★「場」立ち考~番外編

 今月4日付のブログ「『場』立ち考~上」で、「高知市内の街角などは観光キャンペーン『リョーマ(RYOMA)の休日』のポスターであふれていた。リョーマは幕末の志士、坂本龍馬のこと。オードリー・ヘプバーン主演の映画『ローマの休日』とひっかけている。」と書いた。翌日(5日付)の読売新聞の社会面で「『リョ-マの休日』はリメーク作?」で問題記事が掲載された。

      ~「リョーマの休日」の著作権を考える~

 その記事を要約すると。問題のポスター=写真=の図柄で、坂本龍馬姿の尾崎正直知事がスクーターに乗る写真が、静岡県焼津市の彫刻家、岩崎祐司氏の作品に「イメージがよく似ている」と、高知県に指摘があった、という。岩崎氏の木彫作品は龍馬がバイクに乗り、題も「リョーマの休日」だ。一方、県がポスターを制作した経緯はこうだ。県が観光特使に任命したタレント・大橋巨泉氏から「女性の憧れは昔はローマの休日、今はリョーマの休日」と発案があったという。

 県がことし1月にキャンペーン内容を公表した直後から著作権上の問題指摘が寄せられたため、県では弁理士と協議した上で「商標登録されておらず、著作権上の問題は生じない」と結論づけた。その後、3月にポスターデザインを決定した。ではなぜ、スクーターかというと、映画「ローマの休日」は、アン王女(オードリー・ヘプバーン)がローマ訪問中に公務を抜け出し、新聞記者(グレゴリー・ペック)と過ごした一日のロマンスを描いたもの。新聞記者が運転するスクーターの後部座席にアン王女が乗って街を巡るシーンが映画のタイトルを表すようなシーンなのだ。

 果たしてこれが著作権違反になるかどうか…。映画「ローマの休日」(1953年作品)に関しては、日本で有名な著作権裁判「1953問題」がある。アメリカでは、この映画は作品中(オープニングタイトル、エンドロールなど)に著作権表記がなかったため、公開当時のアメリカの法律(方式主義)により権利放棄とみなされ、パブリックドメイン(知的財産権が誰にも帰属しない状態)となった。日本では、平成15年(2003)の著作権法改正で保護期間が50年から70年になったが、1953年の作品は2003年(平成15年)をもって著作権の保護期間が終了したものとされた。

 このことから2004年(平成16年)以降、「ローマの休日」などは格安DVDとして販売された。その後、この映画を配給したパラマウント社は日本では著作権が存続しているとして販売差し止めと損害賠償を求めて争っていたが、2007年(平成19年)12月の最高裁により著作権は消滅しているとの確定判決が下された。これが「1953年問題」と呼ばれた。この判決で、日本では「ローマの休日」はパブリックドメインとして扱われることになる。

 以上の前提で考えると、「ローマの休日」をひっかけた、いわゆる駄洒落のタイトルや、映画の名シーンを模した作品にまで著作権が発生するかとなると、ましてや商標登録などしていないのであれば、作品の「リメーク」、あるいは言葉は悪いが「パクリ」には相当しないのではないか。

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