより)

七尾市中島町で14日に営まれた「釶打(なたうち)おすずみ祭り」(新宮納涼祭)では5本のキリコのそうろくに300年以上も燃え続けている「火様(ひさま)」が点火され、祭りを盛り上げた。能登ではかつて、囲炉裏の灰の中から種火を出し、薪や炭で火を起こした。そうした先祖代々からの火のつなぎのことを「火様」と言い、就寝前には灰を被せて囲炉裏に向って合掌する。半世紀前までは能登の農家などで見られた光景だったが、灯油やガス、電気などの熱源の普及で、囲炉裏そのものが見られなくなった。同町では能登でただ一軒、その火様の伝統を守っている民家があり、今回、伝統の祭りと火様がつながった。(※写真・下は、七尾市の釶打おすずみ祭り=同)

もう一つ祭りの話。能登の夏まつりでは、それぞれの家が親戚や知人を招いてご馳走でもてなすヨバレの風習がある。その家の自慢の料理が出る。そのなかでも印象に残っているのが、魚を塩と米飯で乳酸発酵させた「なれずし」。琵琶湖産のニゴロブナを使った「ふなずし」は有名だが、能登でもなれずしは祭りの伝統食だ。

能登町のある民家を訪ねると、アジ、ブリ、アユのなれずしを出してくれた。なれずし独特の匂いがあり、なじめない人も多いという。ただ、食通にはたまらない味と匂いのようだ。アユは5年もので、家の主人はが「ヒネものです」と説明してくれた。ヒネものとは2年以上漬け込んだもの。地酒ととても合う。

能登の祭りには伝統のキリコだけでなく、祭りの伝統料理がある。この伝統を守っていこうという地元の人たちの意気込みこそ、震災からの復興を絆(きづな)で結ぶエネルギーではないだろうか。

⇒16日(土)夜・金沢の天気   はれ