能登半島・輪島市門前の「琴ヶ浜」は鳴き砂の浜で知られる。直径0.5ミリほどの石英粒を多く含む砂が擦れ合ってキュッキュッと音を出す現象である。その琴ヶ浜には地球のダイナミックな地殻変動を目の当たりにできる柱状節理がある。砂岩層からマグマが噴出し、飛び散る寸前にそのまま冷えて固まったもので、下から見上げると800万年前の火山活動がリアルに伝わってくる。18日から始まる総選挙は政権交代がテーマとなる。それは、「日本の地殻変動」か「揺れども大地は割れず」なのか、きょうから「自在コラム」は選挙モードに。
今回の選挙、誰が動くのか
問われているのはメディアなのか。新聞各社の世論調査が圧倒的な「民主勝利」を早々と伝えている。ところが、最近出始めているインターネットによるアンケート調査は結果がまったく違う。
■「ニコニコ動画」を傘下におく「ドワンゴ」によるネット入口調査(総回答数:850,442人、実施期間:8/7~10)で「今回の衆院選の比例代表選挙において、どの政党に投票しますか」の問い・・・自民40% 民主31% 選挙へ行かない13%
■朝日新聞全国世論調査(電話方式、有効回答1011人、実施期間:8/15~16)で、「いま、総選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか」の問い・・・民主41% 自民24% 答えない・分からない27%
ネットでは自民の優勢、新聞は朝日のほか各紙とも民主が優勢だ。なぜこんな差が出るのか、という質問を新聞社に投げかけると、おそらく「世論調査の専門セクションを持って調査方法が確立している新聞社の調査と、ネットが入り口で簡単にやっている調査といっしょにしないでください」と言われそうだ。が、考えてみる。新聞社の調査は、固定電話に無作為に電話をかけて調査する方式。電話をする時間帯によって固定電話に出る人は決まってくるのが特徴。昼間帯なら主婦、お年寄りが多くなり、固定電話とは遠い存在の若者の意志が反映されない。その意味である種偏った結果になる傾向がある。逆にネットの場合は、若い世代のユーザーが多くなり、これも偏りがある。
では、実際に選挙となるとどんな層が投票に行くのか。前回2005年9月11日、自民が大勝した総選挙は「小泉劇場」「小泉マジック」と称され、選挙前からテレビメディアが「郵政民営化」「刺客」などをキーワードにニュース番組、ワイドショー番組で盛んに取り上げた。ワイドショーでは、主要民放が1年間放送した2418時間38分のうち、衆院選関連が実に166時間30分と断トツの1位、シェアは6.89%を占めた。2位が北朝鮮関連(80時間51分、シェア3.34%)だった。ちなみにこれまでワイドショーの十八番(おはこ)とされてきた芸能(結婚・離婚)ネタは11位(14時間1分、シェア0.58%)に過ぎない。これは逢坂巌氏(東大大学院法学政治学研究科助手)が膨大なデータをまとめたもので、「日本選挙学会年報『選挙研究』№22-2007」に掲載されている。これからも分かるように、いまやワイドショーでは、政治や選挙ネタは視聴率が取れるテーマなのである。
05年総選挙の後、朝日新聞が世論調査を記事にした(10月25日付)。自民党の候補者に投票した人の実に56%が「テレビを参考にした」と答え、「新聞を参考にした」は39%を上回った。民主党の候補者に投票した人の48%が「新聞を参考にした」と答え、「テレビを参考にした」は44%だった。さらに、性別で見ると、女性は「テレビを参考」58%、「新聞を参考」34%だった。ちなみに男性は「新聞を参考」46%、「テレビを参考」が44%となる。
上記から、2005年の総選挙では、テレビのワイドショーを見ることができる、いわば在宅率の高い世代、つまり主婦層が選挙を動かしたと言えなくもない。また、テレビ放送と連動する、こうした選挙結果は「テレポリティクス」とも称される。では、ネットユーザーの主流(20歳・30歳代)の投票行動はどうだろう。いざ投票となると、普段行かない学校や公民館に行くのだろうか。「面倒くさい」「なんでケータイで投票ができないんだ」とボヤキが聞こえてきそうだが、これは偏見だろうか。今回の選挙は誰が動くのか。
⇒18日(火)朝・金沢の天気 はれ