「奥能登 人口5万人割れ」とメディア各社が報じている。石川県がきのう(1日)発表した県内の「人口と世帯の推計結果」によると、能登半島地震の被害が大きかった奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の人口は4万9558人となった。去年元日の地震発生からことし4月1日までの1年3ヵ月の人口推計で、5655人減り、減少率は10.24%となった。奥能登はもともと過疎・高齢化による人口減は進んでいたが、地震が拍車をかけた。
その奥能登で時代の先端を行くような試みを行っているチ-ムがある。一般社団法人「現代集落」のプロジェクト。能登の「限界集落」が「現代集落」になる可能性があるのと発想で、水や電気や食を自給自足でつくる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を「ビレッジDX」と位置付けている。金沢町家の一棟貸し民宿の経営を行っている林俊伍氏が代表理事となり、建築家らが参加している。

プロジェクトのモデル地区となっているのが、珠洲市の真浦(まうら)地区=写真=。これまで何度か現地を訪れている。去年8月に行くと、住家の庭に四角のテーブルのようなものがあった。近くの人に訪ねると、衛星インターネットの「スターリンク」とのことだった。あのアメリカの実業家イーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」のインターネット。光ファイバーによるネット環境が整った都市部や平野部などとは違い、真浦地区は回線環境が整っていない。そこで、アンテナを設置するだけで高速インターネットが利用できるスターリンクはリモートワークをする人たちにとっては不可欠との説明だった。
その真浦で今度は、自給自足の生活を理解してもらうための「モデルルーム」が完成した(メディア各社の報道)。薪ストーブでの発熱や、地下水をろ過装置した生活用水など。太陽光での発電(電力は蓄電池でにためる)もある。電力の日常使いでは、電力会社からの電気と自家発電した電気を手動で切り替えながら使う。取り組みに参加する世帯が広がることで、将来は集落全体でエネルギーをまかなう構想という。
モデルルームの披露会に出席した珠洲市の泉谷満寿裕市長は「オフグリッド化は珠洲市のモデルになる仕組み」と述べた(今月29日付・日経新聞)。オフグリッド(off-grid)という言葉は、公共のインフラに依存せずに電力や水道などを独立して確保する生活様式の意味でまさに自給自足のこと。珠洲市では地震による水道管の破損で大規模な断水を起きたことから、水源を集落単位で確保するオフグリッド化を目指している。真浦の取り組みは行政に先んじていると市長が評価した。
一社現代集落では今年度内にオフグリッドの生活を営む5世帯から10世帯の参加を見込んでいる(同)。オフグリッドは世界が注目するトレンドでもある。この取り組みが被災地、過疎化の復興の先端となるか。
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