年末恒例のベートーベンの『第九交響曲』の公演がきょう(14日)金沢歌劇座で開催され、聴きに行ってきた。石川県音楽文化協会の主催で、石川フィルハーモニー交響楽団の演奏、合唱は県合唱協会合唱団、名古屋なかがわ第九合唱団、氷見第九合唱団のメンバー。指揮者は吉崎理乃氏。昭和38年(1963)から続く公演で、63回目となる。ある意味でこのコンサートを聴くと年の瀬を実感する。

前段で披露されたのが、邦楽の名曲、吉沢検校の『千鳥の曲』。琴や三味線など伝統的なと音色とオーケストラの演奏が絶妙に響き合う。15分間の休憩の後、第九の調べが流れる。第一楽章は、弦楽器のトレモロとホルンで始まり、朝靄(あさもや)がかかったような入りだが、やがてホルンに促されるように全楽器が叩きつけるような強奏になる。第二楽章は、ティンパニーを駆使した構成で、弦楽器の各パートによりフーガ風のメロディが次第に盛り上がっていく。第三楽章は、木管楽器による短い序奏に続いてバイオリンが安らぎに満ちた音を奏でる。やがてクラリネットがそれを受け継ぎ。息の長いメロディと歌声が響く。
そして第四楽章は、「歓喜の歌」として知られる独唱と合唱を取り入れた楽章だ。管楽器と打楽器による不安げな導入部に続き、チェロとコントラバスによる会話のような演奏が入り、この後、低音弦楽器から順に高音弦楽器へ、そして全楽器による合奏へと高揚していく。聴いているうちに気分が高まっていく。

吉崎理乃氏の指揮は初めて見た。東京国際指揮者コンクール2024で第3位・特別賞・齋藤秀雄賞を受賞した気鋭の指揮者だ。きびきびとしたタクトの振りは若き才能が新風を吹き込んでいるようにも見える。コンサートは、合唱が高らかに歌い上げた後にオーケストラのみで力強く曲を閉じた。観客席からの拍手は鳴り止まなかった。
第九はベートーベンが残した最後の交響曲で、初演はウイーンで演奏された1824年5月だった。初演のとき、ベートーベンは聴力を完全に失っていて、指揮者の横で各楽章のテンポを指示するだけの役割だった。終演後の聴衆の拍手にまったく気づかず、背を向けていた。見かねたアルト歌手がベートーベンの手を取って、聴衆の方に向かわせて初めて熱狂的な反応に気が付いたという逸話が残る。初演から200年余り、時代と国を超えてこれほど人々に感動をもたらす曲はほかにあるだろうか。
(※写真・上は、第九コンサートのチラシ、写真・下は公演終了後に拍手が鳴りやまない会場の様子)
⇒14日(日)夜・金沢の天気 あめ
