★50歳エイ・ヤッと出直し

 ことし1月にテレビ局を退職し、4月から金沢大学の「地域連携コーディネーター」という仕事をしています。大学にはさまざまな「知的な財産」があって、それを社会に還流させていこうというのがその趣旨です。一口に「知的な財産」と言っても、それこそ人材や特許など有形無形の財産ですから、それを社会のニーズに役立てようとすると、そのマッチング(組み合わせ)は絡まった細い糸をほぐすような作業である場合もあります。この事例については差し支えない範囲で紹介していきます。

 ところで、「よくテレビ局を辞めたね。もったいない」とテレビ業界の仲間や友人から言われます。私自身、以前から「50歳になったら人生を見直す」と公言してきましたので「想定の範囲」なのですが、周囲からは奇異に見えるかもしれません。まず、性格的に言って、一つの仕事を最後まで務め上げて云々というタイプではありません。幼いころから寄り道や道草、よそ見が好きでよく親に心配をかけました。

 それともう一つ、50歳という年齢です。人生の折り返し点で、ニワトリのように強制換羽(きょうせいかんう)が必要なのです。ニワトリは卵を産み始めてから8ヶ月ほどで卵の質が落ちてきます。この時点で、絶食させられます。毛が抜け、衰弱したところでエサを豊富に与えると、また、良質の卵を産むようになるのです。人もまた同じ仕事を続けているといつか周囲が見えなくなったり、アイデアが枯渇したり、その延長線上に嫉妬、やっかみが出てくるのです。それは人生の劣化の始まりです。その年齢が50なのです。そのとき、「家族が大切…」と言いながら現状を続けるのか、収入減を家族に理解してもらい別の道を歩むのか、それぞれの選択です。私の場合、後者を選んだというわけです。