
季節感を強調することは商品をブランド化する重要な要素である。その最近の成功例はワインのボージョレーヌーボーだろう。わざわざ解禁日まで設定している。日本海のズワイガニも例年11月6日ごろに解禁となる。この場合、資源保護のため禁漁期間が設定されているのだが、解禁日が設定されると自然保護の思惑を超えて待ち遠しくなるものだ。季節感も取り込んで「味」にする、そば屋も随分と商売上手になったものだと思う。ちなみに、ひいきにしているそば屋は金沢の繁華街・片町にあり、ご主人が私と同じ奥能登出身ということで気が合い、通っている。東京で修業を積んだ「更科そば」である。
そばと言えば、私が勤めている金沢大学の創立五十周年記念館「角間の里」の周辺で栽培されているソバが真っ白な花をつけている。畑をよく観察すると、ミツバチやチョウが忙しそうに飛び交っている。秋空に映えるソバの白い花、その花に群れる昆虫・・・。別の言い方をすれば、太陽の日差しで植物が生長し、その周囲に昆虫も息づく、そんなマクロからミクロへと連続するダイナックな生態系がこのソバ畑で見て取れる。
そのソバの実を収穫し、そばとして加工して販売する。また味覚を楽しもうと行動を起こせば、それが経済活動(生産と消費)になる。そばを食べる所作をつくれば文化になり、それを年代ごとに論ずれば歴史となる。また、地域としてそばとソバをテーマに取り組めば「村おこし」という行政的なテーマにもなる。そばとソバの間を行き交うとそうした眼差し(まなざし)が生まれる。
「9・11」という激動の衆院選があった9月がきょうで終わる。名残を惜しんでいるのではない。脳裏に刻んでいるのだ。
⇒30日(金)午前・金沢の天気 くもり