何事も新しい技術や挑戦がなければ進歩というものがない。霊長類学者の河合雅雄氏を招いて開くシンポジウム(12月17日・朝日・大学パートナーズシンポジウム「人をつなぐ 未来をひらく 大学の森―里山を『いま』に生かす」)=金沢大、龍谷大、朝日新聞社共催=ではどのような新しい挑戦があるのかというと、仕掛けは「テレビ会議」である。このシステムにはいろいろな意味が可能性が込められている。
シンポジウムは京都・龍谷大学と金沢大学の2会場で同時開催だ。2つの会場を光ファイバーの高速回線で結び、中継で基調講演、そしてパネルディスカッションと進める。つまり、双方の会場がやりとりをしながら進むのだ。ちなみに、河合氏には金沢会場で基調講演をしていただく。これを同時に龍谷会場の参加者も聴くことになる。これにはテレビ局の中継という手法が必要だ。あからじめ進行のシナリオ台本を作成し、これをもとに双方の会場のカメラマンが次のシーンを想定して画面を構成していく。ちょっとした生番組なのだ。
これを収録しておけば、記録映像として使え、デジタル加工すれば教材用のDVDにもなる。もちろん、リアルタイムのストリーミング配信をすることでインターネット中継も可能となるが、今回のプログラムにはない。言いたいのは、シンポジウムにテレビカメラを入れることで、シンポジウムがさまざまにメディア化するということだ。
このテレビ会議はシンポジウムのあり様も変える。大学間で共通テーマを論じる際、一つの会場に集まる必要がないからだ。北海道と九州の大学が「ラーメンと地域経済」を論じる、とする。主催者側からすれば、一つの会場より参加者を多く集めることができるというメリットがある。もちろん一つの会場に集まる旅費などを考えた場合、コストカットできる。国立大学法人であれば、すでに大学間は光ファイバーで結ばれているので通信コストも気にする必要がない。
「テレビ会議」というと、いまテレビで流れている日本アイ・ビー・エムのCMような大手企業の会議をイメージするが、それだけでは狭い。ましてや、インターネットのためだけに光ファイバーがあるのではない。もっと大学間の授業やシンポジウムなどアカデミックに使われていい。テレビ会議システムと光ファイバーを使いこなすことでシンポジウムを面白く価値あるものに演出できるのはないか、そう手ごたえを感じている。
⇒17日(木)朝・金沢の天気 くもり