見事な茜(あかね)色の風景だった。きょう午後5時37分、金沢の外環状道路を車で走っていて西の空に見えた=写真=。暴風雨の前のつかの間の和みの光景か。非常に強い台風19号が迫っている。あす12日は北陸も大荒れとなる見込みだ。自身が講義を予定をしていた金沢大学の人材養成事業「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」も次週に延期となった。紙面ではラグビーのワールドカップもニュージランドvsイタリア(愛知・豊田市)、イングランドvsフランス(横浜市)が中止となり、試合はドロー(引き分け)扱いとなると報じられている。確かにこの2会場は19号の直撃コースだ。
それにしてもラグビーW杯の盛り上がりはだれが予想していただろうか。W杯の開催ついての功労者は、かつて「神の国」発言で物議をかもした森喜朗元総理であることは選挙地盤でもあった石川県民が地元紙を通じてよく知っている。森氏が日本ラグビーフットボール協会の会長を務めていた2009年に今回の第9回W杯の日本招致に成功した。 当時は衆議員在任中でもあったので、「趣味のラグビーのために国費を使うのか」などと冷ややかな声も地元ではあった。政界引退後は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長を務める。ラグビーW杯と東京オリンピック・パラリンピックが成功裏に終われば、「スポーツ界の神様」と称されるかも。
森元総理のことはさておき、ラグビーについて知るとなんとグローバルなスポーツかと実感する。その国に3年以上滞在していれば、その国の選手として国籍に関係なく出場できるのだ。日本チームのメンバーはニュージーランドのトンプソンルーク、南アフリカのピーター・ラブスカフニ、オーストラリアのジェームス・ムーア、韓国の具智元ら。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だ。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じさせる。
このラグビーの在り様は、日本が取るべき将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と述べると共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。たとえば、金沢に「ニュージーランド村」や「南アフリカ村」があってもいい。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよいのではないか。茜色の夕空を見てそんなことを考えた。