安倍総理にとって拉致問題の解決は政治家としての「ライフワーク」とも言える。これまでの記憶をたどる。安倍氏は小泉内閣時に官房副長官と官房長官を務めた。2002年3月に官房副長官に就任し「拉致疑惑に関するPT(プロジェクトチーム)」を発足させ、さらにその年の4月には衆参院で「拉致疑惑の早期解決を求める決議」が採択された。その年の9月にあの電撃的な小泉訪朝が実現する。当時の金正日総書記と会談し、拉致を認めさせた。翌10月には蓮池薫さんら拉致被害者5人が帰国した。さらに2004年5月、小泉総理が再訪朝し、拉致被害者の子5人が帰国した。小泉氏が総理として爆発的な人気を得たのは、郵政民営化だけでなく、何と言ってもこの拉致被害者の帰国があったというのも大きい。当時、小泉訪朝を支えた安倍氏は一貫して「日本人拉致疑惑をうやむやにして、国交正常化などすべきではない」が持論だった。影の立役者だった。
安倍氏が「小泉後継」として2006年に初めて総理になったのも、拉致問題で北朝鮮への毅然とした態度が評価されたのがきっかけだった。中国と韓国がかたくなに外交関係を拒んで改善の糸口が見えない中、安倍氏は自らのライフワ-クともいえる拉致問題で外交的な一つの成果を出したという気持ちがあるのだろう。おそらく、北朝鮮側との首脳会談、すなわち、安倍総理の電撃的な訪朝も想定しているのではないか。
今回の調査再開合意、日本と北朝鮮の状況は実に当時と似ている。2002年、アメリカはイラン・イラクと共に北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んでいた。北朝鮮はアメリカの矛先が自国に向くと思い、アメリカと同盟関係にある日本に関係改善の糸口を見出していたと当時言われた。今回も孤立化する北朝鮮の外交の糸口をこの調査再開で掴みたいのではないだろうか。北朝鮮ニュースが面白くなってきた。
⇒30日(金)夜・金沢の天気 はれ