
夏安居は仏教用語。インドの夏は雨期で、仏教僧がその間外出すると草木虫などを踏み殺すおそれがあるとして寺などにこもって修行したことに始まる(三省堂「大辞林」)。雨安居(うあんご)という言葉もある。もう少し解説すると、夏は動植物たちの営みが盛んな季節なので、そんな草原や山中に人間が入ってもろくなことがない。だから夏は寺に戻り、修行をするのがよい、という意味だろう。
仏教は頭の中でつくり上げたイマジネーションなどではなく、山の暮らしの中で動植物の観察の中から、自然と人がどう共存するかという知恵のようなもの。修行僧が山にこもるのも、自然から教えを請うためだ。ところが、夏は動物や虫たちの動きが活発になるので、刺されたり、噛まれたり、暑さで体調を崩したりするので無視しない、寺に戻り修行せよということになる。いわば経験則だ。
現代風に言えば、熱中症が怖いので、外出は避け、家のエアコンで涼んで酷暑が去るのを待とう、それが自分なりの「夏安居」の解釈だ。還暦を過ぎて何事も無理しないという勝手解釈でもある。夏安居、なんて奥深く、使い勝手がよく、有難い言葉であることか。草むしりやをやめて、エアコンの効いた室内から庭を眺めながら、ウイスキーの水割りを飲んで、ついうとうとしてしまった。外気温は33度だった。
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