その散居村で子育てグループを世話しているのが森満理(もり・まり)さんです。自らの住宅=古民家を「まみあな(狸穴)」と称して、「出会う、関わる、気遣い合う、支え合う」ということを実践している女性です。その森さんの自宅竹林でのタケノコ掘りです。
炊き上がりを待つ
ここに集う子どもたちが元気なのです。写真をご覧ください。タケノコご飯の炊き上がりを今か今かと待つ子どもたちです。炊き上がり後は想像に難くありません。子どもたちは元気に「おかわり」と茶わんを差し出していました。子どもらしい姿を久しぶりに見たような気がしました。
森さんたちの活動は、テレビゲームやパソコンなどバーチャルな環境にどっぷり浸かっている今の子どもたちに自然や農業、手作業というリアリティーを体験させることで、心あるいは精神のバランスを取ることを教えているのです。まるで、「マンション」VS「散住村」のように「バーチャル」VS「リアリティー」の対極の構図にも見えます。人はこうした対極を体験することで複眼的な思考やバランス感覚を養うのです。
ドイツの哲学者、ショーペンハウエルの寓話から生まれた「ヤマアラシのジレンマ」という心理学用語があります。寒い日、互いを温め合おうとする2匹のヤマアラシ。近づきすぎれば互いに傷つき、離れすぎれば凍える。そんなジレンマです。今の子どもたちはバーチャルの世界で妄想や攻撃的な感情を膨らませ、トゲがどんどんと長く鋭くなっているようにも思えます。人と人との適切な距離を保てなくなっているのです。森さんたちの活動は地道ながら、子どもたちの教育のあすを示唆する大きなテーマでもあるのです。
⇒9日(月)午後・金沢の天気