★店頭に「能登ひかり」 震災・豪雨にめげず耕し続ける農家の想い

金沢のスーパーのコメ売り場には新米がずらりと並んでいる。石川県産のコシヒカリ「一粒のきらめき」は5㌔税込み5379円だ。去年、新米を買ったときは同2312円だったので、今では倍以上の値段になっている。そこで、少しだけ割安な「能登ひかり」を買うことにした。それでも5㌔税込み5163円だ=写真=。

能登ひかりは能登地域の標高が50㍍以上ある山あいで生産され、「能登はやさしや土までも」と唄われる能登の大地と気候風土で育ったブランド米でもある。早生品種で、8月下旬から9月中旬に収穫される。もともとコシヒカリの系統の能登ひかりは、米粒が大きく、粒の腹が白いのが特徴とされる。味はコシヒカリと似ていて、噛むほどに旨味が広がる。

能登ひかりにはちょっとしたドラマがある。一昔前まで能登の気候に合う品種ということで生産されていたが、モチモチ感のあるコシヒカリに押されて生産する農家は少なくなっていた。それを見直したのが、京都や大阪といった関西の寿司屋だった。「ベタベタとした粘りがない分、握りやすく、食べたときにも口中でパラッとバラけるので、寿司によいのだという」(講談社新書『日本一おいしい米の秘密』)。さらに、このバラける食感がスープ料理にも合うということで、金沢市内のレストランなでども使われるようになった。

奥能登では去年元日の能登半島地震で被災した農地が徐々に回復しているものの、同年9月の奥能登豪雨の被害を受けた水田も多い。ことしの作付面積は昨年同様に、震災前の6割程度にとどまっていることろが多いようだ。それだけに、能登ひかりのコメ一粒一粒に農家の想いが込められているに違いない。まさに「能登はやさしやコメまでも」だ。

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