石川県は高齢者が子供と暮らす割合が高い方だ。厚生労働省の平成24年版「国民生活基礎調査(平成22年)」によると、「65歳以上の者の子との同居率」は全国平均42.3%に対し、県別では石川51.9%、もっとも高い山形は65.1%となる。にもかかわらず増えている、と。新聞記事を続けよう。石川県には65歳以上の高齢者が27万5千人(2011年10月現在)、うち一人暮らしは3万6千人(2010年10月現在)、高齢者夫婦のみの世帯は4万4千世帯(同)である。そうした中で、高齢者の孤独死が年々増えている。石川県警では、一人暮らしの高齢者の変死事案は2003年には126人、2010年に203人、2012年では11月末現在で223人となった。
高齢者が子供と暮らす割合が比較的高い石川県でもこの通りだ。ましてや、東京や大阪など大都市圏ではかなりの数でお年寄りの孤独死が増えているだろうと想像する。石川県は人口比率で全国の1%だ。ここから類推すると、全国では2万2千人ほどの高齢者の孤独死があるのではないか、と。
ただ、この記事でいくつか物足りない点がある。記事では「高齢者の孤独死」としているが、警察は年齢に関係なく「変死」として扱い、幅広い年齢別の孤独死の統計も持っているはずである。東京都監察医務院が発表した「東京都23区における孤独死の実態」のデータがある。平成17年の統計だが、孤独死の年齢と人数に男女差がある。男性の孤独死は45-49歳で100人を越え、ピークは60-64歳の404人である。65歳以上の孤立死の人数は低下する。ところが、女性の孤独死では70歳以降で100人を越え、80-84歳でピークの201人となっている。つまり、東京都と石川県で違いあるかもしれないが、男性の孤独死は60-64歳がピークなのに、記事では、「高齢者」つまり65歳以上と年齢で区切っているので、このピークの数字が記事では分からない、反映されてない。
記事の趣旨は、石川県が昨年3月に「地域見守りネットワ-ク」を発足させ、民間事業者(新聞、郵便、電気、ガスなど)が個人宅をを訪れた折に郵便物などチェックして行政に知らせるなど、高齢者の孤立化への対応に乗り出したとの内容だ。これは提案なのだが、孤独死を高齢者(65歳以上)に限定せず、地域で孤独死が増えていることそのものを問題視して、「孤独死防止ネットワーク」として地域全体で見守る必要があるのではないだろうか。その方が社会の実態が見えてくる。
ちなみに、平成18年の東京都23区の孤独死は老若男女合わせて3395人に上り、1日10人前後だ。ついでに、死後発見の平均日数は男性12日、女性6.5日と孤独死の男女格差も歴然とある。孤独死の理由は病死、自宅内のけがなどさまざまだが、生前の関与は難しいものがある。「人間の尊厳」として地域社会ができることは、早期に発見することではないか。孤独死には自殺、災害死、赤ちゃんの突然死などは含まれていない。
※写真は、イタリア・フイレンツェ市にあるサンタ・クローチェ教会の壁画
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