★輪島・千枚田に実りの秋 トキ舞う棚田へ農法転換

おととい(13日)午後に能登半島の尖端、珠洲市寺家のキリコ祭りを見学して、当日夕方に輪島市の白米(しらよね)千枚田を訪れた。この日に全国のボランティアが参加する稲刈りが始まると輪島市観光課の公式サイトにあったので、日本海の夕日と千枚田の稲刈りという光景を見ることができるかもしれないとイメージを抱いていた。現地に到着すると稲は実っていて、まさに棚田は黄金の輝きを放っていた=写真=。ところが、稲刈りが行われた様子がない。

あらためて、輪島市観光課サイトをチェックすると、「13日と14日」の予定が大雨などの天候不順が予想されるため中止し、「15日から21日」と変更されていた。確かに、金沢地方気象台は輪島市に断続的に大雨警報を出していて、千枚田の稲刈りの日程もこれまでのように2日間と特定せず、「15日から21日」と幅を持たせたのだろう。

日本海を望む千枚田は4㌶の斜面に大小1004枚の棚田が広がる。2024年元日の能半島登地震では、棚田に無数の亀裂が入るなどの被害が出た。地元住民らでつくる「白米千枚田愛耕会」のメンバーが中心となって修復を進めていて、去年は120枚の田んぼを耕し、ことしは250枚で田植えを行った。そして実りの秋を迎えた。

千枚田にとってことしは大きな転機となった。2001年に文化庁の「国指定文化財名勝」に指定され、2011年に国連食糧農業機関(FAO)から認定された世界農業遺産「能登の里山里海」のシンボル的な存在だ。白米千枚田愛耕会はことしから農法を除草剤などの農薬を使わない無農薬栽培に切り替えた。これは来年6月に環境省が能登でトキを放鳥することを意識し、千枚田にトキのエサとなるドジョウやメダカなどが繁殖する田んぼづくりくりに転換したのだ。除草剤などの農薬を使わないとなると草取りなどに手間ひまがかかるのは言うまでもない。コメの収穫量も減るだろう。

それでもトキが訪れる棚田に。このため白米千枚田愛耕会では、耕作の担い手を育てるために近くの空き家にボランティアらが常駐する滞在拠点をつくる構想も進めているようだ(15日付・地元メディア「北國新聞」)。また、コメの収穫量が減ることになったとしても、千枚田の無農薬米が市場に出回れば、「千枚田のトキ米」として一気にブランド化するのではないだろうか。地震や豪雨にめげず、耕す人びとのモチベーションが上がっているに違いない。千枚田の実りを眺めながら、そんなことを感じた。

⇒15日(月)午後・金沢の天気   はれ時々くもり