小山氏は理学博士で「伊豆半島ジオパーク推進協議会」の顧問の肩書も持つ。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。同協議会はユネスコ(UNESCO、国連教育科学文化機関)が認定する「世界ジオパーク」の加盟を目指す。
伊豆半島のジオパークのキャッチフレーズは「南から来た火山の贈りもの」だ。伊豆はもともと本州から数百㌔南の海底に沈む火山群だった。それがフィリピン海プレートの北上の動きに連動して隆起して陸地化、さらに本州にドッキングする。本州との衝突で足柄山地や丹沢山地がカタチづくられた。半島化したのは60万年前、現在のカタチになったのは20万年前のことだ(同協議会発行「伊豆ジオMAP」より)。地球の恵みとしての温泉地や自然景観、年間3900万人もの観光客が訪れ、伊豆半島では62万の人々が生業を得て暮らす。小山氏の話はスケール観のあるジオ物語だった。
下田市の田牛(とうじ)海岸近くの龍宮窟(りゅうぐうくつ)=写真=を見学した。天井が円形状に直径約50㍍空き、天窓が開いたようになっている。洞窟の壁には海底火山から噴出した黄褐色の火山れきが層をなして自然の美しさを描き出している。数十万年の地球の営みが造形した海食洞。まさに、時空を超えた世界がここにある。「お見事」と自然に口ずさんだ。
南伊豆町の弓ヶ浜海岸を訪れた。ビーチは家族連れなどでにぎわっていた。「日本渚100選」に選ばれているだけあって、まさに白砂青松の景観だ。案内してくれた町役場の職員は「ことしは4年ぶりにウミガメが産卵にきました」と。その言葉だけで伊豆の地域資源の豊かさが実感できた。
⇒10日(木)夜・南伊豆町の天気 はれ