⇒ニュース走査

★さらなる脅威

★さらなる脅威

   ニュースを聞いて、夕刊を買いにコンビニエンスストアに走った。北朝鮮が6日、水爆実験を行ったとのネットニュースを見てである。授業が終わって、午後2時45分ごろだ。

   新聞夕刊やテレビなどメディアをまとめると経過はこのようになる。北朝鮮は6日正午(日本時間で午後0時30分)、朝鮮中央テレビを通じて「特別重大報道」を放送し、「水爆実験に成功により、わが国は核保有国の隊列に加わった」と報じた。金正恩第一書記は去年12月15日に水素核実験の実施を命令し、今月3日に最終命令書に署名したという。

   この北朝鮮のテレビ報道に先立ち、韓国気象庁は6日午前10時半ごろ、北朝鮮東北部の豊渓里(ブンゲリ)で、マグニチュード(M)4.7の地震を観測した。震源地は北朝鮮の核実験視察から30㌔の範囲内にあり、震源の深さは地上0㌔㍍だった。

    北朝鮮はこれまで、2006年10月、2009年5月、2013年2月の3度、核実験を実施している。金正恩が権力の座に就いて2度目となる。北朝鮮は現在、ウラン型とプルトニウム型の核爆弾十数個を保有しているとみられる。水爆爆弾であるならば、原爆を起爆剤にして核融合反応を起こす。その放出エネルギーは原爆より数百倍大きく、しかも小型化、軽量化できる。北朝鮮は弾道ミサイルに搭載できる核爆弾の開発には成功したのかもしれない。

    報道によれば、北朝鮮は今回、中国に対して実験を事前に通報していない。過去3回の核実験では、実験直前に中国に通報していた。中国の習近平政権は北朝鮮の核開発を厳しく批判していたので、邪魔されたくないと考えたのかもしれない。北朝鮮の女性音楽グループ「牡丹峰(モランボン)楽団」が先月12日に北京の中国国家大劇院で同日予定していた公演を突然中止して帰国した。その理由はいろいろと憶測が飛んだが、金正恩が核実験を決意したこととリンクしているのではないか。

    中東では、今月3日にサウジアラビアはイランと断交した。4日にはバーレーンとスーダンもイランとの断交を宣言した。サウジによるイスラム教シーア派指導者の死刑執行をきっかけに先鋭化した中東の2大国の対立は「第5次中東戦争」を予感させ、何だか世界のあちこちにキナ臭さが漂う。

⇒6日(水)夜・金沢の天気    くもり  

☆豊饒の海を襲った津波

☆豊饒の海を襲った津波

 11日午後2時46分、三陸沖を震源とする国内観測史上最大の巨大地震が発生した。強い揺れと最大10㍍と推定される津波が襲い、火災も発生、岩手、宮城、福島3県で壊滅状態の地区が続出し、110万人が住む太平洋岸三陸地域を中心に犠牲者は相当数に及ぶ。宮城県栗原市で震度7、仙台市など宮城県各地、福島、茨城、栃木各県で震度6強を記録した。マグニチュードは8.8。観測史上最大規模と報じられている。三陸沖から茨城県沖にかけての震源域が連動して揺れが頻発しているようだ。

 気仙沼港に6㍍の津波が到来し、市内は広範囲にわたって水没しているとメディアは伝えている。朝日新聞社のホームページ「アサヒ・コム」は、同社気仙沼支局長の報告として次のように報じている。「気仙沼港は火の海。すごいことになっている。午後5時半すぎ、気仙沼港口にある漁船用燃料タンクが津波に倒され、火が出た。その火が漂流物に次々に燃え移っている。さらに、波が押し寄せるたびに、燃え移った漂流物が街の中に入り、民家に延焼している。周辺は暗くなっているが、一面、真っ黒な煙と炎が覆っている。あちこちで火が上がり、『バーン、バーン』という爆発音もあちこちで聞こえる。気仙沼市街地北側で火柱が3本見える」。記事を読む限り、戦場を想像させる。

 去年(2010年8月)と2008年3月、「能登里山マイスター」養成プログラムの講義に能登に来ていただいた畠山重篤氏(気仙沼市)。講義のテーマは、「森は海の恋人運動」だった。畠山氏らカキの養殖業者は気仙沼湾に注ぐ大川の上流で植林活動を1989年から20年余り続け、約5万本の広葉樹(40種類)を植えた。この川ではウナギの数が増え、ウナギが産卵する海になり、「豊饒な海が戻ってきた」と畠山氏はうれしそうに話していた。漁師たちが上流の山に大漁旗を掲げ、植林する「森は海の恋人運動」は、同湾の赤潮でカキの身が赤くなったのかきっかけで始まった。

 宮城県が計画した大川の上流での新月(にいつき)ダム建設では、畠山氏らの要請を受けた北海道大学水産学部の松永勝彦教授(当時)が気仙沼湾の魚介類と大川、上流の山のかかわりを物質循環から調査(1993年)し、同湾における栄養塩(窒素、リン、ケイ素などの塩)の約90%は大川が供給していることや、植物プランクトンや海藻の生育に欠かせないフルボ酸鉄(腐葉土にある鉄イオンがフルボ酸と結合した物質)が大川を通じて湾内に注ぎ込まれていることを明らかにした。この調査結果は県主催の講演会などでも報告され、新月ダムの建設計画は凍結、そして2000年には中止となった。畠山氏らの、ダム反対のスローガンを掲げずに取り組んだ「森は海の恋人運動」は結果的にソフトな環境保全運動として実を結んだ。

 畠山氏らが心血を注いで再生に取り組んだ気仙沼湾が「火の海」になった。心が痛む。畠山氏らの無事を願う。

⇒12日(土)朝・金沢の天気  くもり

☆街のつぶやき

☆街のつぶやき

 今回も金沢市長選(11月28日)の話だ。選挙の前日、金沢市役所の近くにある商店街の世話役がこんなことをつぶやいていた。「山出さん(現職)の取り巻きに危機感がないね。応援演説で『絶対的な多数で再選をお願いします』と言っていた。あれじゃ、当選確実と言っているようなもので、演説を聴いている人は投票場に行こうという気が削がれるね」。その言葉は的中した。投票率は、現職が5選を果たした前回(2006年)を8・54ポイント上回る35.93%だったが、現職は1万2千票近くも得票を減らし、新人に1364票差で破れた。

 共産以外の各政党の支援を受け、県会議員と市会議員40人ほどが支える山出陣営は当初から「横綱相撲」と言われていた。候補者は79歳、6期目への挑戦だった。今回の選挙は「多選」というより、「高齢」の是非が大きな焦点となった。新人の山野之義氏(48)は「79歳の市長と古い政治を続けるか。48歳の私と一緒に新しい市をつくるか」と訴えていた。私が投票場(小学校)への道を歩いていると、前を歩いていた3人の中高年の女性たちから「コウキコウレイシャ(後期高齢者)やね・・・」という言葉が漏れていた。続く言葉は聞こえなかったが、後期高齢者はよいイメージで使われることはないので想像はついた。

 現職に不利な訃報もあった。金沢市と隣接する白山市の現職市長が急性心臓疾患のため死去した。79歳。金沢市長選のほぼ1ヵ月前の10月24日のこと。女性たちが話していたのはこのことだったかもしれない。

 告示前、「山野不利」との下馬評だった。今回の市長選では市議39人のうち、過半数を超える議員が現職・山出氏を支援し、山野氏についたのはわずか8人の一期目の若手市議だったからだ。ことしの9月議会でこの若手市議グループが市長の任期を原則3期12年とする「市長の在任期間に関する条例案」を提出し、否決された。最終的にこの若手市議グループが山野氏出馬を後押しするカタチとなった。裏を返して言えば、若くて勢いはあるが、強力な支持基盤も動員力もなかった。

 当然、選挙運動は組織動員を頼む個人演説が中心の現職と、街頭演説が中心の新人の対照が際立った。多い1日で40回も街頭に立った新人には、神奈川県の松沢成文知事、前横浜市長の中田宏氏らが相次いで応援に駆けつけ、多選批判を訴えた。また、日本創新党(党首は前東京都杉並区長の山田宏氏)の単独推薦を受けており、山田党首らも最終日に訪れ、歯切れのよい演説をぶった。一方の現職の戦いぶりについて、冒頭の商店街の世話役は「個人演説会のたびに候補者を紹介するビデオを見せられた。われわれのような動員組は4回、5回と見せられ、さすがに嫌になったよ」と。

 厳しい言い方をすれば、35.93%の投票率であり、新人は戦いには勝ったかもしれないが、選挙で勝ったといえるかどうか。一方、6選を目指した現職の敗因は高齢・多選のせいだけだろうか。これまで勝ちパターンだった組織選挙は今では旧態依然として、あるいは制度疲労を起こしているようにも思える。組織への帰属意識より、有権者としての個の意識だ。金沢の選挙のスタイルもようやく普通になった、ということか・・・。

⇒2日(木)夜・能登の天気  はれ

☆多選と民意

☆多選と民意

 地域の政治的な風土にはタイプがある。首長が一期か二期ごとに交代する「共和国タイプ」と、一度決まると長期政権化する「君主国タイプ」である。君主国タイプは、既に定められた政策を維持して不測の事態に対処するだけで統治は事足りて、この場合、首長は平均的な能力さえ持てば有権者にも好感を持たれる。ただ、行政機構の中では、首長が多選化する過程で絶対権力化し、行政職員は有権者や市民の民意より、首長の意図を読むようになり、「(首長の)ご意向はこうだろう」などと忖度(そんたく)し合っている。金沢という土地柄は加賀藩の膝元にあったせいか、君主国タイプである。有権者もまた、首長の政策的な個性より、「間違いがない人」という安定的な首長を選んできた。その金沢の政治的な風土が破られた。

 任期満了にともなう金沢市長選挙は28日投票が行われ、無所属の新人で元金沢市議会議員の山野之義氏(48)が初当選を果たした。5万8204票と5万6840票。現職で6選をめざす山出保氏(79)と1364票の僅差だった。投票率は前回に比べ8.5ポイント高い35.9%だった。

 今回の市長選には面白い構図があった。山野氏は自民党の市議だったが今回は無所属で出馬した。山出氏は社会民主党、国民新党、民主党石川県連の推薦を受けた。地元財界人も山出支援に動いた。自民党県連は自主投票だった。選挙前から山出氏有利が伝えられていた。そんな中で、山野氏を応援をしたのは、自民党を含む若手の市議会議員(とくに一期目)のグループだった。

 山出氏は市の助役から選挙を経て市長の座に就いた。そのころから、市長は職員人事を掌握し、労組との関係も手堅かった。ところが、冒頭に述べた君主国タイプの「異臭」を放つようになってきた。それは、同じ庁舎にある議会で活動する市議だったら、とくに、一期目の新人だったらその異臭を敏感に感じ取ったはずだ。若手グループの一人は「いつまでも殿様政治やっていたら、金沢市は潰れてしまう。全国の笑いものや」と私に語っていた。若手の市議会議員のグループはそれほど現市政の有り様に危機感を持っていた。つまり、山出VS山野の対決構図は、市長VS議会若手グループでもあったのだ。
 
 山野氏は金沢市出身。IT企業「ソフトバンク」の社員を経て、平成7年から金沢市議会議員を4期連続で務めた。慶応大学時代には弁論部に所属し、街頭に立って市民に直接訴えると言うノウハウを身に着けた。出馬表明が遅れたことによる知名度不足をカバーするため、選挙戦では市内各地で街頭演説をする戦法に徹して、多い日には40回も街頭に立ち有権者に政策を訴えた。金沢における「高齢・多選」の弊害と、「世代交代」を訴えて街頭に立つ手法は、いわゆる無党派層からの支持を受けた。それは、午後から投票率から伸びるという現象でも見て取れた。

 山野氏は自らのマフェストでこう述べている。「月1回の定例記者会見を実施します」「市長多選自粛条例を制定します」「市民ブレイン制度を導入します」「市内公衆無線LAN化を実現します」など。そして、市の動きを分かりやすく市民に伝えるため、広報システムを見直し、「広報プロデューサー制度」を導入するという。情報発信力を高める必要がある。同時に、市内公衆無線LAN化は、ネット環境を整えるためにぜひと願う。ハコモノ行政ではなく、時代のニーズに合うインフラこそ急ぐべきだ。時代を先取りした、市民に分かりやすい政治を期待したい。

※写真は、山野氏のマニフェストより

⇒29日(月)朝・金沢の天気 はれ

★されど「カム撮り」

★されど「カム撮り」

 17日付の新聞各社のインターネットニュースで、映画の盗撮のことが掲載されている。俗称「カム撮り」。映画館で上映されたスクリーン映像を盗み撮りし、ファイル交換ソフト「Share」を使ってネット上に流したとして、堺市の運送会社社員(37歳)が著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いで逮捕された。盗撮された映画は邦画「クローズZERO II」で、東宝など8社の著作権を侵害したという。ネットにアップしたのは5月中旬で、大阪府警生活経済課ハイテク犯罪対策室が内偵していたようだ。ただ、ネット上の映像が粗く、雑音も入っていた。粗雑なネット動画なら、商品価値はなく、そう目くじらを立てる必要もないと思えるのだが、権利を侵害された側にとっては一大事である。著作権は被害者が訴える親告罪だ。

 この映画の盗撮は、もともとハリウッドの権利を守るためにアメリカが主張したものだ。「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」(2006年12月5日)に盛り込まれた事項。日本とアメリカの経済パートナーシップを確立するとの名目で2001年に始まった「規制改革および競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)である。分野横断的改革を通して、市場経済をより加速させるとの狙い。06年当時は、安倍首相の時代だった。小泉内閣の遺産を引き継ぎ、日米関係はすこぶる順調だった。新しいビジネスチャンスを生み、競争を促し、より健全なビジネス環境をつくり出す改革として、アメリカ側の要望書には多くの案件が盛り込まれた。規制緩和が主流であったが、こと「知的財産権」に関してはアメリカのペースで規制強化が行われた。

 アメリカ側は知的財産権保護を強化するいくつかの案件を提示した。一つに、被害者が訴える親告罪ではなく、警察や検察側が主導して著作権侵害事件を捜査・起訴することが可能となる非親告罪化を要求した。また、著作権の保護期間を日本では死後50年としているが、死後70年に延長するよう迫った。さらに、映画の海賊版DVD製造の温床とされた映画館内における撮影を取り締まる「盗撮禁止法」を制定することを要求したのだった。

 日本国内では、「非親告罪化」と「死後70年」に関しては議論が分かれたため、誰からも文句が出なかった「盗撮禁止」が手っ取りばやく法制化された。翌年成立した「映画の盗撮の防止に関する法律」がそれである。著作権法の特別法として制定され、私的使用を目的とした著作物の複製行為(著作権法30条1項)には当たらず、刑事罰の対象となる。アメリカからの要求以前にも日本映像ソフト協会などから法律化を求める声が上がってはいた。

 たかが「カム撮り」と言うなかれ、通商外交が絡んだ、されど「カム撮り」なのである。

⇒17日(月)夜・金沢の天気  はれ

 

☆「ニュース異常気象」3題

☆「ニュース異常気象」3題

 1月の積雪がゼロという金沢地方気象台始まって以来の暖冬異変。この異変は何も気象だけではないようだ。「ニュースの異常気象」を3題まとめてみる。

  関西テレビの番組「発掘!あるある大事典Ⅱ」で捏造問題が発覚して以来、テレビ業界全体の信頼度が落ちたように思える。そしてついにというか、きょう13日の閣議後の記者会見で、菅義偉総務相は「捏造再発防止法案」なるものを国会に提出すると述べたそうだ。その理由は「公の電波で事実と違うことが報道されるのは極めて深刻。再発防止策につながる、報道の自由を侵さない形で何らかのもの(法律)ができればいい」と。放送法第三条と第四条は、放送上の間違いがあった場合は総務省に報告し、自ら訂正放送をするとした内容の適正化の手順をテレビ局に義務付けている。さらにこれ以上の防止策となると、罰則規定の強化しかないのではないか。個別の不祥事イコール業界全体の規制の構図は繰り返されてきた負のスパイラルではある。

  「団塊の世代」を中心とした55~59歳の男性が自宅の火災で死亡するケースが全国で増えているそうだ。死者は「無職」「独り暮らし」の割合が高い。明確な理由は分かっていないが、家族との別居、深酒、タバコ火の不始末、火災へとこれも負のスパイラルである。北海道では、05年の男性の死者は57人おり、このうち56~60歳が全体の4分の1にあたる13人を占めたという。個人的な話だが、金沢の高校時代の知り合いがこれまで2人もアパートで孤独死している。2人とも上場企業の元サラリーマンだった。交通事故などの不祥事による退職、離婚、深酒、病死である。病死はアルコールによる肝硬変。60歳の定年時に熟年離婚がはやっているそうだ。おそらくろくなことはない。男は逆境に弱いのだ。

  「発掘!あるある大事典Ⅱ」の捏造事件の続報が大きく扱われ、目立たない扱いで記事になっていたが、朝日新聞のカメラマンが写真に付ける記事を書く際に読売新聞の記事を盗用していたという事件もある意味で異常である。1月30日付の夕刊社会面に掲載された富山県立山町の「かんもち」作りの写真の記事を盗用したというもの。ローカル記事をインターネットで探して拝借するという構図だ。それにしても、ローカル記事なら東京で盗用してもバレないだろというのは安易に考えたものだ。カメラマンは実名公表のうえ、解雇となった。「もち」のツケは大きかった。

⇒13日(火)夜・金沢の天気  はれ

★変わる時代の雰囲気

★変わる時代の雰囲気

  民主党の代表選は、小沢一郎氏(63)と菅直人氏(59)の争いとなる。7日に行われる代表選に向けて立候補を表明したが、現段階では、保守系や旧社会党系などに支持を広げる小沢氏が優勢と見られている。

 5日の記者会見を見る限り、ともに自民党との対立軸の明確化を強調し、送金メール問題で傷ついた党の「再生」を掲げていた。が、小沢氏は前副代表、そして菅氏は元代表なのでテレビで映るその姿や主張には新鮮味が感じられなかった。ちょっと酷な言い方かも知れないが、「時代が戻った」という印象なのだ。

 この懸念は自民党に対しても同じだ。おそらく小沢氏が代表になれば、9月の自民党総裁選にも影響が及ぶだろう。「小沢氏に対抗できるベテランを総裁に」との逆ネジ作用が働くからだ。そうなると人気が高い若手の安倍晋三氏の線が弱まり、福田康夫氏(元官房長官)らベテランが党内では浮上してくるに違いない。

 こうなると、経済でも若手の堀江貴文・ライブドア前社長が失速しており、政治からも経済からも若さが失われたような印象になる。ベテランが悪いと言っているのではない。時代の雰囲気に若さを欠くと、意識の上で停滞が起きる。それがなんとも暗く重く、鬱蒼(うっそう)としたように感じるものだ。そんな予感がしてならない。

⇒5日(水)夜・金沢の天気  くもり

☆「次の次」を読む

☆「次の次」を読む

 代表辞任を表明した民主党の前原誠司氏はきょう2日のテレビ番組などに出演していたが、精彩を欠いていた。去年9月18日、前原氏が新代表になった翌日にたまたま京都を訪れた。比叡山のふもとから大原にかけてが前原氏の選挙区でもあり、選挙用ポスターがまだ貼ってあった。そこで初めて、ここが民主の新代表の地盤と知ったのだ。あれから半年余りでの辞任劇である。しかし、これも対応を誤り国政を揺るがせた政治プロセスの一つと冷静に理解すれば当然の帰結なのだろう。

 2月23日付「自在コラム」の「★完結・『真偽の攻防』を読む」で今回の偽メール問題の行く末を読み解いた。大筋で外れていない。新しい代表が小沢一郎氏で決まればほぼ読み通りだ。きょう2日、小松空港に家人を車で送った帰り、小松市内を走っていて、去年9月の総選挙のポスターを見つけた。そのポスターにたまたま小沢氏が映っていたので携帯電話のカメラで撮影した。古びたポスターであるものの、「次なる時の人」が映っていると価値が出てくる。

 しかし、小沢氏はどちらかというと「黒幕」の人である。表に立つとかえって外交や安全保障で党内が鮮明に割れて収拾がつかなくなる懸念がある。それでもこの人が立たないとおそらくいまの民主党は治まらない。そこで党内のバランス論で菅直人氏が幹事長に就任という線が出てくる。

 そして問題は自民である。仮に民主が小沢氏ならば、9月の自民党総裁選は安倍晋三氏に有利に働くのだろうか。自民党内でもバランス感覚が働いて、「小沢氏に対抗できるもう少し毒気のある人物を」いう党内の雰囲気が出てくると、安倍氏の立場は微妙になる。「次の次」を読むポイントではこの点ではないかと思う。

⇒2日(日)夜・金沢の天気  くもり

☆波乱、薄氷の勝利

☆波乱、薄氷の勝利

  今週の話題はなんと言っても、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本がキューバを下して「初代世界一」になったことだろう。2次リーグではアメリカ戦で「誤審騒動」もあって1勝2敗と苦しんだ。しかし、アメリカがメキシコに敗れる波乱もあり、2位で準決勝に進出。今大会では2戦2勝している韓国に6-0で雪辱して決勝進出と、運も手伝った薄氷の勝利だった。

  ところで、連日のWBCの大見出しに他のニュースはかき消されたかのような感じのこの一週間だったが、石川県でもヒヤヒヤの勝利があった。19日に投開票された石川県議補選で、森喜朗前総理の長男、祐喜氏(41)=自民新人、森氏の地元秘書=が相手候補に405票の僅差で逃げ切った。

  この県議補選では、森前総理は出陣式でもマイクは握らず、ただ支持者に頭を下げているだけだった。その代わり、公示前後に麻生外務大臣、安倍官房長官、自民党の中川政調会長らそうそうたるメンバーが選挙区に入り、まるで国政選挙並みの応援だった。競り合った相手候補は無所属新人の53歳、現在は建築設計士で元県職労委員長だった人。激戦を反映して、投票率は同時に行われた県知事選(40.10%)をはるかに上回る70.28%だった。

  僅差で逃げ切った祐喜氏だが、敗れた相手の方が敗戦の弁に勢いがあった。「勝敗では負けたが、選挙では負けてはいない」と。なぜか。森氏の地元である能美市では、祐喜氏の11728票に対し、相手方は12085票と357票上回っているのである。テレビのインタビューで、森氏の選挙参謀が「17日の総決起大会で予想外に多くの参加があり、気が緩んだのではないか」と分析していたのが印象的だった。

  今回は県議補選。一年後に県議選があり、両者の熾(し)烈な選挙はもう始まっているのかもしれない。

⇒24日(金)午後・金沢の天気  はれ

★「露呈したこと」3題

★「露呈したこと」3題

  ひょんなことから事件は発覚する。すると事件の本筋ではないがそこに隠されていたいろいろな物事まで露呈することがある。最近の事件や事故を振り返る。

   みずほ証券によるジェイコム株の誤発注で12月8日の市場が混乱した。今回のミステイクで被ったみずほ証券の損失は400億円にものぼると言われ、逆に複数の証券会社が莫大な利益を上げた。その金額はUBSグループの120億円を筆頭に、モルガン・スタンレー14億円、日興コーディアル証券グループ、リーマン・ブラザーズ証券グループがそれぞれ10億円、CSFB証券グループ9億円、野村證券3億円と推定されている。利益を出したこれらの証券会社はアメリカ資本系が多く、「火事場泥棒」とまで言われているが、ある意味でこの数字が日本の証券業界における実力ランキングなのだ。ここで分かったことはかつて「世界のノムラ」と名声を博した野村がいかに利益の出せない証券会社になってしまっているか、ということだろう。

   胚性幹細胞(ES細胞)の捏造問題で揺れる韓国。中央日報の日本語インターネット版によると、黄禹錫(ファン・ウソック)ソウル大教授の研究パートナーが黄教授に内緒で、04年4月にES細胞の関連特許を米特許庁(USPTO)に出願していたことが明らかになったと米ピッツバーグ・トリビューン・レビュー紙が報じた。これは、黄教授が関連特許を世界知的財産権機構(WIPO)に出願する8カ月も前のこと。ちゃっかりと特許出願していたのは、ジェラルド・シャッテン米ピッツバーグ大教授。両教授は03年からES細胞研究を共同で行ってきた。捏造問題のニュースが世界に流れ、アメリカの地元の新聞社がスクープした。捏造、抜け駆け、この研究分野の熾(し)烈な裏側が透けて見え、凄まじい。

   四季の中で一番命を落としやすい季節が冬だ。去年12月以降の日本海側を中心とした大雪による死者が相次いでいる。9日も秋田、新潟、福井の3県で除雪作業中のお年寄り2人と50代の会社員の3人の死亡した。共同通信の集計で16道県計71人(9日現在)にも上っている。71人が雪で死ぬ事態、これは天災ではないのか…。何かとニュースになる鳥インフルエンザによる死亡者数(世界の合計)は累積でどのくらいか。ちなみに人口12億の「大陸中国」では8人である。それにしても「列島大雪」で71人、痛ましい数字だ。

⇒10日(火)朝・金沢の天気   くもり