★選挙に「ロマンを感じる」世代

   新聞紙面から「国民新党」や「新党大地」はもう消え去りつつある。最近の新党「日本」ですらもう時間の問題かもしれない。ことほどさように、時間の流れは速い。そして、マスメディアの関心事は広島6区(亀井静香氏VS堀江貴文氏)がさらっている。けさ、フジテレビ系の朝の情報番組でコメンテイターが「なんで自民党と」としつこく堀江氏に質問した。堪忍袋の緒が切れた様子の堀江氏が「くだらない質問には答えたくない」と憮(ぶ)然とした。こうした緊張した場面には生中継ならではの醍醐味がある。おそらく収録だったらカットされていたに違いない。見ている側からすれば、堀江氏が憮然した理由は「理解の範囲」である。揚げ足を取るための繰り返しの質問は見ている側も不愉快に感じる。

   これからの話はおそらく50歳代の後半からの世代の人のごく一部が理解できる話かも知れない。先日、私のかつての業界の先輩と2時間ばかり話をする機会があった。先輩いわく。「今回の選挙にはロマンを感じる」という。「何のロマンですか」と問うと、「革命のロマンだよ。われわれは70年安保の世代。権力との対峙に明け暮れて、自民党=体制をぶっ潰すことを考えていた。細川(政権)はブルジョワ革命だと思っていたので魅力はなかった。でも、今回の小泉は戦略的な手法の革命だね。感じるんだよロマンを」と。

   上記の話には少し説明がいる。先輩は東京の私大卒。70年安保では国会付近でのデモに参加し、警察に「パクられた(逮捕された)」経験がある。過激派ではないが、つい最近までパクられた当時のヘルメットを家族に見つからないように隠し持っていた。近く早期退職するので、「一応人生にケリをつけたい」と思い出の品は全部捨てた。ヘルメットも捨てた。彼には、警察官僚だった亀井氏や自民党最大派閥の綿貫民輔氏は「自民党そのもの」に思えてならない。「その連中と小泉は闘っている」と。「右翼に共感する左翼もいる。左翼に共感する右翼もいるんだ」と先輩は言う。「靖国を信奉する小泉は右翼だが、共感できる」のだそうだ。

   そして「戦略的な手法の革命」のことである。レーニンが「すべての権力を会議(ソビエト)へ」と発し、全ロシア労働者・兵士ソビエト大会で革命に反対するメンシェビキを追い出しソビエト権力の樹立(1917年)した過程と似ている、と言う。「権力闘争の何たるかを小泉は知っている」と先輩は妙に関心して見せるのである。若かりしころの「革命のロマン」をイメージさせているのだ。

   先輩と別れた後で、最後に一つ質問をすべきだったと悔やんだ。「ところで先輩、投票に行くんですか」と。いまさら電話で質問をするのも気が引けるので、以下想像する。先輩は投票には行かないだろう。ロマンと投票行動は違う。「小泉には共感する」が選挙区は違う。その選挙区の自民党候補者は70歳を過ぎた老人である。先輩がその候補者に一票を投じるとは到底思えない。

⇒22日(月)夕・金沢の天気  雨