ことし石川県でのビッグイベントと言えば、6月に予定されている能登でのトキの放鳥ではないだろうか。日時の詳細はまだ発表されていないが、放鳥する場所は能登半島の中ほどにある邑知潟(おうちがた)周辺=羽咋市南潟地区=と決まっている。本州で初となるトキの放鳥だけに注目されるだろう。

この場所は環境省の専門家による調査などを経て、決定したようだ。選ばれた理由は大きく二つある。一つは、邑知潟を中心に羽咋市南潟地区には2㌔圏内の水田面積が1185㌶あり、放鳥が予定される15羽から20羽のエサ場としても十分な広さがある。もう一つが、地形が佐渡の地形とよく似た場所とされる。潟と平野を挟むように眉丈山系と石動山系があり、トキがねぐらをつくる場所として適している。また、新潟県佐渡から飛来したとみられるトキの姿が2011年以降たびたび目撃されていて、2013年には5ヵ月間ほど住み続けたことなども評価されたようだ。(※写真・上は、輪島市三井町で営巣していたトキの親子=1957年、岩田秀男氏撮影)

かつて能登はトキの生息地だった。眉丈山では1961年に5羽のトキの棲息が確認されている。ところが、田んぼでついばむドジョウやカエルなどのエサは農薬にまみれていた。眉丈山のほかにもいた能登のトキは徐々に減り、「本州で最後の一羽」と呼ばれたトキが1970年に捕獲され、佐渡の環境省トキ保護センターに繁殖のために送られた。ところが、翌年1971年3月、鳥かごのケージの金網で口ばしを損傷したことが原因で死んでしまう。「能里(のり)」という愛称で呼ばれていたオスだった。(※写真・下は、羽咋市南潟地区の邑知潟と水田。左の山並はかつてトキが生息していた眉丈山)
こうした経緯があり、石川県と能登9市町は環境省に能登でのトキの放鳥を働きかけてきた。国連が定める「国際生物多様性の日」である5月22日を「いしかわトキの日」と独自に定め、県民のモチベーションを盛り上げてきた。そして能登9市町は「トキ放鳥推進モデル地区」を独自の取り組みとして設け、いつトキが舞い降りてもいいように受け皿をつくっている。一連の熱心な動きが環境省で評価され、ことし6月の能登での放鳥につながったとされる。
トキのゆかりの地でもある眉丈山と邑知潟に再びトキが舞う日がやってくる。能登半島地震の災害からの復興のために石川県が策定した『創造的復興リーディングプロジェクト』の13の取り組みの中に、「トキが舞う能登の実現」が盛り込まれている。トキが舞う能登を震災復興のシンボルとしたい。能登の人たちの願いがいよいよ動き出す。
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