このブログのことし5月23日付「『旅するユリ』の生存戦略」で、庭のタカサゴユリ(高砂百合)が同じ場所に何年も生育することで特定のバクテリア(病原菌)が繁殖して枯死する連作障害になってしまった、と書いた。ところが、同じ庭の少し離れた場所で繁殖していて、昨日その花を咲かせた=写真・上=。
いわゆる外来種で、4年ほど前に突如咲き始めた。花がきれいなので除去せずにそのままにしておいた。旧盆が過ぎるころ、花の少ない季節に咲く。高砂百合の名前の通り、日本による台湾の統治時代の1924年ごろに園芸用として待ちこまれたようだ(ウィキペディア)。当時は外来種という概念もなく、花の少ない季節に咲くユリの花ということで日本で受け入れられたのではないだろうか。
この花を重宝したのは、茶道の人たちではないだろうか。匂いもなく、同じころに咲くアカジクミズヒキやキンミズヒキといった花と色合いもよく、床の間に飾られてきたのだろう=写真・下=。ムクゲのギオンマモリ(祇園守)と競うように、真っ白な花が夏の強い日差しによく映える。
冒頭で述べた連作障害で枯死する植物なので、種子を風に乗せて周辺の土地にばらまいて新たな生育地に移動する。「旅するユリ」とも称される。この繁殖力の強さと広範囲性が外来種として「目の敵」にされる。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。「生態的特性」として、日当たりの良い法面や道路わき、空き地などに侵入する、とある。「侵入経路」として、観賞用として導入、高速道路法面などでよく見かけるようになった、と。「影響」として、在来種と競合、ウイルス媒介、交雑、と記されている。
さらに、「防除方法」として、緑化資材にしない、抜き取り刈り取り、とある。面白いのは「備考」だ。「近年各地で繁茂しているが花がきれいなためなかなか駆除されない。少なくとも外来種であることを周知する必要がある」と。そのきれいな容姿に国民はだまされてはいけない。「侵入生物」であることをもっと宣伝して駆除せねば、との国環研の担当者の苦々しい思いが伝わる文章ではある。
ひょっとしてこのブログは国環研の担当者から外来種の「共犯サイト」としてマークされているかもしれない。自らも含め、うつくしき花に翻弄される人の姿ではある。
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