選挙期間中、記事では公平・平等な扱いがされているか
先の授業で選挙公示以降の新聞・テレビのメディアの公平性をテーマに講義をした。候補者を紹介する写真と記事の量・スペースの平等性など、新聞・テレビとも結構気を使っている、との講義内容だった。学生から質問があった。公平・平等とは言え、4日の公示の各陣営の模様を伝える5日付の新聞紙面で、自民の党首(安倍氏)の写真が他党の党首の顔写真より6倍もサイズが大きな写真だった。学生から「これは政権与党だからの配慮ですか」と問われ、これをどう説明しようか迷った。
新聞やテレビのメディアには、いわゆる選挙公報的に、各候補者の主張を平等、公平に扱い、有権者に対し、投票の判断材料を提供するという役割がある。テレビで言えば、放送法で公平な報道が明記されている。一方で、メディアには「報道・評論の自由」がある。メディアが考える選挙の焦点について有権者に詳しく伝え、読者や視聴者や考えてもらう役割だ。何を、どう書き、どう扱うか。それはメディアの自由裁量の範囲として認められている。メディアの選挙報道には大きくこの2つがある。
学生から質問があった写真の扱いは、後者だ。「報道・評論の自由」の範疇の中で、「安倍政権を問う」という今回の選挙構図、自民という巨大政党に対し、中小政党が乱立している現状をわかりやすく伝えたもの。まったく平等に、すべての政党を同じ大きさで扱うのなら、何の面白みもない、平板な選挙公報、あるいは選挙管理委員会のチラシになってしまう。石川選挙区には5人の候補者がいる。新聞各紙、テレビを見たり読んでいると、ニュースの価値や読者、視聴者の関心を考慮し、自民、民主、共産の主要政党の候補3人と他の諸派・無所属の候補2人とは、記事の扱いで差をつけている。しかし、その場合でも候補者の経歴紹介や候補者アンケートについては、まったく平等に扱っている。諸派や無所属の候補者であってもできるだけ公平に、できるだけ不平等な扱いをしないように、気を配っている。
そこで、学生が質問した紙面を見ると、確かに安倍氏の写真は他の党首の6倍の大きさだ。しかし、よく見ると背景とポーズが入っているので大きくなっている。顔のサイズは他の党首とは変わらない大きさなのだ。これだと他党から不公平ではないかとクレームが来たとしても「顔のサイズは同じ」と言い張れる。微妙にして、足がすくわれない写真の掲載の意図である。質問した学生も「う~ん。なるほど」とうなった。この件、公平か、不公平かの議論より、選挙報道の面白さ、妙味とした方がよさそうだ。
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