★教授からヒントの宴会話

 大学に勤めるようになって恩師とよく似た教授がいるので驚きました。恩師とは、人類学者の埴原和郎氏(故人)のこと。以下は思い出話です。東京の学生時代に埴原氏の研究室を訪ねると、いきなり「君は北陸の出身だね」と言われ、ドキリとしました。その理由を尋ねると、こうでした。「君の胴長短足は、体の重心が下に位置し雪上を歩くのに都合がよい。目が細いのはブリザード(地吹雪)から目を守っているのだ。耳が寝ているのもそのため。ちょっと長めの鼻は冷たい外気を暖め、内臓を守っている。君のルーツは典型的な北方系だね。北陸に多いタイプだよ」。ちょっと衝撃的な指摘だったものの、目からウロコが落ちる思いでした。

 埴原氏は、古人骨の研究に基づいた日本人の起源論が専門。とくに、弥生人は縄文人が進化したものではなく、南方系の縄文人がいた日本列島に北方系の弥生人が渡来、混血したことによって、日本人が成立したとする「二重構造モデル」を打ち立てたことで知られます。

 話はここからです。私は、埴原氏から指摘された話をこれまで何度となく宴席で使わせてもらいました。顔や骨格からルーツを探る話は、結構受けるのです。話の締めに「DNAを調べもらって、同じ遺伝子を持つシベリアの遠い先祖の村々を訪ねてみたいと本気で考えています。ところで、あなたも私と体や顔の骨格が似ているから、いっしょにどうですか」とダメ押しすると笑いも取れます。これで30分ぐらいは楽に座持ちがするのです。しかも、これで、「目が細く、耳が寝ている」私の顔も随分と覚えてもらいました。