
業務提携を望む流れがテレビ局側にあるというのは、地上波のデジタル化で経営サイドあるいは制作現場にはある種の閉塞感があるからだ。ハイビジョン、高音質、データ放送、携帯電話向け放送などデジタル放送の機能は多様であるが、「視聴者は果たしてデジタル化を望んでいるのか」「技術的には可能でも、莫大な投資が将来の重荷になるのではないか」などデジタル化の先が見通せない。2006年までに終えなければならないデジタル化のその後のビジネスモデルや番組モデルをどのように構築するか、これはテレビ業界が等しく悩んでいることなのである。ましてや、2004年の日本の広告費で、インターネットとラジオが並んだ(電通調べ)となると、ラジオを兼営しているテレビ局にとっては死活問題ともなっている。テレビ業界がインターネット業界と業務提携し、デジタル化後の活路を見いだすというのは自然の流れなのである。
すでに、IT企業が配信するブロードバンド(高速大容量)放送に、著作権などをクリアした上で番組を提供したり、携帯電話インターネットのコンテンツ制作会社に出資したりと、着々と手を打っているテレビ局もある。フジテレビとライブドアの業務提携が本格的に進めば、ほかの系列局も雪崩を打ったようにパートナー探しを始めるに違いない。株式の買収劇に目を奪わたが、本筋はテレビメディアの業態を大きく変えるエポックメーキングと捉えたい。