
寺の鐘つき堂で勢いをつけて鐘をつくと、その響きが全身を包むように伝わってきて、欲望や執念にかられた煩悩が払われたような気持ちになる。大晦日のきょう、菩提寺の龍渕寺(金沢市野町3丁目)では門徒や近所の人たちが自由に鐘をつくことができる「プレ除夜の鐘」というイベントが行われた。時間は午後2時から2時間と限られていたが、子どもたちも参加して、鐘をついていた=写真・上=。笑顔で鐘をつく人もいれば、ついた後で涙をぬぐっている人もいた。それぞれが想いを込めて鐘をついていたのだろう。寺院ではあす1月1日は能登半島地震で亡くなった人たちの3回忌にあたることから追悼法要が営まれ、犠牲者の鎮魂を祈った。
この一年の大きなイベントと言えば、世界158の国・地域が184日間にわたって歴史・文化や最先端のテクノロジーなどを発信した大阪・関西万博大阪だった。能登から発信したのは、あの輪島塗の地球儀『夜の地球 Earth at Night』だ=写真・下=。展示された万博展示棟には国内外から321万5784人が鑑賞に訪れた。8月には秋篠宮家の次女佳子さまも見学されるなど、能登復興のシンボルとしても注目を集めた。

この地球儀は輪島塗の人間国宝の小森邦衛氏を中心に5年がかりで制作した作品。間近で観賞すると、宇宙に浮かぶ夜の地球にロマンを感じさせ、まさに漆黒の芸術作品だ。そういえば、万博会場で地球儀を見学した東京の知り合いからこんなSMSメールが届いた。「夜の地球儀は名作だね。ところで昼の地球儀はあるの」と。なるほど思いながらも、説明するのに窮した。「輪島塗は黒をベースに金箔や蒔絵で模様を描くので、昼の地球儀は難しいかも」と返信。すると、「調べたら、輪島塗は漆黒がベースで、朱色もあるね。夕焼けの地球儀もいいかも」と妙に理解してくれたようだった。夜の地球儀は、石川県輪島漆芸美術館で常設展示されている。
受け継がれる万博のレガシーもある。大屋根リングは1周2㌔、高さ最大20㍍の世界最大の木造建築物としてギネス世界記録にも認定された。万博閉幕後は解体され、木材は無償で譲渡されている。能登半島の尖端に位置する珠洲市もその一部を譲り受ける。能登地震の「復興公営住宅」の一部に活用されるようだ。関わっている建築家は坂茂(ばん・しげる)氏だ。阪神・淡路大震災(1995年1月)を契機に復興支援に取り組んでいて、能登半島地震でもいち早く行動を起こしたことで知られる。珠洲市にはすでに坂氏が監修した仮設住宅なども整備されている。復興公営住宅では万博のシンボルである大屋根リングがどのように再活用されるのか。まさに万博のレガシーが能登でよみがえるのではないだろうか。
⇒31日(水)午後・金沢の天気 あめ
