ことし6月上旬に国の特別天然記念物トキが放鳥される能登半島の羽咋(はくい)市に行くと、道路脇にトキの看板が掲げられている。かつて羽咋に飛来したトキの写真がデザインされているようだ。そして、市役所に行くと、「本州初 トキ放鳥決定 2026」の文字と田んぼを舞うトキの写真が入った懸垂幕がエントランスに掲げられている=写真、17日撮影=。街中がトキ一色のような雰囲気だ。

石川県の馳知事は先日5日の年頭記者会見でトキの放鳥について、予定している6月に加え、9月にも実施することを明らかにした。6月の放鳥は羽咋市南潟地区(邑知潟周辺)で実施される。知事の説明によると放鳥式を同市の余喜グラウンドゴルフ場で実施しする。皇族を招く予定で交渉中のようだ。放鳥されるトキは佐渡市で順化訓練を受けた個体で、15羽から20羽を予定している。こうして、放鳥に向けての段取りが具体化するにつれ、市民のテンションも高まっているようだ。
羽咋と言えばもう一つ、「UFO伝説」の街としても知られる。同市で伝わる昔話の中に「そうちぼん伝説」がある。「そうちぼん」とは、仏教で使われる仏具のことで、楽器のシンバルのような形をしている。伝説では、そうちぼんが羽咋の北部にある眉丈山(びじょうざん)の中腹を夜に怪火を発して飛んでいたと伝えられている。さらに、眉丈山の辺りには「ナベが空から降ってきて人をさらう」という神隠し伝説もある。また、羽咋の正覚院という寺の『気多古縁起』という巻物には、神力自在に飛ぶ物体について書かれている(宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」のホームページより)。UFOという歴史文化遺産を有する世界でも珍しい地域でもある。
作家の田口ランディ氏はこのUFO伝説に満ちた羽咋に滞在して、小説『マアジナル』(角川書店)を書き上げた。マアジナルは、「marginal 【形容詞】 辺境の、周辺部の、縁にある、末端の、ぎりぎりの。二つの社会・文化に属するが、どちらにも十分には同化していない、境界的な」という意味を持つ(『リーダーズ英和辞典』)。物語は、「こっくりさん」が流行した1980年代、UFOを目たという少年が中心になって少年少女6人がある日、手を取り合って輪を作り、夏の夜空にUFOが現れるのを祈った。その直後、そのうちの1人の女子生徒が消息不明となる。この夜をきっかけに、彼らの運命の歯車は少しずつ狂い始める。UFOや宇宙人を内容とする雑誌「マアジナル」編集部にたまたま入った羽咋出身の編集者がこの運命の糸をたぐり始める。すると、残りの5人の人生が再び交錯し始める…。
この小説は400ページにも及ぶ。羽咋ではそのUFOと同時にトキでもストーリ-が生まれそうだ。
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