☆日常生活にクマ出没 駆除に自衛隊出動という非日常

クマの駆除に陸上自衛隊が派遣された。前代未聞のことだが、まさに過疎化する日本を象徴する出来事ではないだろうか。メディア各社の報道によると、クマによる人身被害を防止するため、秋田県と陸上自衛隊第9師団(青森市)は5日、クマの捕獲に向けて協定を結んだ。自衛隊は箱わなの運搬などで県内市町村を支援する。きのうからさっそく、秋田駐屯地(秋田市)の隊員が鹿角市で活動を始めた。支援は自衛隊法100条(土木工事等の受託)などに基づき、①箱わなの運搬、②箱わなの設置や見回りに伴う猟友会員らの輸送、③駆除したクマの運搬や埋設のための掘削、④情報収集――の4項目。武器による駆除は対象外となっている。支援期間は今月末まで。

クマの市街地での出没や人身事故は秋田県だけでなく、全国的な問題となっている。近年その傾向が強まったため、政府はことし4月、クマやイノシシが市街地に出没し、建物内に立てこもったり、木の上に登ったりするなど膠着状態が続いた場合、それぞれの自治体の判断で発砲できるようにする「改正鳥獣保護管理法」を成立させた。そこで問題となっているのが、クマ対策に関わる人材の不足だ。山奥から人里に入って来るクマを途中で阻止するために仕掛ける箱わなは重さが200㌔のあり、それをクマの通り道を推測して各所に設置するというのは、人材不足で地方では手が回らない、というのが現実のようだ。

クマの出没は地方だけの話ではない。最近では「アーバンベア(都市型クマ)」と呼ばれ、市街地周辺で暮らし、街中に出没するクマも増えている。金沢市の野田山は加賀藩の歴代藩主、前田家の墓がある由緒ある墓苑だ。市街地と接しているが、供え物の果物を狙って出没する。野田山では「お供え物は持ち帰ってください」との看板が随所にかかっている。中心街にも出没する。周辺にオフィスビルなどが立ち並ぶ兼六園近くの金沢城公園で、たびたび出没したことから、捕獲用のおりを仕掛けたところ体長1㍍のオスがかかったこともある(2014年9月)。(※クマ出没に注意を呼びかける石川県自然環境課によるポスター)

環境省公式サイトの「クマに関する各種情報・取組」によると、今年度の上半期(4-9月)の全国のクマの出没件数(速報値)は2万792件だった。昨年度同時期の1万5832件を大幅に上回り、統計の残る2009年度以降で最悪のペースとなっている。これだけ出没が頻繁になってくると懸念されるのは人身被害もさることながら、動物から人に伝染する「ズーノーシス」(Zoonosis=人獣共通伝染病)ではないだろうか。人間の活動領域と野生動物の領域が混じり合いことで、間接的であったとしても野生動物との接触度が増えることで感染リスクが高まる。欧米を中心にかつて広まった感染症「サル痘」やエボラ出血熱などはズーノーシスとされる。

少々乱暴な言い方になるが、日本でもズーノーシスが起きるのではないか。感染したクマが人里や住宅街に頻繁に入ってくることで、人々に感染症をもたらすかもしれない。そんなことを懸念する。

⇒6日(木)夜・金沢の天気   はれ