北ベトナムとアメリカによる、いわゆるベトナム戦争の真っただ中の1974年、当時の南ベトナムが支配していた西沙諸島を中国人民軍が武力で確保し、「領土」とした。ベトナム戦争が終結した1988年には、さらに南沙諸島にも中国が進出し、統一ベトナムとの間で軍事衝突が起きた。中国は南シナ海のほぼ全域を覆うように「九段線」と呼ぶマーキングエリアを設定し、中国の主権と権益が及ぶと公言している。
南沙諸島には100もの小島があり、ベトナムや中国、フィリピンがそれぞれ施設を建て、部分的に実効支配している。今回、中国が全域を実効支配している西沙諸島の沖合に中国が海底油田の掘削装置を持ち込んだため、ベトナムが猛反発した。中国の南シナ海への進出は、石油や天然ガスの資源獲得が狙い、つまり、主権と権益をセットで確保することにあるのだろう。
こうした中国の一方的な動きに世界が批判の目を向けている。アメリカ国務省の報道官は、中国が警備艇など公船をこの海域に送り込んでいることを「挑発的で緊張を高めている」と非難した(7日)。
現在ミャンマーで開催されている、ASEAN(東南アジア諸国連合)の外相会議で、ベトナム沖の南シナ海で中国が石油掘削を始め、ベトナムの船舶と衝突していることについて、「南シナ海で現在進行中の動きは地域の緊張を高めている」として重大な懸念を示す声明を出たのは当然だろう。領有権争いに絡む全当事者に国際法の順守と平和的な解決を求める。
翻って日本と中国。中国が尖閣諸島の領有権を主張したのは1971年と言われる。1968年に尖閣諸島での海底調査で、石油や天然ガスなどの地下資の可能性が確認されて以降のことである。この南シナ海の西沙諸島付近での油田掘削の動きが尖閣諸島付近でも再現される現実味が帯びてきた。西沙諸島付近での中国の動き、これは領土問題ではなく、「資源戦争」なのだと改めて考える。
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