国内の金の価格が初めて1㌘2万円を超えたとメディア各社が報じている。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げで金利が付かない金の魅力が相対的に高まるとの思惑から国際的な金相場が高値で推移しているという背景があるようだ。2023年9月に1㌘1万円を超えたときなど、何度かこのブログで金と金沢の関係性について述べた。以下、「☆高騰する金の価格 金を楽しむ金沢という街」(2023年9月4日付)などをベースに再録。

金、ゴールドの価値は世界共通のものだ。そして、金属であり、伸びる特性がある。それを極限まで薄く伸ばしたのが「金箔」である。 「金沢は金箔で持つ」と言われ、金沢は金箔の全国シェア98%を誇る。400年以上の伝統があるとされる縁付(えんづけ)金箔の製法はユネスコの無形文化遺産に登録されている(2020年12月)。そして、金沢では金は日常遣いでもある。金は体によいとされ、金箔を入れた日本酒、化粧品、金箔をまいたソフトクリーム、うどんもある。かつて、金沢の子どもたちが頭にたんこぶをつくると、金箔が熱の吸収によいことから膨らんだ部分にはっていた。(※写真は、金沢金箔伝統技術保存会ホームページより)
最近では「金継ぎ」が国内外で知られるようになった。東京パラリンピックの閉会式(国立競技場・2021年9月5日)でアンドリュー・パーソンズ会長が発した言葉だった。日本の金継ぎの技術について、「不完全さを受け入れ、隠すのではなく、大切にしようという発想であり素晴らしい」と述べて、金継ぎという言葉が世界でもトレンドになった。さらに、金継ぎは一度は壊れてしまった製品を修復するだけでなく、金箔を使うことでアートを施し、芸術的価値を高める。
金の価格は高騰し続けてきた。外国為替市場で円安・ドル高が進行し、円建ての国内金価格が上昇。世界景気の減速懸念から「安全資産」とされる金が選好されていることも後押ししている。こうなると金箔生産が盛んな金沢では、業者は材料入手が難しくなるのではと思ったりもする。ところが、そうではないようだ。知人からかつて聞いた話。「金箔製造業者は潰れない(倒産しない)」と。なぜなら、インゴット(地金)の価格が安いときに大量に仕入れ、高くなれば売って経営を安定させる。「良質な金を見極める目利きであり、金箔業者は金のトレーダーだよ」と知人は妙にほめていたことを覚えている。
金の価格高騰もさることながら、その金をどのように生活で使い、楽しみ、そして新たな価値を創造するか。金沢という街はそのショーウィンドーかもしれない。
⇒30日(火)午前・金沢の天気 はれ