☆元旦オムニバス

 <特別手配の容疑者が出頭、なぜだ>
 元旦未明からメディアは騒がしかった。オウム真理教の特別手配容疑者・平田信容疑者が、大晦日に警視庁丸の内警察署に出頭し逮捕されたというニュースだ。能登半島の先端の小さなバス停の待合所にも特別手配というチラシが貼ってあり、平田容疑者は「有名人」だ。17年も逃亡していて、いまさらなぜ出頭かとの憶測があれこれと。あるメディアは、捜査員への受け答えでは教祖だった松本智津夫死刑囚に今も帰依しているような様子はないといい、別のメディアは、年明けにも執行されるかもしれない教祖の死刑を遅れせるために平田容疑者が出頭したのではないかとの説を立てている。所持金(3万円)があり、身なりもそれなりで疲れた様子もないので、逃亡をサポートする組織が背後にあり、計画的な出頭ではないのかとの推測だ。関与したとされる国松孝次元警察庁長官銃撃事件(1995年)などの全容解明が待たれる。狙撃したのは誰だ。

 <初もうで、辰年は浮くか沈むか> 
 元旦の朝は、金沢・兼六園にある金沢神社に初もうでに家族と出かけた。時折晴れ間ものぞく小春日和だった。列につくのだが、近年の傾向だとそれほど列は長くはない。金沢神社は菅原道真を祀っていて、受験生とその家族が多いのだが、かつてほどの熱気が感じられない。天気がよいにもかかわらず、列の長さがさほどではないということは、受験に縁起を担ぐ時代はもう終わったのかも知れない。列についていると、家族がふと、「この灯篭の彫り物は竜だね=写真=、ことしのエトだから一枚写真を撮っておこう」と。その言葉でことしは辰(たつ)年かと初めて気が付いた。辰年は上昇の年とされるがどんな年になるのだろう。12年前の平成12年(2000)は、三宅島が噴火し、ITバブルが崩壊した年、その前の昭和63年(1988)はバブル経済の真っ盛りで東証株価3万円、そして政界の金にまつわるスキャンダルのリクルート事件が発覚した年だった。辰年は、こうしてみると浮くか沈むかの明暗がはっきりする年。ことしはどちらだ。ひょっとして大底か。

 <おせちのフードマイレージを考える>
 元旦におせち料理にありつけるのは幸せなこと。ホテルからの取り寄せで3段重ね、奮発した甲斐があった。和、洋、中華と3種の料理が詰まっている。メニューを見ると、それにしても食材の多いこと、全部で41種もある。レンコンなど野菜類から、ナマコ、カニ、アワビの魚介類、合鴨、牛など肉類などいろいろ。これらの食材は世界からかき集められたものではないのか。おそらくスモークサーモンはフィンランドから、アワビはオーストラリア(タスマニア島)から、ニシンはロシア、オマールエビはカナダからと、その原産地を推測してみる。フードマイレージ(食料の輸送距離)を考えると、輸送過程でどれだけの二酸化炭素が排出されたことか。そう考えるなら買わなければよい、それは自己矛盾ではないのかと言い聞かせる。そこで思いついた。「地元食材100%加賀おせち料理、限定300個」という商品はないのだろうか。

 <元旦ゴールデン番組での違和感>
 元旦のテレビ番組のゴールデン帯はいつもの正月ゴールデンだった。派手で騒がしい。このような番組を東北の被災地の人達はどのような思いで視聴しているだろうかとつい思ってしまった。円盤型のピザ生地を投げて向かいのアパートの電子レンジに入れるという番組があった。何度も失敗する。食べ物を投げてどこが楽しいのかと違和感を感じてチャンネルを変えた。チャレンジする番組はよい。ただ、そのコンセプト、たとえば食べ物を粗末にする表現内容ではないのかとの視聴者感情よりも、奇抜な演出の表現方法を優先していて、どこか発想が拙い。制作現場でそのような意見のやり取りはなかったのだろうか、不思議に思えた。

 <ウィーン・新年コンサートの臨場感>
 結局、チャンネルが落ち着いたのは、NHK教育(Eテレ)だった。番組は「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート2012」。毎年生中継で世界に配信されている。指揮はマリス・ヤンソンス。ヨハン・シュトラウスの「祖国行進曲」から入り、会場がひと際沸いたのはウイーン少年合唱団が合唱した「トリッチ・トラッチ・ポルカ」ではなかったか。ウィーン少年合唱団がニューイヤーコンサートに登場するのは1998年以来14年ぶりとの解説があった。その少年たちの歌声を引き立てるように配慮されたオーケストラの演奏に会場が大きな拍手をおくったのだと思う。これまで何度かニューイヤーコンサートを視聴したことがあるが、生中継したオーストリア放送協会(ORF)の制作技術はさすがだった。天井からのカメラワークや、ハイビジョン撮影でステージの指揮者や演奏者の息づかいだけでなく、観客席の聴衆の服装や呼吸までもが伝わってきた。これが臨場感を高める。そういえば、和服姿の女性ほか日本人らしき姿が目立つ会場だった。ニューイヤーコンサートはあまたあるコンサートの中でも最もプレミアが付く演奏会の一つだろう、そこへ出かける日本人とは・・・と考えているうちにウトウトとしてしまった。

⇒1日(日)夜・金沢の天気  くもり